連載:その時“光”の歴史は動いた
【第1回 光の歴史】
1915年にアインシュタインが一般相対性理論を発見したことを始め、光の科学史
において様々な発見・発明の記念年ということから、2015年を光と光技術の国際年
「国際光年」とすることが国際連合総会で宣言されました。そこで特集として、光
が科学においてどう考えられてきたかをその主要な発見・発明とともに振り返りま
す。
「神は『光あれ』と言われた。すると光があった。」という聖書の冒頭や、日本
における「天の岩戸」伝説でみられるように、光は古来から書物や伝説に登場し、
光とは一体何なのかと、人々の関心事であったことは間違いないでしょう。
古代ギリシャの頃にはすでに多くの自然科学者が関心を持っていたと考えられる
「光」に関して、その時代に光の性質や色に言及した代表的な学者がアリストテレ
ス(B.C.384-B.C.322)です。
アリストテレスはこの世のものは火、水、空気、土の四元素説からできているとし
ました。そして、四元素の周囲には「エーテル」が存在し、第五元素としてエーテ
ルの存在によって太陽の熱や星の光が伝えられると考えたのです。ちなみに1690年
のホイヘンスによる光が波動として伝えわるという説においても、その媒質をエー
テルとするという考え方が用いられ、その後アインシュタインの特殊相対性理論が
確立するまで長く多くの人に認知されていました。
さらにこのアリストテレスは色はなぜ生じるかという問いに対して、色は太陽な
しでは見ることはできない、色の違いは白(光)と黒(闇)との混合によって生じ
ると考えたそうです。そして、虹は大気中の水滴が鏡となって太陽を反射した現象
だと説明しています。今となっては奇妙な説明ですが、何もない当時に色を分けた
り、反射という現象を考えているだけでも凄いことだと思います。このような考え
はアリストテレスが書いた「自然学」や「天体論」、「気象論」という自然哲学書
に記載されています。
この当時から、古代の人々は光の性質をなんとなくは知っていたようです。その
なんとなくを人類で初めて、一つの法則として提唱し、本格的な書物にまとめたの
が「幾何学の父」とも称されるユークリッド(B.C.330-B.C.275:ただし実際には
ほとんどわかっていない)です。
そんな彼がまとめた光の性質のひとつが「光の直進性」です。もちろん直感的に
わかりそうなことですが、現在では小学校3年生で学習することで、その後の光の
学習においては必要不可欠なものですね。
そしてもうひとつが「光の反射性」です。みなさんご存知「入射角=反射角」であ
るというこの法則ですが、彼の著書「カトプリカ(反射視学)」にはその様子を描
いた図なども描かれているようです。ちなみにこの著書には凹面鏡で太陽の光を一
箇所に集めてものを燃やす様子や、その光の道筋なども描かれており、凹面鏡によ
って反射した光が1点に集まることも発見していたようです。
彼はこれらのことを手をのばしてものに触れた時の感じをヒントにして考えたと
言われています。まだその頃には「光」と「眼でものを見ること」の違いがよくわ
かっていなかったようですね。
このように光に関する科学史は紀元前の段階で、「直進性」や「反射性」のよう
な性質が発見されていたと同時に、「エーテル」という考え方にその後1000年以上
振り回された歴史でもあるようです。
参考文献
・「光の科学史」遠藤真二 著 東京図書
・「身の回りの光と色」加藤俊二 著 裳華房
(小林:総合研究大学院大学 2015年04月)
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