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黄華堂通信  No. 045 ◆◇◆  2011年 8月号  ◇◆◇

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黄華堂のつぶやき!@oukadoで天文現象やイベント情報についてつぶやいています!

【もくじ】

【1】来月の星空
【2】宇宙開発裏話
【3】あなたの知らない宇宙
【4】続・ホシノキヲク
【5】黄華堂宇宙検定
【6】黄華堂の活動予定

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【1】来月の星空

 一足早く来月の星空をご紹介します。
 8月の星空についてはこちらを!
 http://www.oukado.org/hosizora1108.htm

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*2011年9月の星空

 9月になると夜はずいぶん涼しくなり、星空観測には一枚羽織るものを用意したくなってきます。星空には秋を代表する星座たちが昇り始め、東の空には翼を持つ馬であるペガスス(ペガサス)座が見られます。ペガスス座の胴体にあたる部分には4つの星々が目立ち、「ペガススの四辺形」や「秋の四辺形」などと呼ばれています。これらの星を目印にして、こぐま座にある北極星や秋の星座の中で唯一の一等星であるフォーマルハウト(※)などが見つけられます。「ペガススの四辺形」の4つの星はいずれも二等星以下で、明るい星からなる夏の大三角に比べ暗くてやや見つけにくいですが、是非観測してみましょう。

 また、12日は「中秋の名月」と呼ばれる、一年の内で最も月が美しく見えるとされている日です。日本では、月が見える位置にすすきを飾って月見団子や里芋やお酒などを供え、満月を鑑賞するという風習があります。普段は忙しくて空を見上げることがない方も、この日ばかりは少し月に目をやって風情を感じてはいかがでしょうか。

※フォーマルハウトについて
 みなみのうお座にあるフォーマルハウトという星には、2008年にハッブル宇宙望遠鏡による観測で、惑星(=地球や木星といった、太陽のように自ら光る星の周りを周る星のこと)が存在していることが分かりました。可視光という目に見える光で直接観測して発見されたのは史上初めてのことでした。

*天文現象いろいろ
■ 1日 二百十日
■ 5日 上弦
■ 8日 白露(太陽黄経165度)
■12日 中秋の名月
      満月
■15日 月の距離が最遠(距離 40 万 6068 km、視直径 29.1')
■20日 下弦
■23日 秋分(太陽黄経180゚、東京日出:05時29分、日入:17時38分)
■27日 新月
■28日 月の距離が最近(距離 35 万 7554 km、視直径33.8')

参考サイト
AstroArts「天文現象カレンダー」
http://www.astroarts.co.jp/phenomena/2011/ph201109-j.shtml

(廣井:京都大学)

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【2】宇宙開発裏話
「パイオニア・アノマリーの正体」

 ボイジャーが太陽系グランドツアーへ向かうちょっと昔、初めて小惑星帯を抜けたパイオニア10号と11号という探査機をご存知ですか?木星と土星の探査を無事成し遂げたのですが、さらに太陽系の辺境へ向かう際に、不思議な現象が発見されました。探査機の速度を調べてみたところ、予測よりほんの"わずか"に減速していたのです。それは、距離にしたら1年で400kmしかないズレでした。

 この現象はパイオニア・アノマリーと呼ばれ、これまで数々の可能性が指摘されました。重力理論の誤差、未知の天体や銀河の重力の影響、軌道プログラムの誤りなど、様々です。ただ、肝心のデータが古い磁気テープに保存されたままで、長い間、減速の方向やその変動を正確に把握できていませんでした。

 そこで、立ち上がったのがアメリカの民間団体『惑星協会』です。一般市民から資金を集め、膨大な磁気データのデジタル化が行われました。かの有名なカール・セーガンらが設立したこの組織では、他にもお家でできる宇宙人探査『SETI@Home』や、ソーラーセイル実証機『コスモス1』が企画されています。(日本にも『日本惑星協会』として派生し、はやぶさに名前を載せるキャンペーンなどが行われましたが、残念ながら先日解散しました。)

 集まったデータを再解析した結果、減速の大きさは、打上げ直後から徐々に小さくなっている事実が判明しました。もっとも有力な説として、探査機に載っている原子力電池の熱放射が考えられています。

 木星より遠くを飛行する探査機は、太陽の光が弱すぎて太陽電池では十分な電力を得ることができません。大抵、原子力電池と呼ばれる、特殊な電池が使われています。ちょっと難しくなりますが、プルトニウム238という原子が崩壊するときに発生する熱を、熱電素子という熱を電力に変える装置を使って、電力を得る仕組みです。非常に簡単な構造なので、信頼性が必要なペースメーカーの電源としても使われてきたのですが、難点が1つあります。熱エネルギーのわずか数パーセントしか電力に変換できず、大半の熱が余ってしまうのです。パイオニア探査機も同様に、使われなかった熱が電磁波として放出され、解析してみると探査機の進行方向から発せられていました。どうやらこの電磁波がパイオニアを減速させてたらしいのです。

 近年では、より探査機をコンパクトにするために、効率の良い原子力電池が開発されています。また、原子力電池は危険な放射性物質を使うので、太陽電池でも動くように、省電力に設計した探査機も打上げられています。

 省エネは、宇宙でも重要な問題なんですね。

(藤井:大阪教育大学)

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【3】あなたの知らない宇宙
「惑星の磁石」

 地球では方位磁石の針がいつも北を指すので、まるで地球の中心に強力な棒磁石が置かれているような地磁気のことをご存知の方もいらっしゃることでしょう。地球の中心部分の外核には、溶けた鉄があるので、もし、何かの僅かな磁石の力が存在していたら、その中で鉄が流れると電流が発生します。この電流が新たに磁石の力を生成し、小さかった地磁気を増幅させます。地球の内部では、このような発電作用がはたらいていると考えられ、ダイナモ作用と呼ばれています。また、太陽にも、ガスの運動によって磁石の力を生成・増幅するダイナモ作用がはたらいています。

 では、他の惑星にもダイナモ作用がはたらいて、星の磁石を作っているのでしょうか? 

 ガスが多い惑星の木星、土星、天王星、海王星では磁石の力が観測されていますが、岩石が多く固い惑星では、磁石の力が無いものもあります。たとえば火星には、地磁気のような惑星全体の磁石はありませんが、磁石の正と負が縞模様のように残っている場所が見つかりました。このような縞模様は、地球の海底からも見つかっています。地球の場合は、地磁気が不規則に逆転するので、海底の岩石が作られた時代の地磁気の向きが岩石に記録され、縞模様は地磁気の逆転の歴史を表しているのです。もしかすると、昔は火星全体の磁石の力が存在していて、時々、磁石の向きが逆転していたのかもしれません。他にも、ダイナモ作用の証拠かもしれない観測結果が得られている惑星や衛星があります。

 どの天体でダイナモ作用がはたらいている(または、かつてはたらいていた)のか、そもそも何故、星の磁石が反転するのか、私も含めて現在も研究が進行中です。

(中道 晶香:京都産業大学 神山天文台) 

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【4】続・ホシノキヲク

…いつから星を好きになったのだろう?
夜空の星をみて、初めて感動したのはいつのこと?宇宙を感じてわくわくする気持ち、忘れていませんか?
黄華堂メンバーのもつ、星の記憶をリレーしていきます。あなたの中に眠る星の記憶を呼び覚ましてみませんか?

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 中学生の頃の僕は、教科書や本を読むか、寝るか、窓の外を眺めて一日を過ごしていました。天文に興味を抱いたきっかけは、理科の教科書を見ていて気付いた、あるひとつの疑問でした。

 理科の教科書の表紙の裏には、様々な測定値が表になっています。そのうちのひとつ、地球の自転周期が、ぼくの心の奥にじっと燃え続ける火を付けることになります。

 地球の自転周期は、表によれば、約23時間56分でした。僕の知っている一日の長さ24時間と4分だけ異なります。なんとはなしに、ぼくはその4分を一年分累積させてみたのです。すると、その値はほぼ24時間になります。その瞬間、僕は愕然としました。なぜなら、地球の自転周期は上述の通り23時間56分程度なので、この累積された24時間の間にもう一度自転できることになるからです。言い換えれば、365日の間に、366回自転できることになるからです。率直に考えれば、これは365日の間に366回夜明けと日没があることを意味しています。しかしながら、それは僕の経験とは相入れません。日の出も日の入りも一日一回ずつです。何か、大きなものを見逃しているはずです。これが、僕が抱いた天文学に関係する初めての疑問でした。

 ここで答えを挙げるようなことはしません。もしわからなければ、是非、考えてみてください。

 この疑問に対して、僕は数日を掛けて答えを見つけます。そして、その瞬間に得た知的歓びを、僕は言葉で表現することができません。たったひとつの値が、宇宙が如何に大きな法則の上に成り立っているか、ということを示しているように僕には思われ、大きな感動とともに宇宙と、またそれを表現する物理に憧れを抱きました。

 そのときから宇宙に対する思いは形を変え色を変えながら、しかし根本にある憧れが霞むことはなく、今の僕があります。これからも宇宙の不思議に少しでも触れながら、生きてゆきたいと思っています。

(斉藤:京都大学) 

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【4】黄華堂宇宙検定

 このコーナーでは、毎月3問ずつ宇宙に関する問題を出していきます。
新しい知識を得るため、知識の再確認をするため、今日のお話のネタにするため・・・お好きなようにご活用ください。答えは編集後記の末尾にあります。

さあ、挑戦してみてください!!
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(1)現在、国際宇宙ステーションにいる日本人宇宙飛行士は誰でしょう?

  (あ)野口聡一 宇宙飛行士
  (い)古川聡 宇宙飛行士
  (う)若田光一 宇宙飛行士


(2)国際宇宙ステーションと地球の間では、滞在する宇宙飛行士の食料や実験設備・宇宙実験の結果など、 
    物資の輸送もとても大切です。現在、物資輸送を期待されている宇宙船はどれでしょう?

  (あ)スペースシャトル
  (い)ソユーズ
  (う)こうのとり


(3)国際宇宙ステーションで使われているカメラのほとんどはどこの国が作ったものでしょう?

  (あ)日本
  (い)ドイツ
  (う)スイス

(石井:神戸市立青少年科学館) 

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【5】黄華堂の活動予定

● 9月 3日 星のソムリエ講座@新風館

● 9月11日 名月観賞の夕べ@京都府立植物園

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【編集後記】

  少し遅くなりましたがメルマガ8月号をお届けします。まだまだ残暑の厳しい日が続いています。夏バテ・熱中症には気をつけて下さいね。

(森谷:蝉の最後の合唱をききながら)

(黄華堂検定の答え)
(1)い
  古川宇宙飛行士が6月より国際宇宙ステーションに長期滞在中です。古川宇宙飛行士は前職が医師である ため、医療実験への期待も高くなっています。国際宇宙ステーションは肉眼で見ることができます。以下のサイトから見やすい日時を確認して、探してみましょう。
http://kibo.tksc.jaxa.jp/

(2)う
 アメリカの宇宙船スペースシャトルは、7名の宇宙飛行士と物資を運ぶことができる再利用可能な宇宙船でしたが、30年の運用の間には事故もあり、2011年7月のアトランティス号の飛行を最後に運用を終了することになりました。ロシアの宇宙船ソユーズは宇宙飛行士を3人運ぶことができますが、大きな実験設備などの物資は運べません。
 日本の宇宙船「こうのとり」は宇宙ステーション補給機として非常に高い精度での運用が開始されました。これからも物資輸送に期待が高まります。
 また、欧州宇宙機関(ESA)もATVと呼ばれる物資補給機を開発し、これまでに2回打ち上げています。

(3)あ
 国際宇宙ステーションで使われているカメラやビデオは、ほとんどすべて日本製です。いろいろな国のクルーが使っています。嬉しいですね。

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