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黄華堂通信  No. 053 ◆◇◆  2012年 04月号  ◇◆◇

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黄華堂のつぶやき!@oukadoで天文現象やイベント情報についてつぶやいています!

【もくじ】

【1】来月の星空
【2】宇宙開発裏話
【3】音楽で聴く宇宙
【4】天文イベント2012
【5】黄華堂宇宙検定

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【1】来月の星空

 一足早く来月の星空をご紹介します。
 04月の星空についてはこちらを!
 http://www.oukado.org/hosizora1204.htm

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2012 年 5 月の星空

 春になり、だんだんと日没が遅くなっているのが感じられる季節になってきました。そんな中、夜空では 2 種類の恒星(※1)と惑星の共演を見ることができます。

 一つ目は、南西の空にある「しし」座のレグルスと火星です。レグルスは白色で、火星は赤色で輝いているように見えるので、隣り合った 2 つの天体は、まるで「ふたご」座のカストルとポルックスのように見えます。日没直後では、西の空にまだ「ふたご」座を見ることができるので、それらを見比べてみてはいかがでしょうか?

 二つ目は「おとめ」座のスピカと土星です。南東の空に、ひときわ輝いて見えるので容易に発見できると思います。これらの天体は見た目が似ていますが、瞬いている方(※2)がスピカです。その違いも観察してみましょう。また 5 月の頭には、スピカと土星に加え月も接近してきますので、是非豪華三本立てをご覧ください。

 さらに、今月 21 日の朝 7 時頃には話題の金環日食が日本の各地で見られます。この金環日食について天文イベント2012にて取り上げています。そちらも併せてお読みいただければと思います。

※1:恒星
星座を構成している、太陽のように自ら光り輝く星のこと(地球や火星は惑星といい、太陽の光を反射して輝いている)

※2:星のまたたき
恒星は非常に遠くにあるので点にしか見えません(惑星は小さいながらも面で見える)。そのため、大気ゆらぎの影響を受けやすく、瞬いて見えます。


*天文現象いろいろ 
■ 1日 八十八夜
■ 5日 立夏(太陽黄経 45゚)
■ 6日 みずがめ座η流星群が極大(出現期間 4月25日〜5月10日)
      月の距離が最近(距離 35万6955 km、視直径 33.6')本年最近
      満月
■10日 土星とスピカが接近
■13日 下弦
■20日 月の距離が最遠(距離 40万6442 km、視直径 29.3')本年最遠
■21日 小満(太陽黄経 60゚)
      金環日食(九州南部、近畿、東海、関東などで金環日食、全国で大きく欠ける部分日食)
      新月
■29日 上弦
参考サイト
AstroArts「天文現象カレンダー」
http://www.astroarts.co.jp/phenomena/2012/ph201205-j.shtml

(廣井:京都大学)

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【2】宇宙開発裏話 vol.7

「打ち上げ迫る!ドラゴン宇宙船」
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 春は新しい門出の季節。実は来月1日、宇宙にも新米宇宙船「ドラゴン」が登場します。文字通り新しいアメリカの宇宙船でもありますが、なんと一民間企業が作った宇宙船なのです。国際宇宙ステーションに向かい、無人で物資輸送を行います。国に頼らない、宇宙開発新時代の幕開けです。

 今現在、人を運べる宇宙船は、ロシアのソユーズと中国の神舟(しんしゅう)に限られています。昨年、老朽化や安全性、運用費などの問題によりスペースシャトルが引退したためです。NASAは将来に向けて、火星や小惑星まで飛行できる有人宇宙船オリオンを開発する一方で、これまでシャトルが担ってきた地球低軌道への輸送を民間に委託し、商業輸送を実現させるためのコンペを開いてきました。コンペは貨物部門と有人部門に分かれ、貨物部門で見事内定を勝ち取ったのは、スペースX社による前述のドラゴンと、OSC社のシグナスでした。有人部門は前社2社を含む合計7社の宇宙船がエントリーし、各社が選考に向け凌ぎを削っている段階です。

 今回いち早く打ち上げられるスペースX社のドラゴンは、富士山のような円錐形をしたカプセル型宇宙船です。自律的にドッキングをせず、日本の「こうのとり」のように宇宙ステーションの近くまで自動ランデブーした後、宇宙飛行士が操作するロボットアームでゆっくりと捕獲されます。物資を補給後、地球に再突入して帰還し、将来的には人を載せることも可能です。

 ドラゴンを運ぶのは、同社が開発した中型液体ロケット、ファルコン9です。このロケットの1段目には、灯油を燃料とする小さなロケットエンジンが9基も束ねられています。高価で複雑なエンジンを使わず、打ち上げ作業の徹底した簡略化を進めたことで、ロケット開発史上類を見ない徹底的な低コスト化を達成したのです。来年には、さらに大型化を図ったファルコンヘビーロケットの打ち上げが予定されています。アポロ計画で使われたサターンVロケットの半分もの能力を持ち、大型の惑星探査や有人火星探査の実現に一役買うことでしょう。

 スペースX社はもともと電子マネーで有名なPayPalの創設者、イーロン・マスク氏によって立ち上げられました。イーロン氏は、電気自動車テスラモーターズ社のCEOや住宅用太陽電池メーカーの会長を務めており、島にも太陽光発電所を寄贈しています。宇宙開発から地球環境問題まで、“いーろん”なことに取り組む起業家として知られています。

(藤井:大阪教育大学)

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【3】音楽で聴く宇宙

 今月号から「音楽で聴く宇宙」と題して宇宙に関係したクラシック音楽を隔月でご紹介していきます。広大な宇宙は私達の想像力をかき立ててくれます。それは音楽も同じ。音楽を聴いて宇宙に想いを馳せてみませんか?

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*** 月シリーズ第一弾 ***
ベートーヴェン ピアノソナタ第14番 『月光』

 まずは「月」シリーズと題して、第一弾にベートーヴェンの『月光』をお送りしたいと思います。

 『悲愴』・『熱情』と並び、ベートーヴェンの3大ピアノソナタと言われています。実はこの『月光』という標題はベートーヴェン自身がつけたものではありません。詩人レルシュタープがこの曲の第1楽章を「湖上の小船が月光の起こした波に揺らいでいるようだ」と評したことから『月光』と呼ばれるようになったそうです。この言葉から静かな月の夜の物淋しさや、湖面に反射した光のうつろう様子が感じられますね。

 ちなみに数多くの恋愛遍歴をもつことで有名なベートーヴェンですが、この曲も当時の弟子で恋人だった伯爵令嬢ジュリエッタに捧げるために作曲しました。残念ながら、ベートーヴェンが友人への手紙の中で予見していた通り、身分の違いによってこの恋は成就しませんでした。

 さて、みなさんは月夜にどのようなことを感じるのでしょうか。この『月光』の1楽章のような「静けさ」でしょうか。実らぬと知りながら恋をするベートーヴェンのような「切なさ」なのでしょうか。

(田崎:京都大学) 

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【4】天文イベント2012

 2012年度は大きな天文イベントが目白押し。
せっかくだから見るだけでなく、イベントを楽しみたい。
そんな方のために、お勧めの方法をご紹介します。

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 2012年5月21日は、日本の太平洋側の広い地域で金環日食が見られます。地球から見ると月が太陽を隠し、太陽が環になって見えるものです。しかも今回は東京や大阪、名古屋など、広いエリアの大都市で見ることができ、ほとんどの地域で食分が0.9を超えます。これほど広範囲で見られるのは西暦1080年以来932年ぶりの出来事です!楽しみですね!

 さて、観測をするときは、日食用のグラスを使ったり、望遠鏡を使って太陽投影板に投影したり、デジカメで撮影したり楽しみ方はたくさんありますが、簡単に誰でも楽しめる現象を紹介します。

 それは、ピンホールの現象を使ったものです。厚紙など、光を通さない薄いシートに小さな穴を開けて、日食中の太陽の光を当てます。すると、穴を通って影の中に映った太陽の光が、欠けた太陽の形になっています。これは、ピンホールカメラの原理です。うちわに穴を開けても、お菓子のクラッカーを使ってもできますし、文字型に穴を開けると面白いですよ。

 日食は美しい現象ですが、観測の仕方によっては危険です。以下は日食の時に注意してほしいことです。

 1.肉眼で直接太陽を見る。…これは数秒でも危険です。
 2.色付下敷きを使う
 3.望遠鏡や双眼鏡を使って直接みる
 4.サングラスやゴーグルを使う
 5.日食グラスを使って望遠鏡や双眼鏡を覗く
 6.これ以外の自己流の見方

中には大丈夫では?と思ってしまうのもあるかもしれませんが、危険ですので守って安全に観測しましょう!

「金環日食」参考サイト
・国立天文台「2012 年 5 月 21 日 金環日食」
http://www.nao.ac.jp/news/notice/2012/20120401-eclipse2012.html
・国立天文台「金環日食 特設ページ」
http://naojcamp.mtk.nao.ac.jp/phenomena/20120521/

(西野:大阪教育大学) 

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【5】黄華堂宇宙検定

 このコーナーでは、毎月3問ずつ宇宙に関する問題を出していきます。新しい知識を得るため、知識の再確認をするため、今日のお話のネタにするため…お好きなようにご活用ください。答えは編集後記の末尾にあります。

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○しし座の方向に火星が輝いていますね。しし座の1等星、青白いレグルスとの色の対比が奇麗です。
 第45回は火星に関する問題です。

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(1)火星が赤く見えるのは何故でしょう?
  (あ)火星の表土が赤いから
  (い)火星の大気が赤いから
  (う)火星の海が赤いから


(2)これまでに火星に着陸したことのある探査機は次の内どれでしょう。
  (あ)バイキング
  (い)マリナー
  (う)ボイジャー


(3)地球では夕焼けが赤く見えます。では、火星での夕焼けは何色でしょうか?
  (あ)赤色
  (い)青色
  (う)赤色の日と青色の日がある

(森谷:広島大学) 

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【編集後記】

 年度が変わり編集長が交代しました。今年度は大きな天文イベントを始めとして、星空を見ることをテーマにメルマガをお送りしていきます。どうぞよろしくお願い致します。

(鈴木:桜を惜しみつつ)

(黄華堂検定の答え)
(1)あ
  火星の表土には酸化鉄(赤さび)が多く含まれている為、赤く見えます。
  火星の大気の主な成分は二酸化炭素・窒素・アルゴンで、どれも無色です。また、海はありません。

(2)あ
  選択肢にあった探査機は全てアメリカ航空宇宙局(NASA)が計画したものです。
  バイキングは1970年代に行われた火星探査計画です。バイキング1号とバイキング2号が火星への打ち上  
 げられ、どちらも着陸しました。
  マリナー計画は1960年から70年代に行われた惑星探査計画で、金星・水星・火星の探査を行いました。こ 
 の内マリナー4、6、7、9号の4機が火星に接近し、表面を撮影しましたが、着陸はしていません。ボイジャーは
 1977年に打ち上げられた木星、土星、天王星、海王星に連続して接近し、表面を撮影した探査機です。

(3)い
  地球で昼間空が青く、夕焼けが赤く見えるのは、大気の粒子が青い色を散乱しやすいからです。昼間は散
 乱された青い光を、夕焼け時には残った赤い光を見ています。
  一方、火星では大気中に砂を多く含み、赤い光を散乱しやすくなっています。その為、昼間には赤い空、夕
 焼け時には青い空が見えます。
  現在火星に着陸しているスピリットが撮影した夕焼けの様子:
 http://www.nasa.gov/multimedia/imagegallery/image_feature_347.html

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