連載:その時“光”の歴史は動いた

【第3回 光速の測定】

 光の重要な性質のひとつに、その速さがとてつもなく速く、どんな場合でも不変であるというものがあります。 光の速さ(光速)はおよそ秒速30万kmで、これは1秒間で地球を7周半もする速さです(地球1周は約4万km)。 スイッチをいれると明かりがついてすぐに部屋が明るくなる、これも光の速さのお陰なのです。 速さにも驚きですが、秒速約30万kmという光の速さは、秒速299792.458kmという精度で測定されています。 “光”の歴史の中で光速の測定は様々な研究者が試みてきました。

 初めに光速の測定を試みたのはガリレオ=ガリレイです。 1638年に遠く離れた2地点の間を光が往復する時間を測定することで光速を求めようとしました。 遠く離れた2地点、AとBでカバーをしたランプを持った人が立ちます。 A地点の人がランプのカバーを外し、その光が見えたらB地点の人がカバーを外します。 A地点では、A地点でカバーを外してからB地点のランプの光が見えるまでの時間を測ります。 このようにして光速の測定を試みたガリレオですが、光があまりにも速かったため失敗してしまいました。

 初めて光速が測定されたのは1676年です。
デンマークの天文学者、オーレ=レーマーは木星の衛星の食を利用して世界で初めて光速を測定しました。 木星の衛星は周期的に回っており、木星の裏側に隠れるときと、木星の手前側に見える時とがあります。 これらの場合では、地球からの距離が違うので、それを利用して光速を求めました。 レーマーが測定した値は秒速214300kmです。 今の値とはズレがありますが、世界で初めて科学的に意味のある値が得られました。

 その後の取り組みは1725年、ジェームズ=ブラッドリーによる年周光行差の測定、アルマン=フィゾーによる回転歯車の実験(1849年)、 そして、レオン=フーコー(1862年)やアルバート=マイケルソンとエドワード=モーリー (1926年)による回転鏡の実験というように多くの科学者によって挑まれました。

 現在の光速の値はケン=エベレソンが測定した値です。 1972年、エベレンソンは安定化したレーザーの振動数と波長を精密に測定することで、現在は定数として用いられている光速の値 (秒速299792.458 km)を得ました。 ちなみに現在の1mという長さの定義は、光が1/299,792,458秒間に進む距離と定義されています。 光速は、現在の長さの基準の定義にも影響を与えているのですね。




(小倉:愛媛大学 2015年06月)