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黄華堂通信  No. 054 ◆◇◆  2012年 05月号  ◇◆◇

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黄華堂のつぶやき!@oukadoで天文現象やイベント情報についてつぶやいています!

【もくじ】(「金星の日面通過」の特集号)

【1】来月の星空
【2】絵本で見る宇宙
【3】音楽で聴く宇宙
【4】あなたの知らない宇宙
【5】天文イベント2012
【6】黄華堂宇宙検定
【7】黄華堂の活動予定

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【1】来月の星空

 一足早く来月の星空をご紹介します。
 05月の星空についてはこちらを!
 http://www.oukado.org/hosizora1205.htm

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2012 年 6 月の星空

 5 月 21 日に本州の広い範囲で見られた金環日食に引き続き、今月も天体直列に関する天文現象が 2 つあります。

 一つ目は 6 月 4 日に見られる部分月食です。日食が太陽−月−地球がこの順番で一直線になったときに見られるのと同じように、月食は太陽−地球−月がこの順番で一直線になったときに見られるイベントです。このことから分かるように、月食が起こるときは必ず満月になっています。ただし逆は違い、満月だからといって必ずしも月食は起こりません。これは地球と月の公転軌道面が一致しておらず、傾いているからです。このイベントは特に道具無しでも観察することができるので、是非気軽に空を見上げて見てみましょう。

 もう一つは 6 月 6 日 の7:10頃から13時47分頃に※1見られる金星の太陽面通過です。これも天体が一直線上に並ぶために起こるイベントで、その順番は太陽−金星−地球の順番となり、日食の金星版と言えます。ただし金星は見かけの大きさが小さいため、太陽のごく一部しか隠すことができません。このイベントは日食や月食に比べてもレアなイベントで、今回を逃してしまうと次は 2117 年 12 月 11 日まで見られません。是非この機会に見て欲しいのですが、太陽を観察するので肉眼やサングラスなどではダメです。正式な太陽観測メガネを用いるか、近くの天文台などで行われている観察イベントに参加してみましょう。

※1 京都の場合の時刻。
見られる時刻は国内の場所によって1〜2分のずれがあります。


*天文現象いろいろ 
■  3 日 月の距離が最近(距離 35 万 8481 km、視直径 33.3')
■  4 日 部分月食(京都、大阪付近から西よりの地方では月出帯食※2)
     満月
■  5 日 芒種(太陽黄経 75゜)
■  6 日 金星の太陽面通過(全経過が見られる)
■ 10 日 入梅(太陽黄経 80゜)
■ 11 日 下弦
■ 16 日 月の距離が最遠(距離 40 万 5784 km、視直径 29.4')
■ 20 日 新月
■ 21 日 夏至(太陽黄経 90゜、京都日出: 4時43分、日入: 19時14分)
■ 27 日 上弦
■ 28 日 月と土星、スピカが並ぶ

※2 月出帯食: 月が欠けたまま昇ってくること

参考サイト
AstroArts「天文現象カレンダー」
http://www.astroarts.co.jp/phenomena/2012/ph201206-j.shtml

(廣井:京都大学)

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【2】絵本で見る宇宙

絵本で見る宇宙 Vol.40

 今年は金環日食や金星の太陽面通過と、太陽が絡む二大天文イベントがあります。そこで、太陽の絵本をご紹介しましょう!

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『太陽のかがく』

監修 渡部潤一、絵と文 えびなみつる、写真 中西昭雄

 太陽は地球にもっとも近い恒星(自ら輝く星)。そんな太陽のことを皆さんはどれくらい知っているでしょうか。大きさは?地球からの距離は?そもそもどうやって輝いている?

 この絵本では、そんな太陽のキホンを、えびなみつるさんのやさしい絵と中西さんのきれいな写真で説明しています。太陽をはじめとする太陽系がどのように生まれたのかも描かれています。

 そして今年話題の日食や金星の太陽面通過などの天文現象、オーロラやグリーンフラッシュ、ダイヤモンド富士などの美しい現象も紹介されています。みんな、太陽が関わる現象ですね。今後、日本で見られる日食のデータもあります。

身近な星・太陽の不思議さ、美しさ、雄大さが詰まった本ですよ!

(塚田:平塚市博物館)

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【3】音楽で聴く宇宙

スーザ作曲 行進曲『金星の太陽面通過』

 先月から始まった「音楽で聴く宇宙」の2回目です。月シリーズは一度お休みして、6/6 に見られる金星の太陽面通過をテーマにした音楽、その名も『金星の太陽面通過』をご紹介します。

 アメリカの作曲家スーザ(1854-1932)は数多くの行進曲を作曲したマーチ(行進曲)王として知られ、中でも『星条旗よ永遠なれ』や『ワシントン・ポスト』が有名です。

 1882年に起こった金星の太陽面通過に興味を持っていたスーザは、物理学者ジョセフ・ヘンリーの銅像の除幕式で使う行進曲作曲の依頼を受け、この『金星の太陽面通過』を作りました。錬金術では金星と銅が関係していること、ヘンリーが研究していた電磁石(コイルに電流を流して作った磁石)は銅が多く使われていることから、「金星」がモチーフになったようです。さらに 'passing of Henry'(ヘンリーの死) と 'passing of Venus' (西に沈む金星) をひっかけて、金星が西にある午後4時に除幕式を行うという徹底ぶりです。

 さて、この曲はどなたでも無料で下のページから聴くことができます。
http://lcweb2.loc.gov/diglib/ihas/loc.natlib.ihas.200002625/default.html

  私は初めてこの行進曲を聴いて、小さな金星がかわいらしく太陽の表面を歩いていく様子が目に浮かんで、つい微笑んでしまいました。

 みなさんもこの曲を聴いて、一足早く金星の太陽面通過を感じてみてはいかがでしょうか。

(田崎:京都大学) 

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【4】あなたの知らない宇宙

 今月号は「金星の日面通過」特集号ですが、ここでちょっと休憩です。今年度の「あなたの知らない宇宙」では、隔月で様々なスケールの宇宙の様子をご紹介していきます。まず今月は、銀河を取り上げます。

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 皆さんは宇宙から私達がどのように作られたかを考えることはありますか?私達の住んでいる地球はどうやってできたのか?地球の母なる星、太陽はどのようにしてできたのか?そこから更に遡ろうとすると、銀河が関わってきます。

 銀河は10億〜1000億個の星と、星の材料であるガスが集まった天体です。そこではガスから星が作られており、星が作られることで銀河は成長します。したがって、銀河がどのように成長してきたかを調べれば、宇宙で星がどのように作られてきたかが分かります。

 ところで、宇宙では遠くの天体を見ることは宇宙の過去の姿を見ることになります。遠くの天体は暗いので星ではあまり遠くまで見通すことができません。ですが、非常に多くの星が集まった銀河であれば遠くの天体も観測できます。銀河の成長を調べるには、過去と現在の姿を比べる必要がありますが、これは遠く銀河と近くの銀河を比較することで実現できます。

 さて、銀河の成長を見る上で一番重要なのが、どれくらい星が作られているかです。これを過去から現在にかけて調べてみると、宇宙ができた137億年前からだんだんと活発に星が作られてきて、現在から100億年ほど前に一番活発な時期を迎え、現在は作られる星の数が減ってきているという様子がわかってきました。

 これを銀河の重さ毎に見てみると、重い銀河は早くに星を作り終えて、今は成長が止まっているのに対し、軽い銀河は現在も成長を続けているということがわかりました。単純に考えれば、重たい、つまり多くの星を含む銀河は、軽くて少ない星の銀河が寄り集まってできるように思えます。ですが、見えてきたのはそれとは逆の描像です。

 この現象はダウンサイジングと呼ばれ、そのメカニズムはまだよくわかっていません。それを調べるために、大口径の望遠鏡やシミュレーションによって様々な研究が行われています。

 宇宙から私達へとつながる道、それは一筋縄ではいかない道のようです。

(鈴木:京都大学)

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【5】天文イベント2012

 2012年度は大きな天文イベントが目白押し。せっかくだから見るだけでなく、イベントを楽しみたい。そんな方のために、お勧めの方法をご紹介します。

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 6月6日(水)に見られる金星の太陽面通過。読んで字のごとく、金星が太陽の前を横切っていく、そんな現象です。日面通過とも呼ばれます。太陽面に、黒点とは明らかに違う黒い円盤が動いていくのが見られます。

 前回2004年に金星の太陽面通過が見られたときは、非常に雲が多い中で僕は観察しました。(金星の太陽面通過は必ず6月か12月で、梅雨時に当たることが多いのです)意外に大きく見えるもので、特に金星が太陽の中に入っていく過程は、宇宙での惑星の動きを実感でき、短時間ですが感動的でした。

 金星の太陽面通過も5月の金環日食と同じく、太陽を見るときと同じ方法で、安全に気をつけてみる必要があります。望遠鏡で見る場合は必ず投影板をつかって見るようにしましょう。金星は大きいので、日食めがねでも見ることができますよ。黒い点が動いていくのがわかります。ただし、長い間見続けないようにしてください。金星の動きはゆっくりです。始まりから終わりまで6時間ほどかかります。朝見て、そしてお昼頃に見る、そんな感じでのんびりと楽しむといいでしょう。

 金星の太陽面通過が次に見られるのは2117年。これは世界中どこででもです。金環日食や皆既日食は2〜3年に一回、地球上のどこかで見ることができます。そう考えると、金星の太陽面通過は非常に珍しい貴重な現象なのです。

 日食のような派手さはないかもしれませんが、宇宙の不思議を感じさせてくれることは間違いありません。ぜひ、晴れたら日食のときに用意した道具をつかって、金星の太陽面通過、楽しんでみてください。

(塚田:平塚市博物館) 

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【6】黄華堂宇宙検定

 このコーナーでは、毎月3問ずつ宇宙に関する問題を出していきます。新しい知識を得るため、知識の再確認をするため、今日のお話のネタにするため…お好きなようにご活用ください。答えは編集後記の末尾にあります。

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 2012年6月6日、たいへん珍しい天文現象「金星の太陽面通過」が起こります。今回はその、金星の太陽面通過に関係した問題です★

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(1)このところ夕方の西の空で金星が明るく輝いていますね。
  望遠鏡でみると、金星は月のように満ち欠けをして見えます。
  では最近の金星はどのような形でしょう?
  (あ)満月のような形 
  (い)半月のような形 
  (う)三日月のような形

(2)1874年に日本で見られた金星の太陽面通過では、観測のために海外から日本へわざわざ観測隊が送り込まれました。金星の太陽面通過という天文現象を正確に観測すると、どのようなことがわかるのでしょうか?
  (あ)太陽の直径 
  (い)地球から金星までの距離
  (う)地球から太陽までの距離

(3)金星の太陽面通過が終わって10日ほどたつと、金星はどの時間帯、どの方向の空にみえるでしょう?
  (あ)日没後、西の空  
  (い)真夜中、南の空  
  (う)日の出前、東の空

(橋本:佐賀県立宇宙科学館) 

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【7】黄華堂の活動予定

● 5月30日(水) うちゅうと遊ぼう 【京大病院】

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【編集後記】

 金環日食が間近に迫る中、一足早く金星の日面通過について特集号としてお届けしました。どちらも準備をした後はお天気次第。皆で晴れることお願いしておきましょう

(鈴木:新緑に心を和ませつつ)

(黄華堂検定の答え)
(1)正解は(う)三日月のような形 でした。
 金星は地球の1つ内側の軌道で太陽の周りをまわる惑星です。自分で輝いているわけではなく、太陽の光を反射して輝いています。太陽、金星、地球の位置関係が変化することで、月のように満ち欠けをして見えるのです。6月6日には、太陽ー金星ー地球の順に一直線に並びますが、その前は太陽に照らされた金星のほんの一部分だけが、三日月状に見えています。6月6日にむけて、金星は日没後西の空での高度をだんだんと下げ、太陽に近づくようになります。

(2)正解は(あ)(い)(う) 全部!でした。ちょっといじわるでしたか・・・?
  昔は、地球から太陽までと、地球から金星までの距離の比はわかっていても、具体的に何kmなのかという絶対的な数値がわかっていませんでした。地球上の離れた2地点で同時に金星の太陽面通過を観測すると、太陽面に対して金星の位置がずれてみえます。そのずれを使って、太陽の直径や、地球から太陽までの具体的な距離などを計算することができます。

(3)正解は(う)日の出前、東の空 でした。
 日没後の西の空で金星が見えるということは、太陽の西側に金星があります。太陽の前を金星が通過すると、金星は太陽の東側にやってきます。それとともに、「宵の明星」から「明けの明星」にかわり、今度は日の出前の東の空で金星が輝くようになるのです。また金星は、地球の内側を回る惑星のため、太陽からある程度以上は離れて見えません。そのため、「真夜中に見える」ことは絶対にありません。


 なんだか理科のテストみたいでしたか?
 見逃すと次回は105年後にしか起こらない珍しい天文現象、ぜひ楽しんでくださいね。

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