連載:その時“光”の歴史は動いた

【第4回 光は波か?粒子か?】

 17世紀、プリズムの実験によって白色光が様々な色の光の重ね合わせであることを発見したニュートン(第2回『その時”光”の歴史が動いた』を参照)は、異なる大きさの光の粒が、異なる振動数の振動を引き起こしてそれぞれの色を生み出すと考えました。 光が物に当たるとくっきりとした影を作り出すために、波ではなく粒子であると考えたようです。 確かに波であれば、障害物を回り込んで伝わり、影はできないかぼんやりとしてしまいます。

 一方ホイヘンスは、光が交差しても妨げ合うことなく透過することから、光は粒子ではなく波である、と考えていました。 空間に充満している未発見の物質「エーテル」を媒質として伝わる波であると主張しましたが、宇宙空間にエーテルがあれば、天体運動に影響があるはず、という批判を受けて、認められませんでした。

 しかしながら、その後19世紀になるとヤングによって光の干渉実験が成功し、マクスウェルによって光が電気と磁気の作用が波となって空間を伝わる「電磁波」の一種であることが明らかにされたことで、「光は波である」という考えが主流になりました。

 しかしこのままでは終わりませんでした。 20世紀に入り、アインシュタインによって光量子仮説が提唱されたのです。 光の粒のエネルギーは、光の振動数にある定数をかけたもので表される、というものです。 アインシュタインはこの仮説によって光電効果という、金属に高い振動数の光を当てると電子が飛び出す現象を説明しました。 これにより光の粒子が復活したわけです。

 では一体、光は波なのでしょうか?粒子なのでしょうか?

 アインシュタインは波動性を否定せず、粒子性と波動性が両立しなければならない、と述べています。 そして量子力学という新しい物理学が発展していくこととなります。 多くの物理学者の研究によって光が探求され、量子力学が生まれたことによって、半導体など現在の生活に欠かすことのできないものの開発へとつながっているのですね。


参考文献:
*「NHKアインシュタイン・ロマン3 光と闇の迷宮」
NHKアインシュタイン・プロジェクト著、1991年6月、日本放送出版協会
*「光と量子 現代物理学への道」
桜井邦明著、1998年6月、東京教学社




(田崎: 2015年07月)