連載:あなたの知らない宇宙

【第39回 ものすごい明るい超新星!? 2】

 第30回にもありましたが、今回はIa型超新星のお話です。

 連星系を成す白色矮星が、伴星からの質量を得て、チャンドラセカール限界質量 に達した時、超新星爆発を引き起こします。これがIa型超新星となります。

 特定の限界質量を持つことから、どのIa型超新星も似通った明るさで輝くことが 期待されていましたが、実際にはわずかに明るさのばらつきが見られます。

 Phillipsらによって、いくつかのIa型超新星のサンプルから、明るい超新星はゆ っくり暗くなっていくというように、ピークでの明るさと減光の速さの間には相関 関係があることが調べられました。
つまり、Ia型超新星は減光の速さを調べてあげることで、超新星までの距離の推定 ができるのです。この発見を遠方宇宙で出現したIa型超新星に応用し、宇宙の加速 膨張も発見されました。

 しかし、2010年にとても明るいIa型超新星というものが発見されました。この超 新星は明るさの変化など通常のIa型超新星と似通っているのに関わらず、通常のIa 型超新星の約30倍ほどの明るさを持つものでした。これでは先ほどお話した明るさ- 減光の速さの関係をあてはめることができません。

 そのため、この明るすぎる超新星の正体は一体何なのかという議論が起こりまし た。そもそもとても新しいタイプのとても明るい超新星だったのでしょうか…?

 その後の詳細な研究で、超新星の手前にある銀河によって"重力レンズ効果"が起 こり、とても明るく輝いて見えたということがわかりました。

 一体、重力レンズ効果とは何なのでしょうか?一般相対性理論では、質量を持っ た物体の周りの空間は歪むため、空間を直進することはできずに光は曲がって進み ます。このため、ある天体から発した光は、手前の物質によって曲げられ、像がゆ がんだり、明るく見えたりするという現象です。

 今回、超新星の手前にある銀河によって光が曲げられたため、明るく見えたとい うことだったのです。

 重力レンズによって明るく見えるため、今までの予想よりも多くの超新星が見つ かるだろうと考えられています。今後の超新星の観測が、宇宙膨張の研究において 重要になると期待されています。


参考URL
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構
http://www.ipmu.jp/ja/node/1870


(川端:広島大学 2014年07月)