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2013.03.14 更新 (更新履歴)


 

連載:あなたの知らない宇宙

【第36回 アストロバイオロジー − 地球以外に生命は存在するのか】

 宇宙人はいてるのか?
 地球以外の星に生命は存在するの?

 そのような疑問を抱いたことがある人は多くいるのではないでしょうか。しかし、 それと同時に、この疑問はSFの世界だけの話で、現実の世界ではこの疑問を解決 することなど出来ないと思っている人も多いのではないでしょうか。そのようなこ とはありません。近年、生命に関する理解の深まりと、観測技術の発達によって、 地球外に生命が存在する可能性が証明されようとしています。今回は、そのような 宇宙空間における生命に関する学問「アストロバイオロジー、宇宙生物学」のお話 です。

 宇宙における生命の話の前に、そもそも人間は何で出来ているのかについて話を しましょう。人間の身体はおよそ 6割が水分で、残りの 4割はたんぱく質です。体 全体を覆う皮膚、爪や髪の毛、そして筋肉はすべて主にたんぱく質で出来ています。 そしてこのたんぱく質はアミノ酸という物質の組み合わせで出来ています。さらに、 このアミノ酸は水素、炭素、窒素、酸素という 4種類の元素の複数の組み合わせに よって出来た物質になっているのです。

 さて、人間を構成する物質は、水を除けばその大半が、 4種類の元素でできたア ミノ酸ということがわかりましたが、このアミノ酸には不思議な特徴があります。 「鏡像異性体」というものをご存知でしょうか、複数の元素が立体的に組み合わさ ったとき、含まれている元素の種類や個数、そのつながり方も同じなのですが、そ の配置は鏡に映したように異なる 2種類の物質が存在しうるのです。アミノ酸の鏡 像異性体は左手と右手から連想されるように、左手型アミノ酸と右手型アミノ酸に わけられます。これらのアミノ酸の性質はほとんど同じです。ところが、地球上の 生命はなぜかほとんど左手型アミノ酸ばかりでできているのです。

 ではなぜ、左手型アミノ酸ばかりでできているのか。いくつか理由は考えられて いるのですが、その中のひとつ「円偏光」という特殊な光について紹介します。

 光とは、物理学的に「電磁波」のことです。電磁「波」つまり、波なので振動が 生じます。この振動は大きく二つに分けられます。新体操選手がリボンを握った手 を上下に動かすと、リボンは縦方向に振動します。このような振動をする光を「直 線偏光」と言います。一方で、リボンを握った手をぐるぐると円を描きながら回す と、リボンは円を描きながら進んでいるように見えます。このような振動をする光 を「円偏光」というのです。

 こういった円偏光をアミノ酸に照射すると、左手型アミノ酸と右手型アミノ酸の 間で、右円偏光と左円偏光の吸収の仕方が異なるという興味深い性質がわかってい るのです。しかし、この円偏光という光はとても特殊で、そう簡単に存在するもの ではありません。逆に、宇宙のどこかに左右の円偏光が存在する領域があれば、左 手型アミノ酸の偏りの可能性が、つまりは生命の存在する可能性が考えられます。

 それが実際に観測されたのが、オリオン大星雲です。ある研究チームが南アフリ カにあるIRSF望遠鏡でオリオン大星雲の方向を観測したところ、そこには強い円偏 光が観測されたのです。さらに、オリオン大星雲の中心部に発見された円偏光には、 右円偏光と左円偏光がそれぞれ分かれた領域に広がっていたのです。結果として、 このような円偏光のために、地球と同じように左手型アミノ酸による生命が生まれ てきたのではないかと考えられました。

 このように、地球外に生命が存在する可能性が考えられました。しかし、まだま だ課題はたくさんあります。今後、科学が発展し、いつか地球以外の生命に出会え る日がくるといいですね。


(小林:大阪教育大学 2014年01月)