連載:あなたの知らない宇宙

【第25回 新しく生まれた星?!〜研究者とアマチュアがタッグで調査〜】

 皆さんは『新星』と聞いてどんな天体を思い浮かべますか?観測屋であるティコ ブラーエは天球上に突如明るくなる天体に『新星 (nova stella)』という名前をつ けました。novaとはラテン語で newという意味であり、今まで何もなかった天域に、 突如明るい星が現れたことから新しい星が誕生したのだと考えたためです。

 しかし、現在はその天体は決して新しく星が生まれたわけではなく、2つの星の 相互作用によって生じるものと分かっています。少し専門的な話になりますが、白 色矮星(太陽クラスの恒星の最終進化段階の星)に普通の星(主系列星)からガス が供給されることによって、白色矮星の表面で起こる太陽の 1万倍以上の明るさに なる爆発を新星現象といいます。

 そんな大規模な爆発現象はそう多くは起こりません。新星の発見個数ですが、天 の川銀河で年間 5個から10個ほどです。しかも多くは数百万年に一度きりしか爆発し ないため、何度も同じ天体を観測することは困難とされています。さらに、爆発後 の明るさの変化や色の性質などは個々の天体で多種多様であるため、今だに分類学 が重要とされている分野のひとつです。

 その新星の分類に重要な要素は爆発後の発見の早さとその後のモニター観測と言 われています。では、いち早く誰が発見をしているのか。それは、世界中の研究者 たちよりも天文アマチュアハンターたちといって過言ではありません。特に戦前か ら戦後にかけての日本人の活躍は目覚ましいものがあります。そのアマチュアの方 の発見を受けて、大学や天文台の大口径の望遠鏡がその天体に向くということが多 くあります。我々大阪教育大学観測チームも、その増光の知らせを受けて51cm反射 望遠鏡で爆発後の暗くなるまでのモニター観測をしております。

 このように新星などの突然明るくなるような星(突発天体とよく言われます)は、 我々研究者と天文アマチュアがタッグを組んで現在研究を進めています。


(野口:大阪教育大学 2012年09月)