連載:宇宙×◯◯

【第13回 X国境】

 皆さんは、以前カップヌードルのCMで「NO BORDER」というシリーズがあったことを覚えていますか? 宇宙編では宇宙飛行士が浮いているカップヌードルを口にしている映像がとても印象的で、僕の頭にはとても鮮明にその映像が記憶されています。 また、そのCMの中では地球の映像とともに「この星にBORDERなんてない」というキャッチコピーが流れ、宇宙から見たら地球なんてちっぽけな存在で、戦争とかバカバカしいなぁ、と子ども心ながらに感じていました。

 確かに、「宇宙から見たら地球に国境なんてない」という謳い文句は昔からよく言われていますが、最近この謳い文句が真実ではないことを宇宙飛行士は知っています。 そう、私たちは国家間での境界線をより強固なものにしていく中で、「宇宙でも見える国境」を作り上げているのです。



 例えば、上の画像は2014年11月に国際宇宙ステーション(ISS)から撮影されたものです。 イラクとイランの国境を示していますが、国境と平行に走るいくつもの線や円が見て取れます。 これらは単純に道路を表しているだけでなく、砲床や土塁といった軍事的な戦略の中で描かれた「人為的な国境」を示しています。



 さらに、2011年にまでさかのぼると、インドとパキスタンの国境を撮影した画像があります(上の画像)。 この画像を見ると、インドとパキスタンの国境に沿ってオレンジ色に光る奇妙な線が見て取れます。 これは2003年以来、インドが武器の密売やテロリストの侵入を防ぐために、投光照明でパキスタンとの国境を明るく照らしていることが原因です。

 このように、私たち人間は国家間での対立を強めれば強めるほど、宇宙からでも見える国境をより鮮明に浮かび上がらせていきます。 この不気味なほど秩序立った線が宇宙からでも見えると知ったとき、僕は戦慄を覚えずにはいられませんでした。

本当の意味で「NO BORDER」と呼べる日は果たして訪れるのでしょうか…。

<参考文献>
UNIVERSE TODAY 「This is What War (and Borders) Look Like From Space」
http://www.universetoday.com/118724/this-is-what-war-and-borders-look-like-from-space/




(早川:大阪教育大学 2015年06月)