連載:あなたの知らない宇宙

【第1回 冷たい宇宙にある熱いガスと宇宙の再電離】

 みなさんは「宇宙」と聞いて、どんなイメージが思い浮かびますか?
 「暗い」とか、「空気がない」とか、「冷たい」という感じではないでしょうか。 「宇宙はマイナス270℃(絶対温度だと3ケルビン)」というのは結構有名な話で、知っている方も多いと思います。 確かにマイナス270℃は「冷たい」と言いたくなる温度ですね。
 第一回は、そんな冷たい宇宙にある、とっても熱いガスのお話と、それにまつわる未だ解明されていない宇宙の再電離を紹介したいと思います。

 ガスは宇宙の中のどこにあるのでしょう?
 わたしたちの周りにはたくさんの空気がありますが、これはものすごい広さの宇宙の中ではほんの少しでしかありません。 華々しく光るお星さまの集まり「銀河」の中にはもっとたくさんのガスがありますが、これまでの天文学者たちの研究から「宇宙にある物質のほとんどは銀河と銀河の間にある」ことが分かってきました。
 この「銀河と銀河の間」にあるガスの温度は既に1960年代から調べられ、実に一万度以上ということが分かっています。 そう、宇宙にあるほとんどのガスはものすごく熱いんです。 これほど熱い温度だと、ガスは「電離」した状態(プラズマ状態)になってしまいます。 現在の宇宙では、ほとんどのガスは電離状態にあるのです。 宇宙は冷たいのに不思議ですね。

 実はこの不思議、まだはっきりとは解明されていないのが現状です。 天文学者の間では、「宇宙の再電離」と呼ばれている現象で、いつ・何が・どのように、といった詳しい事は、まだまだ謎のままです。 「再」というのは「もう一度、ふたたび」という意味ですが、これは、宇宙の歴史の中で、ガスが最初の熱い電離状態から一度冷えた中性状態になった後、ふたたび熱い電離状態になったことを表しています。
 まだまだ謎のあふれるこの宇宙。
 その宇宙の謎を解明するのはこれを読んでいるあなたかもしれません。


(小林:国立天文台 2008年08月)