連載:世界で星はこう言い伝えられていた!
【第5回 ヒルコ北極星】
皆様、曲亭馬琴という人をご存知でしょうか。「南総里見八犬伝」という本を書
いた方なのですが、この本が昔、正月ドラマにもなったのでタイトルだけご存知の
方もいるかとは思います。
そんな曲亭馬琴が書いた本に「玄同放言」というのものがあります。
この「玄同放言」の巻ノ一上天ノ部に『蛭児進雄(ヒルコスサノヲ)』という章があ
ります。これは「ヒルコ」と「スサノヲ」という二人の神様を表しているのですが、
スサノヲという神様の名前は聞いたことがある方は多いと思います。天文学では時
折、金星とされることがある神様ですね。
では、ヒルコとはどんな神様なのでしょうか。余り聞き覚えの無い神様の名前で
すがヒルコとはイザナギ、イザナミの間に産まれた神様です。つまりアマテラスや
ツクヨミ、スサノヲの兄弟にあたる神様なのです。古事記ではイザナギ、イザナミ
の第一子として、日本書紀では第三子として登場します。ちょっと不思議な神様な
のですが記紀神話(古事記と日本書紀の神話)で違いがある理由は戸矢学氏の著書
『ヒルコ---棄てられた謎の神』で紹介されております。ぜひ読んでみてください。
記紀神話に共通するヒルコの特徴は「歩けない」ということです。さて、「玄同放
言」にはどのようなことが書かれているのでしょうか。
(以下、玄同放言の一説です。)
『昔は蛭子(ヒルコ)を日子(ヒルコ)と書いていました。天慶六年日本紀竟宴の歌
に蛭子をひるの子と詠んである。?留能古(ヒルノコ)つまり日之子であり、ひほの
音が似ている。日子(ヒルコ)は星である。星をほしと読むのは、後の時代の和訓で
あって、昔は星をひる子とも、縮めて”ひこ”ともいっていたそうだ。というわけ
で蛭子は星の神だ。星と言ってもたくさんあるが、どの星かというと北極星である。
だから三歳まで歩けずアメノイワクスフネに乗せられて流されたと言われる。(中
略)北極星は(動かないので)人の足が立たないもののようであり、またアメノイワ
クスフネに乗せて流された理由は、易での坎が水を表し、北をさすからで、事文類
聚に載っている、星は水の精であるということが根拠である。』
という具合にヒルコが歩けないことが動かない北極星を表していると言う考え方
が記されています。また、この頃は風水に関する考え方も色濃く登場します。先の
文章では「易での坎が水を表し」という部分や「星は水の精である」という部分が
風水に関わる文章になっています。
(貴村:大阪教育大学 2015年03月)
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