連載:宇宙×◯◯

【第19回 X機雷】

今回は、宇宙×機雷、すなわち宇宙機雷についてお話しします。

 安倍さんが大変こだわっていたにも拘わらず、こともなげにあっさりと取り下げてしまった、ホルムズ海峡に敷設される予定の(敷設されるのか?)あの機雷の宇宙版です。 第2回の×マンガ、第6回の×アニメと、ややかぶるところがあるかもしれません。

 宇宙機雷はいろいろなマンガやアニメ、SF等で取り上げられているようですが、ここで取り上げるのは宇宙戦艦ヤマトのそれです。 ガミラスの冥王星(当時はまだ惑星でしたね)前線基地を突破したヤマトは、バラン星のドメル将軍が敷設した機雷群に取り囲まれます。 機雷は徐々にヤマト機体に近づきつつあり、ヤマトは止む無くエンジン停止、身動きが取れなくなります。 後は玉砕を待つばかり。 果報は寝て待てとばかりにデスラー総統は安心しきって眠ってしまいます。
危機一髪のヤマト・・・。

さてヤマトは、この重大危機をどのようにして切り抜けたのでしょうか?

答えはいたって簡単(しかし、極めて危険)で、機雷のひとつひとつを乗組員の手で押しのけることによって、航行路を確保し、切り抜けたのでした。



古代進「あきれた。大変な宇宙機雷だと思ったけど人間の手で運べば何ともないなんて!!」

ヒス副総統「は・・・奴らは・・・地球人は我々の考えない方法を使いました。つまり手で」

デスラー総統「手で?」

・・・自らは科学・技術の著しく発展した文明人、地球人は原始人レベルと見做していたガミラス人の盲点を突く作戦でした。 ここで、私が重要視したいのは、自らの手を使っての直接作業ということです。 現在はスマホやタブレット、あるいはゲーム端末機などを使って実に様々な作業ができます。 そういった操作に慣れなければきちんとした仕事もできない状況でしょう。 しかし、最先端の技術でも根本的な所では職人や技術者の直接手作業によるところが大きいということをガミラス人ならずとも認識すべきだと思っています。 精密はんだ付けや、ブロックゲージの研磨、あるいは、ハッブル望遠鏡の修理や、スペースシャトルのはみ出し耐火タイルの切除作業など、超最先端の宇宙作業でも直接手仕事が必要です。

私は心理学実習という授業で学生に、レポートには実験装置の説明をきちんと載せるように指導していますが、彼らはまず、装置の図を描く、ということをしません。
「文章だけでわかるのか?」
というと、
「手で描いていいんですか?」
と言います。 自らの手を使うという文化のない彼ら(文系(文学部)学生なので、無理からぬところもありますが)に対して、私はいつも上記宇宙機雷の話をしています。 とはいえ、酒を呑んで車で家まで帰れる完全自動運転車の普及も心から待ち望んでいます。


参考文献:
松本零士 1975 宇宙戦艦ヤマト@ pp119-129 秋田書店 東京




(尾崎: 2015年11月)