連載:世界で星はこう言い伝えられていた!

【第6回 北斗七星の呼び名】

 これまでは北極星に関するお話でしたが、今回からは少し離れたところにある北 斗七星について見てみましょう。実は北斗七星は星座ではなくて、春の星座である おおぐま座の尻尾の部分にあたります。果たして昔の人は北斗七星をどのように見 ていたのでしょうか…。

 とても多くの星の和名を収録している野尻抱影氏の「日本星名辞典」で紹介され ている北斗七星に関する和名を見てみると「ななつぼし」「ひちようのほし」「し そう(四三)のほし」「ひしゃくぼし」「ふなぼし」「かじぼし」などが挙げられて おり、また北斗七星の一部を指した和名は「けんさきぼし」「はぐんのほし」「そ えぼし」が挙げられています。
これらの名前は一つの地方だけに残っているわけではなく、様々な場所に散らばっ て残っています。つまり、昔の人々は北斗七星の特徴的な形を見て様々な思いを込 めていたと考えられます。和名の名付け方というものは見たままをそのままつける ものや、自分の身の回りにあるものに例えたもの、その当時の思想に関わるものを つけるのが多く見受けられますが、共通しているのは人の生活の中から生まれてき た名前であるということです。

 「ひちようのほし」の「ひちよう」は「七曜」のことであり「七曜」とは日、月、 火星、水星、木星、金星、土星のことを指しており、現代の一週間を表しているも のが七曜だといえます。七曜は家紋としても使われており、歴史の授業で習う田沼 意次の家紋も七曜星でした。ちなみに九曜というものもあり、九曜は上の七曜に羅 ゴウ(目へんに候)と計都という二つの架空の星を足したものであり、羅ゴウと計都 は日食や月食をおこす星だと考えられていました。

 「しそうのほし」は漢字で書くと「四三の星」と書きます。「四三」はサイコロ の目のこと指していて、この名前は船の上で行われていたサイコロ博打が元になっ ているという考え方や、すごろくが元になったと言われています。「しそうのほし」 が船の上で生まれた名前だと考えると「ふなぼし」「かじぼし」と並んで海に関す る名前が多いように感じられます。そして北斗七星とは別にカシオペア座には「い かりぼし」という和名が存在しています。北斗七星やカシオペア座が北極星を見つ けるために使われていたことを考えると、やはり船で海に出るときには北極星が方 角を探すことに役立っていて、それゆえに船に関する和名が北斗七星に付けられて いたのだと思われます。

 ちなみに「北斗七星」という名前はもともと中国から書いた名前であり日本オリ ジナルというものではありません。全国的に多かった和名は「ななつぼし」であっ たそうです。一説では戦時中に方角を見つける際に使う「北斗七星」をさす名前が 出身地によって違うことが不便だったことから、「北斗七星」に統一されたと言わ れています。

 皆様の住んでいるところでは「北斗七星」はどのような名前で呼ばれていたので しょうか、調べてみるのも面白いかもしれません。このブログのコメント欄に各地 方の「北斗七星」の呼び方を書いていただければとてもおもしろくなるかもしれま せんね。


(貴村:大阪教育大学 2015年04月)