連載:あなたの知らない宇宙

【第49回 知ってる?X線天文学】

 はじめにX線について簡単に説明します。 可視光や電波は波長(単位:m)で表すことが多いですが、X線は一般的にエネルギーで表され(E=hνより)、単位はkeV(キロエレクトロンボルト)がよく使われます。 温度に換算すると1keV=1千万度ほどとなります。 とても高温ですね! また、10keV以下を軟X線、10keV以上を硬X線と呼びます。 X線天文学ではこのような電磁波を用いて観測をします。

 X線天体は高エネルギーの電磁波を放出できる環境を伴います。 たとえば、1000万〜1億度の高温天体(恒星コロナ、天の川、超新星残骸、銀河団)や強重力天体(ブラックホール、中性子星、白色矮星)などです。 あまり聞きなれない天体もあるかもしれません。 しかし、宇宙で観測可能な物質の90%は高温のプラズマ状態であり、宇宙はX線天体だらけなのです!! このことからX線観測の重要性がわかると思います。

 しかし、問題もあります。 上の図は縦軸が高度(気圧)、横軸が波長で示されています。 黄色の領域がX線で、X線のほとんどが地球の大気に吸収され、地表までたどり着かないことがわかります。 地上での観測は難しいのです。 そのため、X線領域では主に衛星による観測が行われています。 これまで日本のX線望遠鏡は5機運用されてきましたが、2015年度に次期X線天文衛星ASTRO-Hが打ち上げられる予定です。

ASTRO-Hの科学的な目的は

 ・宇宙の大規模構造と、その進化の解明
 ・遠方(過去)の巨大ブラックホールの進化と銀河形成に果たす役割の解明
 ・ブラックホール周りの時空構造の解明
 ・粒子の加速メカニズムの解明
 ・ダークマター、ダークエネルギーの解明

などです。

打ち上げの成功を祈りましょう!


参考文献:
・JAXA ASTRO-H計画とその目指すサイエンス
http://www.cta-observatory.jp/workshop/CTA-J/2013/presentations/13.Kokubun_130904-CTA-ASTROH.pdf#search='ASTROH'




(関: 2015年11月)