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黄華堂通信  No. 049 ◆◇◆  2011年 12月号  ◇◆◇

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黄華堂のつぶやき!@oukadoで天文現象やイベント情報についてつぶやいています!

【もくじ】

【1】来月の星空
【2】宇宙開発裏話
【3】続・ホシノキヲク
【4】黄華堂宇宙検定
【5】黄華堂の活動予定

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【1】来月の星空

 一足早く来月の星空をご紹介します。
 12月の星空についてはこちらを!
 http://www.oukado.org/hosizora1112.htm

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*2012年1月の星空

 夜空を見上げると、誰もがどこかで見たことのある星座が輝いています。2つの一等星以上の明るさの星と、その中間に並んだ三ツ星を持つという特徴がある星座、オリオン座です。星座の名前は知らない、夜空を見てもどれが星座が分からないという人でもオリオン座だけは自信を持って言える人は多いでしょう。

 オリオン座の三ツ星の南、小三ツ星が見られるところにはオリオン大星雲(M42とも呼ばれます)という散光星雲があります。この領域は新たに恒星[注:1]が生まれている領域で、星の誕生について研究している天文学者が注目しています。またオリオン大星雲は大きく、望遠鏡で撮影するのに適しているため、天文写真家にも人気があります。

 しかし現在、最も注目されているのは、オリオンの肩に位置し、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンとともに冬の大三角を構成するベテルギウスです。ベテルギウスは太陽の20倍の質量を持つ恒星なのですが、最近の観測で今にも爆発しそうだ[注:2]という兆候が見られました。星の最期を迎え、超新星爆発を起こしそうだ、というのです。
 もし爆発すると、その明るさは満月に匹敵するとされ、昼夜問わずおよそ100日ほど輝き続けると予想されています。またベテルギウスのように重い星は、超新星爆発の後、ブラックホールを形成すると考えられています。
 馴染んできたオリオン座の形が壊れてしまうのは残念ですが、世紀の天文ショーを是非とも見てみたいものですね。

[注:1]
 恒星とは、太陽のように、核融合反応を起こし自ら光る天体を指します。

[注:2]
 正確な予測はできてはいませんが、いつ爆発してもおかしくないと考えられています。ベテルギウスは640光年(光の速さで640年かかる距離)離れたところにあり、現在観測している光は640年前のものなので、実は既に爆発しているのかもしれません。

*天文現象いろいろ
■ 1日 元日
          (初日の出:札幌 07時06分、東京 06時50分、大阪 07時05分、福岡 07時23分)
      上弦
■ 3日 月の距離が最遠(距離 40万4572 km、視直径 29.5')
■ 4日 しぶんぎ座流星群が極大(出現期間 1月1日〜1月7日)
■ 6日 小寒(太陽黄経 285゜)
■ 9日 満月
■16日 下弦
■18日 冬の土用(太陽黄経 297゜)
       月の距離が最近(距離 36万9881 km、視直径 32.3')
■21日 大寒(太陽黄経 300゜)
■23日 新月
■31日 月の距離が最遠(40万4318 km、視直径 29.5')
      上弦

AstroArts「天文現象カレンダー」
http://www.astroarts.co.jp/phenomena/2012/ph201201-j.shtml

(廣井:京都大学)

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【2】宇宙開発裏話 vol.5

「人工衛星のお洋服」

 寒い日が続きますね〜。私はヒートテックの欠かせない毎日を過ごしています。今回は人工衛星の洋服の話をしましょう。

 熱が伝わる方法には、ホッカイロのように直接触って伝わる「伝導」と、お味噌汁のように密度差によって浮力が生じる「対流」、よく晴れた朝に起こる放射冷却や日向ぼっこのように、光を放射して熱が伝わる「輻射(ふくしゃ)」の3つがあります。宇宙には空気が存在しないので、宇宙空間を漂う人工衛星には最後の「輻射」でしか熱が伝わってきません。

 人工衛星は裸のままだと、太陽光に当たり続けると熱くなり、逆に光が当たらないと冷え過ぎてしまって、内部の大事な機器が壊れてしまいます。そのため衛星を、太陽光等を反射し、内部の熱を閉じ込める膜で覆うのです。

 この膜は「サーマルブランケット」と呼ばれ、アポロの月着陸船の断熱材として初めて開発されました。人工衛星は金色や白色、黒色など様々な色をしていますが、これらの色は断熱材の色なのです。

 私たちが人工衛星と聞いてよくイメージする金色の断熱材は、アルミを蒸着したプラスチックフィルムと、さらにダクロンという網状の繊維を何層にも重ね合わせて作られており、衛星にはマジックテープで張り付けられています。金色の断熱材は太陽光や地球からの反射光を強く反射できるのですが、電気を通しやすい導電性をあわせ持つので、地球低軌道に存在する原子状酸素で劣化してしまう性質があります。従って、大電力を使う通信衛星や惑星のプラズマを探る探査機には、帯電対策として炭素を練りこんで導電性をなくした黒い断熱材が使われています。また、宇宙ステーションなど地球大気の影響を受ける宇宙船には、プラスチックの代わりにベータクロスというガラス繊維にアルミを蒸着した、白い断熱材が使われています。宇宙ステーションに物資を運ぶ日本の「こうのとり」は金色をしていますが、これは短期間で使い捨てるため、劣化を心配する必要がないからです。

 一方で人工衛星には、内部にたくさんの電力を消費して、大量の熱を発生させてしまう機器を搭載している場合があります。熱を閉じ込めたままでは、お風呂でのぼせるように人工衛星が熱くなってしまいます。対策として、サーマルブランケットと同じように光を反射できるけど、赤外線を放出して内部の熱も逃がすこともできる、OSRというラジエターの一種が取り付けられています。人工衛星のところどころにある銀色の部分がOSRで、熱環境の厳しい水星探査機には、ほぼ全面に使われています。

(藤井:大阪教育大学)

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【3】続・ホシノキヲク

…いつから星を好きになったのだろう?
夜空の星をみて、初めて感動したのはいつのこと?
宇宙を感じてわくわくする気持ち、忘れていませんか?
黄華堂メンバーのもつ、星の記憶をリレーしていきます。
あなたの中に眠る星の記憶を呼び覚ましてみませんか?

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 私は大学生の実習の時から銀河の観測的研究について修行を積んできましたが、そんな私が天の川を見たとはっきり覚えている一番若い時は、なんと高校2年生の夏。

 私は大阪市内で育ちました。自宅上空の夜空に天の川はありませんでしたが、月や惑星とは仲良しでした。都会の夜空は、私にとって十分刺激に満ちたものでした。宇宙の本、近くの科学館(大阪市内の電気科学館、生駒山の宇宙科館)、テレビの科学番組(カール・セーガンの『コスモス』)は、私を宇宙へ連れて行ってくれました。おもちゃ屋で買ったレンズ、家の中にあったレンズや鏡を組み合わせ、小さな望遠鏡をいくつも作り、ベランダから夜空を眺めていました。視界は限られていて、小学生のころは南天をほとんど見たことがありませんでした。ですから、リゲルそしてアンタレスは、私にとっては「地平線下の憧れの星」でした。

 さて、高校生の修学旅行で南九州に出かけることになりました。私は期待をもって準備を始めました。天の川を撮影する方法を、私はすでに知っていました。中古の一眼レフに高感度モノクロフィルムのトライXパンを入れ、修学旅行に持っていきました。ある晩、みんなが寝るころ、私はカメラを持って生徒のタコ部屋からするすると抜け出ました。友人が起きてきて言いました。
「どうしたんだ?」
「いや、どうしても見たいもんがあってな。」
「なんか知らんが、気をつけて行けよ。」

 指宿だったかな、私はホテルから出て、レリーズを付けたカメラを地面に置き、手でしっかり持ち、南に向けて20秒露出をしました。遂にやった!私は天の川をはっきり見たぞ!「地平線下」のアンタレスのみならず、さそりのSの字の一番下まで見たぞ!その下も見たぞ!全部、このカメラでとらえたぞ!

 帰宅して、近くのお店に増感現像を頼みました。何日か、待ち遠しくてたまりませんでした。写真が手元に来て、再び感激。天の川の中にたくさんのしみがある!メシエ番号の、あれ、これ、でしょうが、当時は詳しいことがわかりませんでした。しかし、その写真は何度見ても飽きず、毎日のように眺めていました。ネガもルーペで見尽くしました。私は、天の川の大河の河原に毎晩行くことができました。

 下宿するようになっても、その写真は持って行ったのですが、頻繁に引っ越しする間に、その写真を紛失してしまいました。あぁ、なんてことだ!私を天の川へ連れて行ってくれたあの写真にもう会えないなんて!

(富田:和歌山大学) 

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【4】黄華堂宇宙検定

 このコーナーでは、毎月3問ずつ宇宙に関する問題を出していきます。
新しい知識を得るため、知識の再確認をするため、今日のお話のネタにするため・・・お好きなようにご活用ください。答えは編集後記の末尾にあります。

さあ、挑戦してみてください!!

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○今年12月10日の夜には、各地で皆既月食が見られました。
 寒い中、空を見上げた人も多いのではないでしょうか。
 第41回は、皆既月食に関する問題です。
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(1)皆既月食時には、月は何色に見えるでしょう。
 (あ)真っ暗で見えない。
 (い)青っぽく見える。
 (う)赤っぽく見える。

(2)[記述問題]
 皆既月食時に、月から太陽を眺めるとどのように見えるでしょう。

(3)[記述問題]
 皆既月食は、月全体が地球の影にすっぽり入る現象です。それでは、地球よりも太陽から遠い所を回っている火星などの外惑星が地球の影に入る「皆既惑星食」もあるのでしょうか?理由も含めて考えてください。

(小澤) 

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【5】黄華堂の活動予定

●2月29日 宇宙と遊ぼう 【京大病院】

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【編集後記】

 皆既月食をご覧になったでしょうか?とても奇麗でしたね。今年最後のメルマガをお届けします。来年も楽しい記事をお届けできればと思っていますので、是非とも来年もご愛読宜しくお願い致します。

(森谷:年賀状のデザインに悩み中)

(黄華堂検定の答え)
(1)う
 皆既月食時であっても、太陽光のうち赤っぽい光が地球大気によって選択的に屈折・散乱されて月に届くため、月は真っ暗にはならず赤っぽく見えます。

(2)太陽は見えない。
 月食は、太陽─地球─月が一直線に並ぶことにより、地球の影に入った月が欠けて見える現象です。皆既月食時は、月がすっぽりと地球の影に隠れる状態なので、月から太陽を見ることはできません。
 なお、皆既月食時のものではありませんが、月の周りを回る衛星「かぐや」が2009年に月食時の地球の撮影に成功しています。http://www.jaxa.jp/press/2009/02/20090218_kaguya_j.html

(3)地球の濃い影が外惑星に届かないため、皆既惑星食はない。地球による影の濃い部分(本影とよばれま 
す)は、地球から離れるほど狭くなります。地球の本影は、地球から太陽と反対側におよそ140万kmほどのび
ています。地球から月までの距離は約38万km(地球の影が届く範囲)のため皆既月食が起こりますが、火星は地球に最接近した時でも約8000万kmの距離があるため、地球の影が届かず「皆既火星食」は起こりません。木星などのほかの外惑星は火星よりもさらに遠いので、皆既惑星食は起きません。

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