連載:あなたの知らない宇宙
【第31回 ブラックホールが星を食べる瞬間に迫る 2】
今年、天の川銀河の中心に存在するブラックホール( SgrA*)がガス雲を吸い込
むといわれています。そして、世の天文学者たちはその瞬間をとらえるべく日夜、
大奮闘しています。
さて、天文学者というと、実際に星を観測する人というイメージが強いと思いま
すが、決してそういう人だけではありません。宇宙には望遠鏡の性能などによって
まだまだ観測できていないことが山ほどあります。それらの現象を数学的、物理的
に計算し、理論的に予測している人もいます。さらに、最近ではスーパーコンピュ
ータの発展によりシミュレーションで予測するという方法も重要になってきました。
今回、ブラックホールがガス雲を吸い込むとき、何が起きるのか予測する際にも
シミュレーションが大活躍しています。予測されるもののひとつが、ブラックホー
ルがガス雲を吸い込み始めるときにガス雲が明るく輝くというものです。
質量をもった二つの物体の間には力が働き、その大きさは物体同士の距離に反比
例する。みなさん高校で習ったのを覚えていますでしょうか?万有引力の法則です。
ブラックホールとガス雲の間にも同じような力が働きます。ただし、ブラックホ
ールがとてつもない質量をもっているため、ガス雲が吸い込まれるように見えます。
そしてこの時、ガス雲がある程度の大きさを持っていたとするとブラックホールに
近い側に働く力と遠い側に働く力では違いが生じます。これを潮汐力といいます。
この力は身近でいえば地球における潮の満ち引きの原因にもなっています。
ブラックホールに吸い込まれるガス雲はこの潮汐力の効果で、進行方向に引き伸
ばされます。同時に軌道平面に対して垂直な方向ではガスは強力な圧縮を受けるの
です。この強力な圧縮によってガス雲は加熱され、結果明るく輝くというのです。
さぁ、このシミュレーションによる予測は当たるのか?それを確かめるのは観測
です。この輝きがそろそろ観測されてもいいのではないかとも言われています。残
念ながら今のところそのような報告はありません。今後新しい報告がいつされるか
もわかりませんが、私自身、素晴らしい観測結果が報告されることを心待ちにした
いなと思います。
(小林:大阪教育大学 2013年06月)
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