連載:宇宙×◯◯

【第9回 X天気予報】

 みなさんは、普段どれくらい天気予報を気にしているでしょうか?
運動会や外に遊びに出かけるなどの特別な日なら、晴れるかどうかが気になって天 気予報を調べますよね。今回は『宇宙×天気予報』と題して、近年研究が進む「宇 宙での天気予報」について紹介します。

 「宇宙での天気予報」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべたでしょうか? 「えっ、宇宙では空気ないし、雨とか降らないんじゃないの?」と思い浮かべたあ なた、正解です。一歩地球の大気を出てしまえば、そこはほとんど真空の空気のな い世界。雨も雪も降りません。「空気がないんだから、風も吹かないんでしょ?」 と思ったあなた、実は風は吹きます。それも、私たちに一番身近な星、太陽からで す。

 この太陽から吹く風は「太陽風」と呼ばれています。
太陽風は太陽から流れ出したプラズマガス(電気を帯びたガス)で、惑星間空間を 秒速(時速ではありません)数百キロメートルという猛烈なスピードで飛びます。 この太陽風に当たると、生物は被爆してしまいますし、機械は故障してしまいます。 地球にいる私たちは、地球の磁場「地磁気」によって守られているため、この太陽 風の影響を直接受けることはありませんが、地球の外にいる宇宙飛行士や人工衛星 にとっては極めて危険な風です。

 さらにこの太陽風より危険なのが、「太陽フレア」と呼ばれる太陽表面上で起こ る爆発現象です。この太陽フレアでは、太陽風よりもずっと大量のプラズマの塊が 太陽から放出されるため、地球に向かってきたとしたら大変なことになります。宇 宙飛行士や人工衛星だけでなく、地球上にいる私たちや機械にも影響が出ることが あります。実際、1989年3月には、太陽フレアの影響を受けてカナダで9時間にも及 ぶ大規模停電が起こりました。怖いのは停電だけではありません。地磁気が乱れる ことによって人工衛星を利用した GPS も影響を受けるため、旅客機や遠洋漁業中 の漁船などが自分の位置を把握できなくなる可能性もあります。考えただけでも怖 いですね。

 そのため、この太陽風や太陽フレアがいつ、どの程度の規模で起こり、地球にや ってくるかを予測することで、地球の天気予報と同じように予報することが重要に なります。これが、「宇宙天気予報」です。実は、既に日本でも「宇宙天気情報セ ンター」が設立されており、毎日宇宙天気情報が公開されています。例えば2015年 2月22日の宇宙天気には「太陽風速度は340km/s前後で推移し、地磁気活動は 静穏でした。」と書かれています。今後太陽の活動が活発になることが予測されて いますので、これからしばらくは地球の天気だけでなく、宇宙天気も気に掛けてみ るべきかもしれません。と言っても、地球に非常に大きな影響が出るような太陽フ レアが起こった際には、必ずニュースなどで大々的に報じられますので、毎日深刻 な気持ちでチェックする必要はないですよ。



(MARK:愛媛大学 2015年03月)