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黄華堂通信  No. 051 ◆◇◆  2012年 2月号  ◇◆◇

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【もくじ】

【1】来月の星空
【2】宇宙開発裏話
【3】あなたの知らない宇宙
【4】続・ホシノキヲク
【5】黄華堂宇宙検定
【6】黄華堂の活動予定

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【1】来月の星空

 【1】来月の星空

 一足早く来月の星空をご紹介します。
 2月の星空についてはこちらを!
 http://www.oukado.org/hosizora1202.htm

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2012年3月の星空

 まだまだ冬の星座が目立つ夜空ですが、それでも東の空に目を向けると春の訪れを感じることができます。

 東を向き、天頂付近にあるふたご座から視線を徐々に下げていくと、「?」を左右反対にひっくり返したような星の並びが見られます。これらは春の星座の代表格である「しし座」に属する星星で構成されており、「ししの大鎌」と呼ばれています。「ししの大鎌」の根元に輝く星はレグルスと呼ばれる一等星で、黄道上のにある唯一の一等星であることから、航海位置の計測の基準ともされています。

 また3月には、しし座の位置に赤く光る火星も見られます。白く輝くレグルスとの共演を是非観察してみましょう。

*天文現象いろいろ

■ 1日 上弦
■ 5日 啓蟄(太陽黄経 345゚)
■ 6日 火星の最接近
     (距離: 1億78万495 km、光度: -1.2等、視直径: 13.9")
■ 8日 満月
■10日 月の距離が最近(距離: 36万2401 km、視直径: 32.9')
■14日 木星と金星が最接近
■15日 下弦
■17日 彼岸の入り
■20日 春分(太陽黄経 0゚、東京日出: 05時45分、日入: 17時53分)
■22日 新月
■26日 細い月と金星、木星が並ぶ
       月の距離が最遠(距離: 40万5769 km、視直径 29.5')
■31日 上弦

参考サイト
AstroArts「天文現象カレンダー」
http://www.astroarts.co.jp/phenomena/2012/ph201203-j.shtml

(廣井:京都大学)

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【2】宇宙開発裏話 vol.6

「バレンタインと小惑星」

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 バレンタインと小惑星探査って実は縁が深いんです。今から12年前のバレンタインデーに、探査機「ニア・シューメーカー」がその名もずばり「エロス」という小惑星にランデブーしました。また、昨年の今頃、以前ディープインパクト探査機が大穴を開けた彗星にスターダスト探査機が再訪しましたが、最接近日は同じくバレンタインデーでした。今回は「はやぶさ」の大先輩、ニア探査機についてチョコっと振り返ってみましょう。 

 あまり知られていませんが、ニア計画の発端は日本にありました。1990年初頭の宇宙科学研究所では、長年にわたる理学者の悲願に応えようと大型固体ロケットM-Vが開発中でした。その素晴らしい能力を活かし、研究者たちは21世紀初頭の惑星探査計画を練ったのです。

 月面ペネトレータ、月面車、火星周回機、金星バルーン、彗星サンプルリターン、そして小惑星ランデブー。待っていましたといわんばかりの様々なアイデアが出されました。これらの計画は宇宙理学委員会や工学委員会で厳しい選定審査がなされ、最終的に国の予算が下りました。選ばれたのは月面ペネトレータで、小惑星への旅は再考を求められたのです(後にはやぶさに発展)。

 捨てられてしまったランデブー計画。そこに目をつけたのは、アメリカの惑星探査を担うJPL(= NASA/ジェット推進研究所)でした。当時失敗が続き閉塞しきっていたJPLは、小さいとはいえど1年に1度科学衛星をこつこつと打上げてきた日本に注目。ディスカバリー計画を開始し、その2機目に日本の計画に沿った小惑星探査機ニアが選ばれました。

 1996年にDeltaIIロケットで打上げられたニアは、旅路の途中に別の小惑星を通過した後、1999年にエロスへ到着する予定でした。しかし、軌道修正時にエンジンに不具合が発生、探査機は一時的にセーフモード(非常時の待機状態)に陥ったのです。はやぶさと同じように、軌道の魔術師たちは残存燃料で到達できる機会を見つけ、2000年2月14日、周回軌道に投入されました。

 不規則な形をしたエロスの表面には、クレーター、うね、馬の鞍のような地形が見られました。詳細な小惑星の撮影は史上初めてだったので、そのころ普及し始めたインターネットとあいまって、不可思議な地形にみな驚き、その美しさに魅了されました。そのあたりの興奮は、野尻抱介氏の短編小説、『轍の先にあるもの』にあるので、ぜひ読んでみて下さい。

 1年後、ニアは計画になかった小惑星への軟着陸を敢行。残り少ない燃料を使い、史上初の着陸に見事成功しました。すぐあとにはやぶさの打上が控えていたので、世界初であり続けたい、アメリカの意地だったのかもしれません。

(藤井:大阪教育大学)

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【3】あなたの知らない宇宙

 〜 ベテルギウスはまだまだ大丈夫!? 〜

 冬の夜空を飾る代表的な星座『オリオン座』。狩人オリオンの肩には、ひときわ明るく輝く赤い星『ベテルギウス』があります。太陽の20倍の質量を持ち、大きさは太陽のおよそ1000倍のこの赤色超巨星が、近年、「明日にでも超新星爆発するかもしれない!?」と、注目を集めています[注:1]。「明日にでも」と言っても、そこは天文学的な時間スケール。爆発するのは「明日から100万年以内のいつか」と、日常生活の時間スケールからしたらものすごく大雑把です。では、いつ爆発するのかをもっと細かく推定する手段はないのでしょうか。今回は、昨年2011年9月にドイツの天文学者たちによって発表された、そうした観点の最新の研究結果を紹介します[注:2]。

 そもそも、ベテルギウスがいつ爆発するかよく分かっていないのは、意外かもしれませんが、現在のベテルギウスの年齢がよく分からないからです[注:3]。赤色超巨星という晩年の星であることは分かっていますが、正確な年齢が分かってないために、ベテルギウスが超新星爆発で一生を終えるのが「明日から100万年以内のいつか」が正確に分かりませんでした。

 ドイツの天文学者たちは、ベテルギウス周辺のガスの観測結果を使って、この問題を解決しました。ベテルギウスのように非常に明るい星は、その強い光で周囲のガスだけでなく、自分自身の大気のガスをも吹き飛ばします。『恒星風』と呼ばれるこの現象は、太陽の約10万倍の明るさを持つベテルギウスでは特に強く、毎年約地球1個分(100万年で太陽3個分)もの質量のガスが失われていきます。その放出された『元ベテルギウスのガス』は、周りにもともとあったガスと衝突して、『バウショック』と呼ばれる弓状の構造を作ります[注:4]。このバウショックの観測結果を、さまざまな数値シミュレーションの結果と比較することで、彼らはベテルギウスの年齢を推定しました。その結果から、彼らはベテルギウスが赤色超巨星になったのは現在から約4万年以内と結論付けています。天文学的時間スケールで考えれば、つい最近のことですね。

 超新星爆発を起こすには、赤色超巨星になってから約100万年の時間がかかると考えられています。この研究結果が正しければ、ベテルギウスが超新星爆発するには、まだ100万年近い時間がかか
るはずです[注:5]。ベテルギウスが爆発して消えてしまえば、誰もがどこかで見たことのあるオリオン座が形変えてしまいます。どうやら私たちが生きている間はその心配はしなくてもよさそうですが、肉眼で見える超新星爆発というド派手な天文ショーを望んでいた方にとっては残念な結果かもしれませんね。

[注:1]
 黄華堂通信2011年12月号【1】来月の星空 参照。より詳しく知りたい方は、はてなブックマーク「ベテルギウスの最期:超新星の兆候とその威力」を参照して下さい。
http://d.hatena.ne.jp/active_galactic/20100213/1266065518

[注:2]
 元論文はこちらにあります。
http://xxx.yukawa.kyoto-u.ac.jp/abs/1109.1555

[注:3]
 星の年齢を調べるには、その星の見かけの明るさと距離から求められる光度が必要ですが、ベテルギウスまでの距離はよく分かっていません。ベテルギウスまでの距離は約640光年とされていますが、実は最新の観測結果でも約150光年もの誤差があります。つまり、「約640光年とは言ってるけど、490光年かもしれないし790光年かもしれない」、ということしか分かっていないのです。その為年齢にも大きな誤差が生じます。

[注:4]
 ウィキペディアの「ボウショック」のページ参照
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%A6%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%82%AF

[注:5]
 「超新星爆発間近!?」と思われた観測事実の一つに、「2009年時点のベテルギウスは15年前の観測時に比べて大きさが15%も小さくなった」というのがあるのですが、これもベテルギウスが
最近赤色超巨星になったという今回の結果とは矛盾しません。このような不安定な状態は、赤色超巨星になて間もない頃にも起こりうるからです。

(小林:国立天文台) 

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【4】続・ホシノキヲク

…いつから星を好きになったのだろう?
夜空の星をみて、初めて感動したのはいつのこと?
宇宙を感じてわくわくする気持ち、忘れていませんか?
黄華堂メンバーのもつ、星の記憶をリレーしていきます。
あなたの中に眠る星の記憶を呼び覚ましてみませんか?

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 「そこに山があるから...」

 なぜエベレストを目指すのか?と問いかけられた登山家ジョージ・マロリーはそう答えたという逸話は有名ですね。

 その真意は分かりませんが、おそらくそれは答えのないような問いかけへの答えだったのではないかと感じています。なぜなら私の星や宇宙への興味にも同じことが言えるからです…


 星や宇宙を好きになったのはいつからか?


 実はこれといったきっかけはなく、本当にいつの間にか好きになっていたのです。幼稚園のときにはすでに惑星の絵を描いていたようです。小中学生の頃は、何よりも星図が一番の教科書でした。双眼鏡や小さなおもちゃの望遠鏡をカメラの三脚に乗せて、いろいろな星を観察しました。西はりま天文台よりもさらに山奥にある田舎の町で、毎日のように星空を眺めては星図と照らし合わせていたものです。


 星や宇宙の魅力を表すことのできる言葉はたくさんあります…しかしそれでもどうしても言葉にはできない部分があります。


 空を見上げて、ただ、「きれい…」


そう思う気持ちに理由はいるのでしょうか?

 きっと星たちは私たちの心の奥深くに何かを訴えかけてくれていて、私たちもそれを自然と受け入れているという気がするのです。

 そんな星からのメッセージを受け取った私は、その意味もはっきりとは知ることなく、ただただその夢を追いかけてここまできました。

 未だに答えは見えてきそうにありませんが、そもそも答えは求めていません(笑)ここまで生きてきた中でいつの間にか星を好きになり、どういうわけか今でもその夢を追い続けているのです。

 理由もなく好きになれる…これも星の魅力ではないでしょうか。

 なぜ星が好きなのか?

「星にはそれだけの魅力があるから…」

(有本:塔南高校/黄華堂代表)

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【5】黄華堂宇宙検定

 このコーナーでは、毎月3問ずつ宇宙に関する問題を出していきます。
新しい知識を得るため、知識の再確認をするため、今日のお話のネタにするため・・・お好きなようにご活用ください。答えは編集後記の末尾にあります。

さあ、挑戦してみてください!!

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○大変寒い季節となりました。
 この寒空の中、今が一番見ごろの星があります。
 第43回は、一等星「カノープス」に関する問題です。
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(1)りゅうこつ座のカノープスには和名(日本での呼び名)として正しいものを選んでください。(複数選択可)

  (あ)南極老人星
  (い)紀州のミカンボシ
  (う)ネノホシ


(2)※※記述問題※※
カノープスが輝く「りゅうこつ座」は、もともとは別の大きな星座・アルゴ座の一部分でした。では、アルゴ座が輝いていた場所に現在ある星座を全て答えてください。


(3)アルゴ座は「アルゴ船」という船の星座です。ギリシャ神話では、ふたご座になっているカストルやポルックスなど、多くの英雄がアルゴ船に乗って、ある宝物を求めて冒険をします。この宝物も88星座と深い関わりがあるのですが、どの星座でしょうか?

  (あ)ほうおう座
  (い)かんむり座
  (う)おひつじ座

(石井:神戸市立青少年科学館) 

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【6】黄華堂の活動予定

● 2月29日(水) うちゅうと遊ぼう 【京大病院】

● 3月 3日(土) 観望会 【大阪ステーションシティ】

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【編集後記】

 少し遅くなりましたがメルマガ2月号をお届けします。昼の時間が少し長くなり、春の訪れが近付いているのが感じられますがまだまだ寒いですね。インフルエンザも流行っています。夜空を見るときには防寒対策をしっかりして下さいね。
                                                         (森谷:今季はまだ風邪知らず)

(黄華堂検定の答え)
(1)あ、い
 カノープスは南の空地平線近くに輝き、日本や中国などの緯度では、なかなか見つけることができません。そのため、この星が見えたら長生きができる、という伝説がありました。この伝説と一緒に中国から伝わった名前が「南極老人星」です。
 また、兵庫県の一部からはカノープスは「キシュウノミカンボシ」・「アワジボシ」などと呼ばれることもあります。
「ネノホシ」というのは、北極星のことです。方角を十二支であらわすと北の方角は「子」となることから、「子(ネ)の方角に輝く星」ということかもしれません。

(2)とも座・りゅうこつ座・らしんばん座・ほ座アルゴ座は大変大きな星座でした。そのため、4つに分けられたと言われています。

(3)う
 アルゴ座のギリシャ神話には、こと座の神話に出てくるオルフェウスや、ヘルクレス座のヘラクレスなど、多くの星座の英雄たちが登場します。その英雄たちは、黄金の羊の毛皮を求めて冒険をしています。詳しくは、アルゴ座のギリシャ神話を読んでみてください。

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