連載:あなたの知らない宇宙

【第41回 月が見えないはずが見える!?皆既月食】

 2014年10月8日、日本各地で皆既月食が見られました。
前回、日本で見られた皆既月食は2011年12月でしたから、約3年ぶりとなります。

 さて、月食は月が地球の影に入り、月が隠されて見えなくなる現象です。皆既月 食が月がすっぽり地球の影に入ってしまうもの。月がすっかり見えなくなってしま うのかと思いきや…実はまん丸の月が見えるようになるのです。だんだんと欠けて いって、すべて見えなくなる…のではないのです。しかも見えるまん丸の月は赤銅 色をしています。
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これはいったいなぜでしょうか?

 皆既月食中に月を赤く見せている犯人、それは地球の大気です。

 地球に大気があるため、地球の影の輪郭ははっきりしていません。月食の画像を 見ると、欠け際がくっきりとしていないことがわかります。(一方、大気がない月 の影が地球に映る現象=日食は、その欠け際がくっきりしています)その大気は、 太陽からまっすぐ飛んできた光を真っ直ぐ通さずに曲げてしまいます。光の屈折と 呼ばれる現象ですね。つまり、大気がなければ真っ直ぐに進んで月には当たらない はずの光が、地球の大気による屈折で地球の影の中に回り込み、月に当たるように なるのです。しかも、通過させるのは赤色やオレンジ色の光だけなのです。波長が 短い青い光は空気中の気体分子や細かい塵に散乱させられてしまい、大気をほとん ど通過することができません。波長が長い赤い光は散乱されにくいため、光が弱ま りはしますが空気を通過し、月まで到達します。それゆえ、皆既中の月が赤銅色に 見えるのです。
http://www.nao.ac.jp/contents/astro/sky/2014/lunar-eclipse/color-l.jpg

 このようなメカニズムのため、皆既月食のときの月の色は毎回同じではありませ ん。地球大気中の塵によって光が散乱させらてれしまうということは、塵の量が多 いと赤い光でさえ通過できなくなってしまうのです。

 1991年6月、フィリピンのピナトゥボ火山が大噴火を起こしました。20世紀最大の 噴火とも言われ、その噴煙は成層圏にまで達し火山灰が地球大気全体にまで広がり ました。その2年後…1993年6月4日の皆既月食は、月の一部が赤く見えたもののほと んどが真っ暗で見えないという異様な皆既月食となったのです。
http://www.hirahaku.jp/hakubutsukan_archive/tenmon/00000022/image/00011544.jpg

 皆既月食の色は地球の大気の様子を知るバロメーターとも言えそうです。さあ、 今回の月食はいったいどんな色に見えたでしょうか?また、来年2015年4月4日にも 皆既月食が見られます。その時はどのような色をしているのでしょうか?
それを確かめるのは…皆さん自身ですよ!


(塚田:平塚市博物館 2014年09月)