連載:宇宙開発裏話

【第10回 後世まで待たせない!?恒星間船の構成】

 今から半世紀以上前の1957年10月 4日、人類は初めて、自ら作り上げた物体を宇 宙へと送り出しました。 ロケットの父ツィオルコフスキーの生誕 100周年に合わせ、旧ソ連が打ち上げたス プートニク 1号により、宇宙開発競争の幕が切って落とされたのです。 スプートニク 1号は人類が星の世界へと踏み入れた記念すべき一歩であり、手の届 く世界として人類の宇宙観を変える決定的な転換点になりました。 今回は次の 100年後の転換点となるであろう「恒星間宇宙飛行」についてのお話で す。

 はやぶさで使われたイオンロケットの活躍によって、人類は太陽系を駆け巡る大 航海時代を迎えたといわれています。 しかし、恒星間飛行は太陽系内とは比較にならないほどの難しさがあります。 イオンロケットをもってしても、隣の恒星まで数千年単位の時間がかかるからです。 ずっと後世に引き継がねばなりません。

 未来の恒星間航行を予想したのが、70年代にイギリス惑星間協会が計画した「ダ イダロス」です。 地球から 5.9光年離れた、当時惑星が存在すると考えられていたバーナード星に片 道切符の無人探査機を向かわせ、研究者の存命中に到達させる予定でした。

 推進方法には、核融合パルス推進が選ばれました。 連続的に核融合爆発を起こし、生じたプラズマを磁場でできたノズルによって制御 して、非常に速い速度で噴射する仕組みです。 最終速度は光速の 10%に設定され、50年でバーナード星まで到達する計算でした。

 構想から40年程経った現在、人類は核融合ロケットはおろか核融合発電すら実現 できていません。 目標だったバーナード星も後に惑星が存在しないことがわかりました。 でも、当時はまだ夢物語だったイオンロケットやソーラーセイルは現実のものとな り、系外惑星もすでに 800個ほど見つかっています。

 これらの現状を踏まえ、来たる22世紀に恒星間航行を実現すべく、2011年から米 の DARPAがダイダロス計画の見直しに入りました。 100 Year Star Shipと呼ばれ、今一度恒星間航行の技術を洗い直して最適な宇宙船 の構成を決め、社会文化、経済、宗教など幅広い分野から分析がなされるそうです。

 さらに今月17日、ビックニュースが入ってきました。 チリにあるラシーヤ天文台の観測データから、地球に一番近い恒星系であるアルフ ァケンタウリの B星で、地球サイズの惑星が見つかったというではありませんか! 恒星間飛行は決して遠い未来の話ではないのかもしれません。


(藤井:大阪教育大学 2012年10月)