連載:あなたの知らない宇宙

【第4回 宇宙の姿を捉える望遠鏡−可視・近赤外の場合。】

 宇宙や天体について調べていると、天体のきれいな画像や、動画をよく見かけま す。中には「○○の想像図」なんていうのもあったりします。宇宙にある天体はと ても遠くにあるのに、どうしてこのような画像を見ることができるのでしょう?
 勿論、肉眼でどんなに頑張っても見ることはできません。宇宙を見るのに最も重 要な役割をしているのが、皆さんもご存知の望遠鏡です。今回はその望遠鏡につい ての話題です。特に可視光線や赤外線を使って天体を観測する為の望遠鏡について ご紹介します。

 望遠鏡は今から400年前にオランダのH. Lippershey(リッペルスハイ)という人が 発案しました。彼はレンズを 2枚組み合わせると遠くのものを拡大してみることが できるということを発見しました。この話を聞いて自分で望遠鏡を製作し、月の表 面の様子や惑星の動きを調べたのがG. Galilei(ガリレイ)です。彼の作った望遠鏡 はレンズの直径が数cm、倍率が30倍程度でした。

 さて、望遠鏡には大別してレンズで光を集める『屈折式』と鏡で光を集める『反 射式』の 2種類があります。この内、天文学・宇宙物理学で主流になっているのは 反射式望遠鏡です。何故なら、鏡の方が口径(主要な鏡やレンズの直径)を大きくし やすいからです。望遠鏡は口径が大きいほどより光を集めることができるので、よ り暗い天体、つまりより遠くの天体まで観測することができます。また、口径が大 きいほど空間分解能が良い(視力が良い)ので、小さい望遠鏡では重なって見えた天 体を別々に分けて観測することが可能になります。ですので、より大きい口径の望 遠鏡を作ることはその分新しい発見への架け橋になります。

 ところで、レンズはガラスの品質が一様でないと、光を集めることができません。 しかし、大きなガラスを、均質に作るのはとても困難です。それに比べて鏡は滑ら かな面の表面をコーティングすればよいので比較的大きなものが作れます。現在最 も大きい屈折式望遠鏡のレンズ口径 102cm(Yerkes 天文台、1897 年に完成)のもの ですが、反射式望遠鏡の鏡で最大のものは口径8m以上もあります。因みに、岐阜の 飛騨にある京都大学付属飛騨天文台には65cmの長ーい屈折式望遠鏡があります。

参考url:飛騨天文台65cm屈折式望遠鏡
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/general/facilities/65cm/index.html

 鏡の方が口径を大きくしやすい、といっても簡単ではありません。広い「滑らか な面」を作るのはとても困難。望遠鏡の姿勢が変化したときに大きい鏡は自分の重 みで変形してしまうからです。その為に、厚い鏡の裏側を蜂の巣のように刳り貫い て軽くした鏡(ハニカム鏡といいます)や、薄い鏡を裏側から位置調節して使うメ ニスカス鏡が開発され、現在一番大きな鏡は LBT(超巨大双眼望遠鏡、2005年完成) で直径8.4m程度、すばる望遠鏡(1999年完成)で直径8.3m弱のものがあります。 LBT はハニカム鏡、すばるはメニスカス鏡です。

参考url:LBT
http://lbtwww.arcetri.astro.it/telescope.htm
参考url:すばる望遠鏡
http://subarutelescope.org/j_index.html

 また、1枚の大きな鏡を使わずに、1m位の大きさの鏡をいくつか繋ぎ合わせて1枚 の鏡のようにして使う分割鏡というのも1980年代頃から開発されるようになりまし た。その代表的なものはアメリカのケック望遠鏡I,IIです。個々の鏡の形は勿論、 「鏡」として用いる為には、1枚1枚の鏡(セグメントと呼びます)を精密に制御しな くてはいけません。ケックは36枚のセグメントを精密に制御することで10 mの鏡と して使われています。また、この分割鏡方式で口径30m級の超大口径望遠鏡(大きい です!)を建設しようという計画もいくつかあります。

参考url:30m望遠鏡計画
http://www.tmt.org/
参考url:E-ELT望遠鏡計画
http://www.eso.org/sci/facilities/eelt/

 近い将来この30m級の望遠鏡が捉えた宇宙の画像が届くかもしれません。。。


(森谷:京都大学 2009年01月)