連載:絵本で見る宇宙

【12冊目】

 今回紹介するのは、これまでにも何冊か紹介してきたかこさとしさんの絵本。四 季の星座を扱った本はいくつも出ていますが、著者らしさが出ている、星座の本に は珍しいまさに「絵本」です。シリーズものですので、ぜひ、すべて手にとって見 てください。


『かこ さとし ほしのほん はるのほし』
作者 かこさとし
ISBN4-03-443010-9


 はじめに・・・。この本はシリーズものです。タイトルを見ればわかりますが、 夏や秋、冬の星を扱った本もあります。今回紹介するのは春の巻ですが、夏・秋・ 冬の巻も同じようにおすすめです。ぜひそちらも読んで見てください。

 春の星空を紹介したこの本。まずは、春の代表的な星ならび、北斗七星の紹介か らはじまります。北斗七星というのは「北にあるひしゃく(斗)の形をして並んだ 七つの星」という意味ですが、見方は人それぞれですよね。この前、観望会で北斗 七星の星ならびを見せて「どんな形に見える?」と子どもたちに聞いたら、「洗剤 のスプーン!」と答えてくれたお友だちがいました。これも納得ですよね(笑)

 同じように、北斗七星の星ならびは世界のいろいろな地域でいろいろな形に見立 てていました。この本でも、物語をまじえてそれらを数多く紹介しています。もち ろん、おおぐま座の神話も取り上げられています。また、北斗七星の動きにも注目 して、「ほくとしちせいのじかんどけい」や「ほくとしちせいのきせつどけい」と いったお話も書かれています。

 つづいて、北斗七星から春の大曲線、うしかい座やおとめ座、しし座の紹介と王 道の流れで本は進みますが、そのところどころに、アルクトルスの固有運動の話や 春に見やすい黄道光の話など、天文学的な内容にも触れています。また今巻では、 しし座とからめて惑星の話も登場します。

 星座の本、というと、星座の写真とともにそこにある天体のきれいな写真やその 星座の神話が紹介されているものが多いですが、この本は、全31ページのうち、写 真は6枚しか使われていません。ほとんどがかこさとしさんのイラストで、それゆ えまさに「絵本」なのです。初版の1961年以来、今まで40年以上発売され続けてい るのも、彼のやわらかい絵と、いっさい本文に漢字がないという、子どもたちが読 みやすい絵本だからなのかもしれませんね。



(塚田:姫路星の子館 2009年06月)