連載:あなたの知らない宇宙
【第32回 ブラックホールが星を食べる瞬間に迫る 3】
とても重力が強く、光さえも吸い込んでしまう天体「ブラックホール」。そのよ
うな天体が我々の住んでいる天の川銀河の中心に存在すると言われています。その
名も SgrA*(サジタリウスエースター)と言います。
そんなブラックホールに今年度、ガス雲が落ちるかもしれないということが言わ
れています。前回はそのガス雲がブラックホールに近づく際に輝くかもしれないと
いう話をしました。では、落ちた際にブラックホールはどうなるのでしょうか?た
だ、ガス雲を吸い込んでしまっておわりなのでしょうか!?いいえ、そんなことは
ありません。ブラックホールがガス雲を吸い込むとき、光すら吸い込んでしまうブ
ラックホールの周りに、宇宙で一番といってもいいほど明るく輝くガスの円盤が形
成されるのです。このガスの円盤を降着円盤といいます。では降着円盤はどのよう
に形成され、なぜ明るく光るのでしょうか。
ブラックホールとガス雲という質量を持った二つの天体が存在するとき、その間
には万有引力が働きます。名前の通り引き合う力で、ブラックホールにガスが吸い
込まれるように見えることでしょう。では、ガス雲はブラックホールにまっすぐ吸
い込まれてしまうのかというとそうではありません。ガス雲は元々ブラックホール
とは別の方向に動いていたので、まっすぐ吸い込まれるのではなく、回転しながら
吸い込まれるのです。
ここでいきなりですが、太陽系の惑星を思い浮かべて下さい。惑星は太陽の周り
を回っていますが、その速度を調べると、内側の水星が一番速く、外側の惑星ほど
遅く回転していることがわかります。これと同じように、ガス円盤も内側の方が速
く外側の方が遅く、回転します。内側と外側で回転する速度が違うので、ガス同士
に摩擦が生じるのです。
日常生活において、摩擦で発生する熱というのはたいした量ではありませんが、
ブラックホールの周りを回るガスの速度はきわめて大きく、それだけ強力な摩擦が
起こり、多大な熱が発生します。そして、円盤の温度は 100万度をはるかに超え、
すると、この熱によって、円盤は膨大な光(X線など)を放射するのです。
(小林:大阪教育大学 2013年08月)
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