連載:あなたの知らない宇宙

【第7回 ちょっと変な最近の太陽〜小氷河期がやってくる!?〜】

 私たちの一番身近な恒星の太陽。太陽から光として運ばれるエネルギーで私たち の住む地球はお昼にポカポカ陽気になりますし、植物も元気に育ちます。そんな太 陽が、実は最近ちょっと変なんです。

・太陽の表面にある黒点
 黒点は、太陽表面(=光球、約6000 ℃)に比べて温度が低い(約 4000℃)ため、 周りより暗く黒く見えます。これだけ聞くと、黒点は光球に比べて頑張ってないと ころみたいですね。なので、黒点が多いほど太陽は暗く、太陽から地球に届くエネ ルギーは減りそうなイメージですが、実際は逆なのです。黒点が太陽に多く見られ る時期ほど、太陽は活発に活動し、太陽から地球に届くエネルギーは増えるのです。

・黒点数の増減の周期
 黒点数は、ガリレオが初めて望遠鏡を作って以来実に 400年もの間、観測されて きました。その結果から、黒点数、つまり太陽活動は、約11年の周期で増減を繰り 返すことが分かっています。黒点数が多い(=太陽活動が活発な)時期を「極大期」、 少ない(=太陽活動が穏やかな)時期を「極小期」と言います。極大期には大規模 な「フレア」という爆発現象が頻繁に起こります。このフレアでは、一発で日本海 が蒸発するほどの莫大なエネルギーが放出され、同時に高エネルギー粒子が宇宙空 間に撒き散らされます。これが地球に届くと、迫力のあるオーロラが極地方で見ら れる一方、大規模な停電や人工衛星の故障・落下、電波による通信が不能になるな ど、非常に大きな影響があります。

・最近の「美白」な太陽
 前回の太陽黒点の周期を調べてみると、極小期が大体1996年頃で、極大期は2000 年〜2003年頃でした。約11年周期で増減を繰り返すことを考えると、2009年現在は、 2012年頃に訪れる次の極大期に向けて黒点数が増加していく段階にあることが期待 されます。しかし、最近の太陽には全く黒点がなく、望遠鏡をのぞくと真っ白でま ったくシミのない「美白」な太陽が観測されるだけです。太陽の研究者たちは、首 を長くして新しい黒点が現れるのを待っていますが、一向に現れません。もしかし たら、太陽活動の周期が約11年から、もっと長い周期に変わりつつあるかもしれな い、と考える研究者もいます。そうなった場合、地球にはどのような影響があるの でしょうか。

・以前訪れた小氷河期:マウンダー極小期
 過去の太陽活動を調べてみると、太陽活動の周期が約11年から次第に延びていっ た時期が過去にもありました。その後、約70年間にわたって太陽にはほとんど黒点 がない時期が続きました。そして、地球には極度に寒冷化した「小氷河期」が訪れ ました。この1645年〜1715年の時期は「マウンダー極小期」と呼ばれ、世界的な大 飢饉が頻発しました。日本でも、延宝の飢饉(1674〜1675、1680)や元禄の飢饉( 1691〜1695)が起こっていたことが記録に残っています。太陽活動の極大期と極小 期とで、太陽から地球に届くエネルギーはわずか1%程度しか変わりません。そのた め、極小期が数年延びても地球には大きな影響はありませんが、それが数十年にわ たると、地球は冷え、作物も育たなくなってしまうのです。

・これからの太陽に注目!
 現在盛んに地球温暖化が叫ばれていますが、もし今後しばらく経っても太陽に黒 点が現れないようなら、逆に小氷河期が訪れてしまうかもしれません。今年の 7月 22日には皆既日食を迎えることで注目を集める太陽。新しい黒点が現れるか、とい う視点でも、注目してみてはいかがでしょうか?


(小林:国立天文台 / 監修 岡本:国立天文台 2009年05月)