連載:あなたの知らない宇宙

【第50回 宇宙最大のなぞ!?宇宙膨張の秘密とは?】

 1929年エドウィン・ハッブルは宇宙が膨張していることを発見しました。 こうやって過ごしている間にも宇宙は膨張しているわけですが、逆に言えば過去に遡っていけば、宇宙は今よりもずっと小さかったことになります。 そして、宇宙には極端な高温高密度状態の始まりが存在し、膨張して現在の宇宙になったという考え方(ビッグバン理論)が生まれるのです。 今では、この考え方は観測事実によって最も有力な考え方となっています。

 ところで、宇宙の膨張に関して、驚愕の観測事実がもう一つあるのです。 距離が遠い銀河ほど遠ざかる速度が速いのです。 つまり、宇宙が今現在「加速」膨張しているということです。 実は、宇宙が加速しながら膨張しているというのはとっても不思議なことなのです。

 例えば、「物質のない空っぽの宇宙」だとしたら、宇宙はどのように膨張するでしょうか? そのような宇宙の場合は、膨らむ速さが一定のまま膨張するでしょう。 では、「物質のある宇宙」ではどのように膨張するでしょうか? 物質のある宇宙では、物質の重力に引っ張られて、速さはだんだん遅くなっていき、やがて宇宙の膨張は終わることになるでしょう。

 このように考えるならば、私たちが住んでいる「物質のある宇宙」では膨張速度が減速していくはずです。 しかし、観測は宇宙膨張がどんどん速くなっていることを示しています。 わかりやすい例えとして、リンゴを投げ上げることを想像してみてください。 もし、あなたが今リンゴを上に投げたら、きっと地球の重力に引っ張られて、下に落ちてくるでしょう。 宇宙が加速膨張しているというのは、このリンゴが下に落ちてこないで、どんどん上に突き進んでいくことを意味しています。 ありえないですよね? でも、そんなありえないことが実際の宇宙では起こっているということです。

 宇宙では、物質の重力に反発するような「負の圧力」がどうやらはたらいていて、その力が宇宙を加速膨張させていると考えられています。 ただし、どのようにしてそんな力がはたらいているのかは全くわかっていません。 これは、天文学・物理学最大の難問とまで言われています。

 宇宙を加速膨張させる正体不明のエネルギー。”暗黒エネルギー”と名付けられたこの正体不明のエネルギーは、宇宙の組成の実に72%を占めると考えられています。 私たちは、ようやく「宇宙というのはよくわからないということがわかった」段階に来ただけなのかもしれませんね…。




(早川: 2016年01月)