連載:あなたの知らない宇宙

【第30回 ものすごい明るい超新星!?】

 人間には、一生があります。人間だけでなく、地球上の全ての生物はみな、平等 に生まれて、平等に死んでいきます。実は、これは星(恒星)にも当てはまります。 恒星も人間と同じように、生まれては死んでいきます。重い恒星は死を迎えるとき に、大爆発を起こします。この死ぬときに起こる大爆発を、「超新星」といいます。 「超“新”星」と書きますが、新しく生まれた星のことではないですよ。

 1054年、夜空に突然明るく輝く星が発見されました。この星は、1ヶ月ほどして から暗くなり、2年ほどで肉眼では完全に見えなくなりました。東洋ではこのよう な星は「客星」と名付けられ、古くから出現例が記録されていました。この客星は 近世以降、「新星」と呼ばれるようになりましたが、典型的な新星よりもずっと明 るい星が現れました。これが「超新星」です。天体望遠鏡の発展もあり、超新星の 年間発見数は今では 500個を超えています。ちなみに客星の中には、新星の他にも 彗星も含まれていました。

 超新星は分光的特徴により、いくつかの種類に分けることができます。大きく分 けると、水素のスペクトル線が見られるものをII型、逆に見られないものを I型の 2種類に分類することができます。 I型の中でも、ケイ素の吸収線が見られる超新 星を、Ia型超新星と呼びます。Ia型超新星は、白色矮星が伴星から質量を得て、太 陽質量の約 1.4倍の質量、すなわちチャンドラセカール限界質量付近に白色矮星の 質量が達したときに、超新星爆発を起こします。

 しかし、質量がチャンドラセカール限界質量に到達しても爆発しない超新星の存 在が、明らかになりました。つまり白色矮星が、自身の質量が限界質量である 1.4 太陽質量を超えても存在する、というのです。この白色矮星をもとにして誕生した 超新星を「super-Chandrasekhar mass SNe(スーパーチャンドラセカール質量の超 新星)」といいます。近接連星系にある2つの白色矮星が衝突・合体することで、 この超新星が生まれると考えられています。普通の超新星は、明るさが約 -19等に なるのに対し、super-Chandrasekhar mass SNeは -20等にまで明るくなることが、 観測事実として分かっています。普通の超新星よりもずっと明るい超新星が、発見 されたのです。

 超新星はまだまだ謎に包まれた天体です。しかし、そんな謎の天体に、さらなる 謎が現れ、多くの天文研究者が魅了されています。この謎が少しでも早く解明され ることを、期待してやみません。


*参考文献
・野本憲一、定金晃三、佐藤勝彦 2010
 「シリーズ現代の天文学7.恒星」 日本評論社
・Michael A.Seeds、Dana E.Backman著、有本信雄監訳 2010
「最新天文百科−宇宙・惑星・ 生命をつなぐサイエンス−」 丸善株式会社


(増本:大阪教育大学 2013年05月)