連載:身の回りの光の科学

【第5回 113番目の元素?】

 「新しい113番目の元素って何?」

 2015年の大晦日、日本の理化学研究所が新しい元素である「113番元素」の命名権が獲得できるのではないかという嬉しいニュースが話題になりました。 今日は、その「113番元素」はどういったものなのか、またどのようにして証明されたのかということを簡単にご紹介したいと思います。

 そもそも元素とは何なのか。
「水兵 リーベ 僕の船〜」と聞くと、何か聞いたことがあるなと思われると思います。 これは、元素の周期表と言い、ロシアのメンデレーエフが提唱した元素の一覧表を覚える語呂合わせです。 水素や硫黄、鉄やアルミニウムといったものも元素です。

 元素とは、
「すべての物質には、つくるもとになっているものがあり,最も基本となる成分を元素という」

 と言われています。 その元素は、陽子というプラスの電荷(電気のプラスをイメージしましょう)と電子というマイナスの電荷をもつもの、そして電荷をもたない中性子というもので出来ています。 その一つ一つの性質は、主に陽子によって決まると言われています。 なので、元素の中にある陽子の数のことを原子番号と呼びます。 原子番号が1は水素。 12は炭素(図1)。 26なら鉄といった具合です。 そして今回の新元素は113個の陽子をもつ元素ということになります。

 (図1:元素の構造)

では、元素はすべての物質のもとになっているものなのに、「合成した」とはどういうことでしょう。
元素のもと(陽子と中性子)を原子核といいます。 原子核は、ある程度以上に大きくなるとだんだん不安定になってきます。 安定に存在できる最大の元素は、陽子82個と中性子126個から成る鉛208です。 これより大きな原子核はどれも粒子を放出したり、真っ二つに分裂したりして徐々に壊れていきます。 その壊れるスピードを半減期といい、短いほど不安定な元素である、ということになります。

 天然から見つかる最大の元素は原子番号92のウランです。 これも徐々に放射線を出して壊れていきますが、45億年という極めて長い半減期を持つため長い地球の歴史を持ちこたえ、天然から鉱石の形で発見されているわけです。 そしてこれより大きな原子番号を持つ元素は天然には存在せず、全て人工的に作り出された元素なのです。




(野口: 2016年01月)