連載:あなたの知らない宇宙

【第20回 惑星の磁石】

 地球では方位磁石の針がいつも北を指すので、まるで地球の中心に強力な棒磁石 が置かれているような地磁気のことをご存知の方もいらっしゃることでしょう。地 球の中心部分の外核には、溶けた鉄があるので、もし、何かの僅かな磁石の力が存 在していたら、その中で鉄が流れると電流が発生します。この電流が新たに磁石の 力を生成し、小さかった地磁気を増幅させます。地球の内部では、このような発電 作用がはたらいていると考えられ、ダイナモ作用と呼ばれています。また、太陽に も、ガスの運動によって磁石の力を生成・増幅するダイナモ作用がはたらいていま す。

 では、他の惑星にもダイナモ作用がはたらいて、星の磁石を作っているのでしょ うか? 

 ガスが多い惑星の木星、土星、天王星、海王星では磁石の力が観測されています が、岩石が多く固い惑星では、磁石の力が無いものもあります。たとえば火星には、 地磁気のような惑星全体の磁石はありませんが、磁石の正と負が縞模様のように残 っている場所が見つかりました。このような縞模様は、地球の海底からも見つかっ ています。地球の場合は、地磁気が不規則に逆転するので、海底の岩石が作られた 時代の地磁気の向きが岩石に記録され、縞模様は地磁気の逆転の歴史を表している のです。もしかすると、昔は火星全体の磁石の力が存在していて、時々、磁石の向 きが逆転していたのかもしれません。他にも、ダイナモ作用の証拠かもしれない観 測結果が得られている惑星や衛星があります。

 どの天体でダイナモ作用がはたらいている(または、かつてはたらいていた)の か、そもそも何故、星の磁石が反転するのか、私も含めて現在も研究が進行中です。


(中道 晶香:京都産業大学 神山天文台 2011年08月)