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黄華堂通信  No. 060 ◆◇◆  2012年 10月号 ◇◆◇

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【もくじ】

【1】来月の星空
【2】宇宙開発裏話
【3】音楽で聴く宇宙
【4】街角の星たち
【5】黄華堂宇宙検定
【6】黄華堂の活動予定

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【1】来月の星空

 一足早く来月の星空をご紹介します。
 10月の星空についてはこちらを!
 http://www.oukado.org/hosizora1210.htm

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2012 年 11 月の星空

 空を真上に見上げた天頂近くには、秋を代表する星の並びである「ペガススの四辺形」が、そこからやや視線を下げた北の方角には、アルファベットの「W」の形をしていて、北極星を探す目印になる星座として有名なカシオペア座を見てとることができます。
 また東の空には、おうし座やぎょしゃ座を先頭に、冬の星座たちが姿を見せ始めています。秋は明るい星が少なく寂しい感じの夜空でしたが、これら冬の星座の出現で再びにぎやかな夜空となっていきます。

 ところで、28 日の晩には「半影月食」という聞きなれない天文現象が見られます。これは地球の「半影」と呼ばれる領域に月が入ったことによって起こる現象で、月から見る と太陽(光源)の一部が地球(遮蔽物)によって隠されている状態、すなわち部分日食に見えます。そのため、月に当たる太陽の光量は普段より減り、地球から 見ると暗くなって一種の月食として観察されます。とはいえ、この減光量はごくわずかであり、肉眼では注意深く観察しないと分からない程度です。目に自信の ある方は、是非その違いを確かめてみてはいかがでしょうか?
#28日の 21時過ぎから半影月食が始まり23-24時に食の最大を迎え、
#29日の 2時くらいに終わります。


*天文現象いろいろ

■  1 日 月と木星が接近
■  2 日 月の距離が最遠(距離 40万6053km、視直径 29.4')
■  5 日 おうし座南流星群が極大のころ(出現期間10月15日〜11月30日)
■  7 日 立冬(太陽黄経 225゜)
       下弦
■ 12 日 細い月と金星、スピカが並ぶ
       おうし座北流星群が極大のころ(出現期間10月15日〜11月30日)
■ 14 日 新月(オーストラリアのケアンズ付近では皆既日食)
        月の距離が最近(距離 35万7359km、視直径 33.4')
■ 16 日 細い月と火星が接近
■ 17 日 しし座流星群が極大(出現期間11月5日〜11月25日)
■ 20 日 上弦
■ 22 日 小雪(太陽黄経 240゜)
■ 27 日 土星と金星が最接近
■ 28 日 半影月食
        満月
■ 29 日 月の距離が最遠(距離 40万6368km、視直径 29.4')

参考サイト
AstroArts「天文現象カレンダー」
http://www.astroarts.co.jp/phenomena/2012/ph201211-j.shtml

(廣井:京都大学)

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【2】宇宙開発裏話 vol.10

「後世まで待たせない!?恒星間船の構成」

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 今から半世紀以上前の1957年10月4日、人類は初めて、自ら作り上げた物体を宇宙へと送り出しました。ロケットの父ツィオルコフスキーの生誕100 周年に合わせ、旧ソ連が打ち上げたスプートニク1号により、宇宙開発競争の幕が切って落とされたのです。スプートニク1号は人類が星の世界へと踏み入れた 記念すべき一歩であり、手の届く世界として人類の宇宙観を変える決定的な転換点になりました。今回は次の100年後の転換点となるであろう「恒星間宇宙飛 行」についてのお話です。

 はやぶさで使われたイオンロケットの活躍によって、人類は太陽系を駆け巡る大航海時代を迎えたといわれています。しかし、恒星間飛行は太陽系内とは比較 にならないほどの難しさがあります。イオンロケットをもってしても、隣の恒星まで数千年単位の時間がかかるからです。ずっと後世に引き継がねばなりませ ん。

 未来の恒星間航行を予想したのが、70年代にイギリス惑星間協会が計画した「ダイダロス」です。地球から5.9光年離れた、当時惑星が存在すると考えられていたバーナード星に片道切符の無人探査機を向かわせ、研究者の存命中に到達させる予定でした。

 推進方法には、核融合パルス推進が選ばれました。連続的に核融合爆発を起こし、生じたプラズマを磁場でできたノズルによって制御して、非常に速い速度で噴射する仕組みです。最終速度は光速の10%に設定され、50年でバーナード星まで到達する計算でした。

 構想から40年程経った現在、人類は核融合ロケットはおろか核融合発電すら実現できていません。目標だったバーナード星も後に惑星が存在しないことがわ かりました。でも、当時はまだ夢物語だったイオンロケットやソーラーセイルは現実のものとなり、系外惑星もすでに800個ほど見つかっています。

 これらの現状を踏まえ、来たる22世紀に恒星間航行を実現すべく、2011年から米のDARPAがダイダロス計画の見直しに入りました。100 YearStarShipと呼ばれ、今一度恒星間航行の技術を洗い直して最適な宇宙船の構成を決め、社会文化、経済、宗教など幅広い分野から分析がなされ るそうです。

 さらに今月17日、ビックニュースが入ってきました。チリにあるラシーヤ天文台の観測データから、地球に一番近い恒星系であるアルファケンタウリのB星で、地球サイズの惑星が見つかったというではありませんか!恒星間飛行は決して遠い未来の話ではないのかもしれません。

(藤井:大阪教育大学)

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【3】音楽で聴く宇宙

*** 惑星シリーズ第一弾 ***
ホルスト作曲 組曲「惑星」

 こんにちは!前回で月シリーズが終了し、今回からは惑星にちなんだ音楽を紹介していきたいと思います。

 まず、惑星で思い浮かぶのはホルスト作曲の組曲「惑星」です。平原綾香の「Jupiter」で使われた曲としてご存知の方も多いかと思います。この組曲 は下の7曲で構成されています。天文をイメージする「惑星」ですが、実はホルスト自身は占星術をもとに作曲しているのだそうです。そのため占星術上での惑 星の意味が副題としてつけられています。

 第 1曲:火星  "戦いをもたらす者"
 第 2曲:金星  "平和をもたらす者"
 第 3曲:水星  "翼のある使者"
 第 4曲:木星  "快楽をもたらす者"
 第 5曲:土星  "老いをもたらす者"
 第 6曲:天王星 "魔術師"
 第 7曲:海王星 "神秘なる者"

 さて、この曲が作曲された1910年代は、現代天文学に向けて大きく物理学・天文学が発展した時代でもありました。特に1916年にアインシュタインに よって一般相対性理論が定式化され、ブラックホール周辺などの強力な重力下での物質の状態などが研究できるようになったことが挙げられます。日本でも日本 天文学会創立(1908年)、IAU(国際天文学連合)創立と同時に加盟(1919年)、など天文学が大きく動き始めた時でした。

 占星術に興味を持ち「惑星」を作ったホルストですが、もしも天文学への造詣が深かったら、どんな「惑星」を作曲したのでしょうか。きっとその「惑星」 も、神秘的であると同時に宇宙の真理へと迫るような勇壮な曲になったのではないかと、勝手に想像してしまう今日この頃です。

参考文献
・桜井邦朋著「天文学史」(朝倉書店)
・日本天文学会百年史編纂委員会編「日本の天文学の百年」(恒星社厚生閣)

(田崎:京都大学)

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【4】街角の星たち

 皆さんは最近、星を見ましたか?街中からは月くらいしか見えないと思っていませんか?満天の星空とはいきませんが、街中からでも星は案外見えるものです。「街角の星たち」では黄華堂のメンバーが各地から見える星を紹介していきます。

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 第1回目は京都市の星空をお届けします。京都市は政令指定都市ですが、建物の高さに制限があるため、夜空が見えないということは少ないのが特徴です。ま た、都市部が中心に集中しているので、数km郊外へ移動すれば街明かりを避けることができます。更に神社が多く、局所的に明かりが無い場所が点在していま す。

 今回は京都市の中でも北大路橋周辺から見た星空です。加茂川沿いのため空が開けていて、明かりも街灯がある程度です。また、地下鉄北大路駅から約200mほどで、ふらっと寄りやすい場所です。ここから、9月末21時頃に星を見てみました。

夏の大三角

(夏の大三角、ISO1600、露出7秒)
肉眼では3等星までは見えるという印象です。3等星まで見えるとはくちょう座のくちばしの星が見え、ペガスス座の形が分かります。各季節の代表的な星座は 探すことができる程度です。更に星をたくさん見たい場合には、カメラを使うのがお勧めです。使える機能に依りますが、コンパクトデジカメでも6等星までは 簡単に写すことができます。三脚とズームを使えば、暗い星を狙って撮ることができます。慣れは必要ですが、今回は天王星を見ることができました。

天王星

 星を見ていたら、「意外と星が見えるんだね」という声がしました。皆さんも、夜外に出た時、ちょっと寄り道をして星を見てみませんか?

(鈴木:京都大学)

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【5】黄華堂宇宙検定

 このコーナーでは、毎月3問ずつ宇宙に関する問題を出していきます。新しい知識を得るため、知識の再確認をするため、今日のお話のネタにするため…お好きなようにご活用ください。答えは編集後記の末尾にあります。

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 今回は最近のできごとからの出題です。

(1)今年8月、NASAの火星探査機が無事に着陸しました。この探査機の名前は何というでしょうか?
 (あ)カッシーニ
 (い)マーズ・パスファインダー
 (う)キュリオシティ

(2)今年9月、映画「天地明察」が公開され、江戸時代の天文学者「渋川春海」が注目されています。
  さて、江戸時代の天文学者の最も重要な仕事は何だったのでしょうか?
 (あ)生命の起源を探ること
 (い)暦を作成すること
 (う)星空解説をすること

(3)今年10月、京都大学の山中教授がノーベル医学生理学賞を受賞し、話題になっています。
  では、昨年ノーベル物理学賞を受賞した天文学の研究は何でしょうか?
 (あ)超新星の観測による宇宙加速膨張の発見
 (い)ブラックホール蒸発の観測
 (う)超新星ニュートリノの検出

(住吉:京都大学)

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【6】黄華堂の活動予定

● 10月24日(水) うちゅうと遊ぼう 【京大病院】

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【編集後記】
  日が短くなってきて、星が見える時間が長い季節になりました。せっかくなので夏と冬の明るい星だけでなく、星図を見ながら秋の星も眺めてみてはいかがでしょうか?秋の星座にひそむ「魔術師」を見つけられるでしょうか?

(鈴木:星は町で覚えました)
(黄華堂検定の答え)
(1)う
 キュリオシティは最新の火星探査機で、総重量は約0.9トンと非常に重く、火星表面の土や岩石を採取し解析できる装置を搭載しています。因みに、キュリ オシティ (Curiosity) は、英語で好奇心という意味だそうです。なお、「カッシーニ」は土星探査機、「マーズ・パスファインダー」は1997年に火星に着陸した探査機です。

(2)い
 江戸時代、幕府にとって正確な暦を作成することは重要であったようで、特に日食の予測を外すのことは幕府の威厳に関わる重大な問題であったようです。渋川春海は、日本固有の正確な暦である「貞享暦」を作り上げた人物です。

(3)あ
 昨年のノーベル物理学賞は、パルムッター博士、シュミット博士、リース博士の3氏が受賞しました。受賞内容は、遠方銀河で起こった超新星を詳しく観測す ることにより宇宙が加速膨張していることを発見したことでした。なお、「ブラックホール蒸発」はホーキング博士のブラックホールに関する理論で、未だ観測 されていません。また、「超新星ニュートリノの検出」は20ーベル物理学賞の受賞内容の一つで、小柴博士が受賞しました。

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