連載:あなたの知らない宇宙

【第51回 最近話題の『太陽系第9惑星』って?】

 2016年に入って、『太陽系第9惑星が存在する可能性がある』という報告が、カリフォルニア工科大学のKonstantin Batygin氏とMike Brown氏によってなされました。 いくつかのニュースは『太陽系第9惑星が見つかった』と報じていますが、あくまで可能性があるだけなのです。 というのも、今回存在が予知された惑星は地球から非常に遠く、直接観測するのは現状困難です。 そうなると、何故『可能性がある』と言えるのか不思議に思いますよね? 今回は、どのようにして太陽系第9惑星の存在が予測されたのかをお話したいと思います。

 現在では複数の太陽系外縁天体が見つかっていますが、そのうち比較的大きい6つの天体に彼らは着目しています。 この6つの天体は離心率が大きい太陽を一つの焦点とする楕円軌道をしていますが、太陽に最も近づく近日点に至るのがほぼ同時であることが分かっています。 もし、6つの天体が全くの偶然で同時に近日点に至る確率は0.007%と非常に小さく、何か理由があるだろうと考えたわけです。

 そこで、6天体と同じ軌道面上に、6天体が近日点に来るとき遠日点に至るような質量が地球の10倍以上の新しい惑星が存在すれば上手く説明できることが分かりました。 新惑星の軌道長半径は約700 AUで高離心率、高軌道傾斜角と推測されています。 これが、今回存在を予測された既存の太陽系惑星と比べると異質な太陽系第9惑星です。

 そもそも、太陽系第9惑星と言えば2006年以前までは冥王星でした。 冥王星は1930年にアメリカの天文学者Clyde William Tombaughによって発見されました。 質量は地球0.1%と小さいにも関わらず、当時は39.5 AUという大きい軌道長半径を持つ天体が他に見つかっていなかったため、冥王星は外惑星の一つとして扱われていました。 しかし、1992年から冥王星以外 の太陽系外縁天体が続々と発見され始め、2003年にMike Brown氏らのグループが冥王星より少し大きい太陽系外縁天体であるエリスを発見したことを機に、冥王星は2006年の国際天文学連合総会で準惑星に分類されるようになったのです。 冥王星から惑星の称号を剥奪するきっかけとなったMike Brown氏 が今回新たな惑星の存在を示唆するというのは運命的なものを感じざるを得ません。

 今後、さらなる詳細な観測によって本当に太陽系第9惑星が存在するのか確かめられることが期待されます。 また、このような惑星が存在するのであれば、太陽系の形成史を調べるよい手がかりになるかもしれませんをつけられるかもしれません。 今後の研究の発展が楽しみですね。


参考文献:
K. Batygin and M. Brown 2016 (2016) The Astronomical Journal, Vomule 151, Number 2




(小野: 2016年02月)