連載:世界で星はこう言い伝えられていた!

【第8回 金星の異名】

みなさんは「明けの明星」や「宵の明星」といった言葉を聞いたことがありますか。 この二つの言葉は両方とも金星を指す言葉です。 以前の記事ではスサノオが金星を例えた神様である説を紹介しました。 今回は以前のものとは異なる金星にまつわるお話を紹介いたします。

 金星は「明星」と言われる通りとても明るい星です。 高知県の御蔵洞では弘法大師空海の口の中に明星が入り込んで悟りを開いたと言われています。 また、金星は「釈迦は明星を見て悟りを開いた」という仏教の言い伝えから明星天子と言われており、虚空蔵菩薩として信仰されています。 明星を拝み記憶力の促進を願うことを求聞持法といいます。 京都の東寺や法輪寺など現在でも虚空蔵菩薩を祀っている場所はあるので記憶力が欲しい方は一度拝みに行ってみてはいかがでしょうか。

 金星は他にも幾つかの名前を持っています。 金星は日が落ちてすぐ西の空に明るく輝くので日本人の言う「一番星」は大概が金星を指すことが多く、中国から渡ってきた名前の「太白」や、万葉集に登場する「赤星」などが金星の別名としてあげられます。 やはり、明るい星ということで昔の人の目に付いたのでしょう。

 目につくということは良い方向でも悪い方向でも信仰を集めるということになります。 良い方向の信仰は先ほど紹介した虚空蔵菩薩などですが、悪い方向では以前紹介したスサノオが暴れるという言い伝えがあげられます。 さらに恐ろしいことに、「太白(金星)、辰星(水星)、歳星(木星)が並んで見えれば、災いがある」などという話も残っています。

 今回の結論もやはり目につく星は何かしら人に訴えることがあるということです。 ずっと昔からいろいろな信仰を集めてきた金星を見る際には、昔の人がどんな気持ちを込めて見ていたのかなども考えてみてみるのも面白いのではないでしょうか。




(貴村: 2015年10月)