連載:絵本で見る宇宙

【3冊目】

 宇宙の本を見ると、必ずといっていいほど載っている、きれいな天体写真。
不思議な形、カラフルで鮮やかな色・・・なんだか、いろいろなものに見えてきませ んか?
リング星雲、キャッツアイ星雲、ソンブレロ銀河・・・
人は昔から、様々な天体に見た目で愛称をつけてきました。あなたの目には、どん な形に見えてくるでしょう?
今回紹介する絵本は、そんな想像力をかき立ててくれるファンタジーです。


『ほしのメリーゴーランド』
作・寮美千子  絵・鯰江光二  フレーベル館
ISBN 978-4-577-03587-0


 宇宙には、なんて不思議なものがあるんだろう?
きれいな天体写真を見ていると、そう思わずにはいられません。そして、そこに行 ってみたい! 間近で見てみたい!
そう、思いませんか?

 この絵本は、
「おほしさまのせかいにあそびにいきたい!」
そんな願いを持った女の子が、「ほしのゆうえんち」に遊びに行く物語。

 土星のわっかは氷のすべりだい。もやもやした星雲はいろんな味のわたがし。宇 宙を猛スピードで駆け抜けるほうき星のジェットコースターに、惑星のヨーヨー釣 り。

 女の子にとって、宇宙に浮かぶ天体は遊園地のアトラクションなのです。

 この絵本は、天文学の絵本ではありません。星や天体の解説は一切出てきません し、天体の名前すら本の一番最後に出てくるだけです。また、この本の大きな特徴 は、背景すべてが天体写真で、その上に絵を描いているところ。つまり、天体はあ くまで「画材」の一つなのです。

 星を眺め、なぜだろう? と考え、その謎を科学的に解き明かしていく、これが 天文学です。しかし、宇宙との付き合い方はそれだけではありません。星を眺め、 天体写真を見つめ、そこに自分だけの世界を想像していく…、そんな楽しみ方もあ るのではないでしょうか?
「天文」と聞いて堅苦しく考える必要はありません。大切なのは、まず宇宙を感じ ること。この絵本は、そんなことを教えてくれる一冊です。

 皆さんも、いろいろな天体写真を眺めながら、自分だけの物語を作ってみてはい かがでしょうか?



(塚田:姫路星の子館 2008年09月)