連載:あなたの知らない宇宙

【第57回 バリアフリー天文学】

みなさん、「バリアフリー天文学」という言葉をご存じでしょうか。 「バリアフリー」という言葉を聞いたことがある方なら多いかと思います。 天文学とは、星を見たりするように、一般には見ることが前提である学問だといえます。

それでは、例えば目の見えない人はどのようにして天文学を学ぶのでしょうか。 見えないという“障壁(バリア)”を、点図や点字、立体模型などで触って学ぶことによって、“障壁を取り除く(バリアフリー)“ことができますね。 このように、従来の天文教育普及活動で忘れられがちな障がい者(視覚、聴覚,知的・・・)やこどもたちなどあらゆる人を対象とした天文教育を「バリアフリー天文学、ユニバーサルデザイン天文教育」と呼びます。 ここで重要なのは、この活動は「特殊な立場」にある人々への「特別な活動」ではない、ということです。 では実際にどんな活動がおこなわれているのか、具体的に紹介したいと思います。

星を見る場所といえば、天文台がありますが、天文台の設備にもバリアフリーが取り入れられています。 例えば、国立天文台では、望遠鏡を車いすのまま観望できたり、紹介パンフレットを点字で作成しています【1】。 また、科学館ではプラネタリウムで星について学ぶことができますが、山梨県立科学館では、全編手話付きで、みんなで手をつかって星を測ったりするプログラムが過去に行われました【2】。 福音館書店の科学雑誌「大きなポケット」2011年2月号に掲載の高橋淳・坂井治・嶺重慎著の原稿【3】をもとにした小学生向け科学絵本の開発では、活字版(活字を用いた紙印刷の本)・点字版(点字と点図で構成する本:下図)・音声版(音声を録音したCD)の3つの異なる形式で提供されています【4】。 これからさらにバリアフリーが取り入れられ、天文教育があらゆる人々に普及していくことを願いたいものですね。



参考文献/参考HP:
【1】国立天文台 http://www.nao.ac.jp/astro/sky/2016/11.html
【2】山梨県立科学館 http://www.kagakukan.pref.yamanashi.jp
【3】月刊版『大きなポケット』 福音館書店、2011年2月号
【4】バリアフリー天文科学絵本の開発・刊行
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/static/ja/news_data/h/h1/news6/2012/120425_1.html




(2016年11月)