連載:宇宙×◯◯

【第7回 X温泉】

 師走を迎え、なにかと気ぜわしい毎日ですが、このような時こそ温泉にでも浸か って体を癒やしたいものです。冬の寒さの中、熱い温泉に入ることは多くの日本人 にとって至福となるでしょう。
今回は『宇宙×温泉』をご紹介します。

 未来を考えてください、宇宙旅行が一般的に広まり、一般の人が現在の海外旅行 と同じような感覚で宇宙旅行に行く時代が来たとしましょう。月に降り立って低重 力を体感したり, 土星の環などの地球上では見ることが能わない景色を楽しむこと が出来るようになります。そうなると、我々日本人は宇宙に温泉を求めるのは当然 の成り行きと言えます。しかし、地球以外に温泉などあるのでしょうか?

 温泉があるための条件は、宇宙にある多くの天体にとってかなり厳しいものです。 なぜなら、水蒸気でも氷でもなく『水』がある必要があるからです。温度が高過ぎ ると水は蒸発して天体からいなくなってしまいます。一方で、温度が低すぎると全 ての水が氷になってしまいます。その上に、温泉と言うからには地熱があってお湯 ができないといけません。このように厳しい条件をみたす天体が地球以外に存在す るのでしょうか。

 実は地球以外に温泉があるかもしれない天体が太陽系の中にあります。それは、 木星の衛星である『エウロパ』です。エウロパには非常にたくさんの氷があります。 しかし、木星は地球に比べて太陽からの距離が5倍もあり、太陽光が弱いために、エ ウロパの表面の温度は-170度と非常に温度が低いのです。これでは温泉どころか、 水もできません。ところが、エウロパには地熱があり、表面が非常に低温にもかか わらず、海が地表の内部にあり、間欠泉が表面にあります。間欠泉があれば、温泉 が期待できます。さらに、土星の衛星である『エンケラドス』にも多くの間欠泉が あることも最近発見されています。

 将来、宇宙旅行に出かけた際、『ちょっと宇宙温泉に行こう』と言ってエウロパ やエンケラドスに向かうことがあるかもしれませんね。


(小野:京都大学 2014年12月)