連載:あなたの知らない宇宙

【第26回 「地球はできない!?」 〜ダストの落下問題〜】

 みなさんは太陽系がどのようにして作られたかご存知ですか?実は、我々の惑星 系はもともと、太陽の周りを回る一つの円盤であったと考えられています。この円 盤は太陽が作られると同時に形成され、原始惑星系円盤 (Protoplanetary Disk)と 呼ばれています(注 1)。この円盤はガスとダストと呼ばれる小さな固体でできてい ます。初め、ダストのサイズはミクロンサイズ(10のマイナス 6乗メートル)程度で 細胞の大きさ程度しかありませんが、この小さなダストが将来惑星へと進化してい くのです!惑星形成の第一歩は、ダスト同士の合体により1km - 10kmのサイズを持 つ微惑星まで成長させることです。しかし物理法則に基づいてこの過程を説明しよ うとすると様々な問題が現れます。今回は、その代表的な問題である「ダストの落 下問題」についてご紹介します。

 この問題はダストが数十センチ〜メートル・サイズになったところで顕著に現れ ます。先程いったように円盤内にはガスとダストの 2種類が存在しています。ガス はダストよりちょっとだけ遅い速度で太陽の周りを回転しているため、ダストは常 にガスによる"向かい風"を受けています。それによりダストは減速され、とても速 いスピードで中心星へと落ちて行きます(注2)。100cm程度のダストが今の地球の位 置にいたとすると、約 100年で太陽に落ちてしまいます(注 3)。微惑星形成には数 十万年から数百万年かかると考えられているので、
いかにこの 100年という数字があっという間の出来事かということを是非、感じて みてください。大事な惑星の材料であるダストが落ちて無くなってしまうのですか ら、現在の惑星形成理論の深刻な問題の一つとなっています。

注1)
原始惑星系円盤の想像図(NASA's Spitzer Space Telescope HPより)
「http://www.spitzer.caltech.edu/images/1397-ssc2005-06b-Mini-Solar-System-in-the-Making」

注2)
惑星形成業界では中心星にどんどん近づいて行くことを"落ちる"と表現します。

注3)
これはダストのサイズが一定であるという仮定の元での計算です。

(田崎:京都大学 2012年11月)