連載:身の回りの光の科学

【第1回 どうしてレントゲンって体の中をうつせるの?】

 「先生どうしてレントゲンって体の中をうつせるの?」

 今年度小学1年生の担任をしております、Noguchiです。 先日ふと学校の6年生の児童にこんな話を聞かれました。 手をケガしたときに、病院でレントゲンを初めて撮ったそうです。 さて、みなさんは子どもたちに質問をされて答えることができますか。

 私は以下の内容を簡単に説明しました。

 まずは、そもそもレントゲンという名前の由来は?
今の時代、体内の健康状態を詳しく知るために欠かせないのがレントゲンです。 この名称はレントゲン検査時に使われる「X線」を発見したレントゲン博士からとったものです。 では、そのX線って何なのか。 X線は、テレビや携帯電話の電波、電灯の光などと同じく、電磁波の一種です。 ただ、X線は電磁波の中でも持っているエネルギーが非常に大きく、”物質を透過する”という能力を持っています。 もちろんどんな物質でも同じように透過するのではありません。 鉛などは透過しづらく、木やプラスチック、そして人体は比較的透過しやすいのです。


(画像出典wikipedia)

 ただ、人体の中でも骨がある場所もあれば、心臓のように血液がたくさん集まっている場所、肺のように空気が多く存在している場所などもあります。 もちろん各場所によって人体に入射したX線は、反対側までたくさん突き抜けるものや、弱くなって出てくるものなど細かい差ができます。

 その差を医療用のX線画像は、反対側からたくさんX線が出てきたところを黒く、弱くなったところは白く写すようになっています。 そのため、透過しやすい肺などの臓器は黒くなり、透過しにくい骨などは、白く写ることになります。

 その6年生の児童は、リモコンの先から出ている見えない波のようなものはイメージで理解してくれていました。 ただ、リモコンを遮るとチャンネルが変わらないので、透過するという考えがなかったそうです。 今回のように、骨の検査じゃないときは、バリウムという薬品をのんで撮影するんだよというと児童はびっくりしていました。

 そんな意外にも身近なX線、ではこのX線で例えば宇宙を見たらどうなるでしょう。 X線はエネルギーがとても大きな光で、宇宙には僕らの地球におけるエネルギーとは比べものにならないほど大きなエネルギーが溢れています。 なので、X線で宇宙を見ればギラギラ輝いているものをたくさん見ることができるのです。


(画像出典:NASA)

 これはX線の望遠鏡で見たある星です。いったいなんでしょう?? 答えは私たち人間の生活には欠かせない、昼間には毎日のように見ている星、「太陽」です。 昼間に太陽を直接見ようとすると、眩しくて長く見ることはできません(視力が悪くなる可能性があるので、我慢してでも見てはいけません)。 これは電磁波の中でも可視光線という光が地球に届いているからですが、それ以外にも太陽は赤外線や紫外線、そして「X線」でも輝いているのです。 そんなX線で見た太陽ですが、普段私たちが見ている太陽とは少し様子が違うのがわかると思います。 たとえば周りにぼやーっとしたものが広がっています、これは「コロナ」といって太陽の表面よりさらに外側が、200万度をも超えるような高温のプラズマ(少し特別な気体のようなもの)に覆われているのです。

 さらにX線で宇宙を見たときに見つかるものの代表とも言えるのが「ブラックホール」です。 人類ははくちょう座の首元がX線でとても明るく輝き、そこに「CygX-1(はくちょう座X-1)」というブラックホールがあることを発見しました。 しかし、ブラックホールは重力が強く光すらも吸い込まれてしまうので、私たち人間の目には見えません。 それではなぜX線で輝いているのでしょうか? その正体はブラックホールがガスできた星を吸い込むときにあります。 ブラックホールに近くに星があった場合、その星を構成するガスはブラックホールの重力によって吸い込まれませす。 しかし、このガスは一気に吸い込まれて消えてしまうわけではありません。 なんとブラックホールの周りにガスの円盤(降着円盤)を作ってしまうのです。 そしてこの円盤が高温となり大量のX線を放出することになります。


(画像出典:アストロアーツ)

 太陽やブラックホールを始め宇宙にはX線で輝いている星がたくさんあります。 レントゲンやX線、ほかの光に関する話題に出た際には、ぜひこんな話をしてあげると子どもたちの興味・関心を刺激することができるかもしれませんね。

参考文献
・子どもの「なんで?」がわかる本 たまきみけ、新田哲嗣著、株式会社トライアングル
・はたらく人の保健室  http://sangyo.hokenshi.net


(野口:兵庫県小学校教員 2015年06月)