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【第20回 花山天文台】

 今回は京都府京都市山科区の花山山 (かざんやま。華頂山や清水山とも)にある「花山天文台」を紹介します。

 昭和4年(1929年)に設立された非常に長い歴史をもつ天文台であり、京都大学の大学院理学研究科付属の施設です。 天文台は主に本館と別館に分けられており、本館は直径9mのドーム内に口径45cm屈折天体望遠鏡、別館は直径3mのドーム内に口径18cm屈折天体望遠鏡が設置されています。 この二つの望遠鏡、実はそれぞれとても特徴的な望遠鏡なのです。

 45cm屈折望遠鏡は、日本にある屈折望遠鏡の中で3番目に大きいものです(口径1m以上の望遠鏡はすべて反射望遠鏡)。 かつてこのドームの中には口径30cmの望遠鏡が設置されていましたが、昭和44年に性能向上のため現在の望遠鏡へと換装されました。 その際レンズの大きさの関係から、既存のドーム内で焦点を結ぶことができなかったため、光を鏡筒内部の鏡で反射し、鏡筒中央付近にある接眼レンズから観測するという、特殊な光学系をとっています。

 もちろん望遠鏡自体も非常に大きいため、観測の際には接眼レンズまで約4mの架台を上らなければなりません! 筆者は実際に上ってみたことがありますが、スリル満点でした(笑)。 また、昨今の望遠鏡の星の自動追尾には機械やコンピューターが使用されていることが一般的ですが、この望遠鏡追尾にはおもりが重力で落ちていくことを利用する重力時計が使われています。 そのアナログさゆえに、なんと停電中であっても星の日周運動を自動で追いかけることができるのです。

 18cm屈折望遠鏡の歴史は実は花山天文台自身よりも古く、なんと明治まで遡ります! 明治43年(1910年)に京都帝国大学(現在の京都大学)がその年のハレー彗星の回帰を観測するために購入し、花山天文台の開設に伴い移動されました。 購入から100年以上が経った今でも、晴れた日には毎日、Hα線による太陽の観測を行っています。 そして、この18cm屈折望遠鏡は、天文学に学術的寄与をもたらす観測を行う天体望遠鏡としては、日本最古のものになります。

「そういえば45cmの望遠鏡は学術研究的な観測はしていないの?」
と思われるかも知れませんが、その通りで既に研究観測は行っていません。 1968年に飛騨天文台が岐阜県に設立され(こちらも京大の持ち物)、この望遠鏡の機能はそちらへ引き継がれました。

 ではこの望遠鏡は一体何に利用されているかというと、学生への講義や実習、そして主に一般の方を対象にした観望会のために活用されています。 そう! この望遠鏡はこの記事を読まれているあなたでも(4mの架台のスリルを味わいながら(笑))覗くことができるのです。 観望会は不定期ですが年に数回、主に月や惑星を対象とした観測が行われています。 直近では来年の3月にも開催されるそうです! ご興味のある方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか!!

参考文献:
花山星空ネットワーク
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/hosizora/
京都大学大学院理学研究科付属天文台
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/




(福嶌: 2015年12月)