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黄華堂通信  No. 065 ◆◇◆  2013年 03月号 ◇◆◇

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黄華堂のつぶやき!@oukadoで天文現象やイベント情報についてつぶやいています!

【もくじ】

【1】来月の星空
【2】絵本で見る宇宙
【3】あなたの知らない宇宙
【4】黄華堂活動報告
【5】黄華堂宇宙検定
【6】黄華堂の活動予定

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【1】来月の星空

 一足早く来月の星空をご紹介します。
 03月の星空についてはこちらを!
http://www.oukado.org/hosizora/2013/hosizora1303.htm

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2013 年 4 月の星空

寒い冬が終わりを迎え、桜が咲き誇る春がやってきます。夜空を見上げてみても、
オリオン座やふたご座といった冬の星座は西の空に沈み、その代わりにおおぐま座
やしし座といった春の星座が天頂高く昇っています。おおぐま座のしっぽの部分、
北斗七星のカーブを延長すると、だいだい色に輝くうしかい座のアークトゥルスを
通り、やがて青白く光るおとめ座のスピカへと至る曲線を描くことができます。こ
れは「春の大曲線」と呼ばれ、春の夜空の見どころのひとつです。また、アークトゥ
ルスとスピカを線で結び、それを底辺として天頂方向に二等辺三角形を作ろうとす
ると、しし座のデネボラを見つけることができます。ここでできた三角形は「春の
大三角」と呼ばれ、やはり見どころのひとつとなっています。さらに、デネボラと
反対の方向、地平線近くでは土星も輝いています。


*天文現象いろいろ

■  3 日 下弦
■  5 日 清明(太陽黄経 15゜)
          パンスターズ彗星(C/2011 L4)と M31 が接近(02゜28')
■ 10 日 新月
■ 14 日 細い月と木星が接近
■ 16 日 月の距離が最遠(距離 40 万 4862 km、視直径 29.5')
■ 17 日 春の土用(太陽黄経 27゜)
■ 18 日 上弦
■ 20 日 穀雨(太陽黄経 30゜)
■ 22 日 こと座流星群が極大(出現期間 4 月 16 日〜4 月 25 日)
■ 26 日 満月
     部分月食(最大食分 0.020、月没帯食、関東以西)
■ 28 日 月の距離が最近(距離 36 万 2268 km、視直径 33.0')

参考サイト
AstroArts「天文現象カレンダー」
http://www.astroarts.com/phenomena/2013/ph201304-j.shtml


(廣井:京都大学)

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【2】絵本で見る宇宙 Vol.45


皆さん、パンスターズ彗星は見られましたか?
当初予想よりも暗かったものの、健闘してくれたと思います。
(なんか偉そうですが)
さて、前回に引き続き今回も「やさしい星ずかん」からのご紹介です。

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『やさしい星ずかん 惑星』

パトリック・ムーア文、江川多喜雄監訳

火星探査車が火星を自由に動き回って、迫力ある画像を送ってきてくれる…そんな
時代になりました。
土星や木星は観望会でも人気の天体の一つです。
名前は誰でも知っている太陽系の8つの惑星たち。
でも、その素顔は意外に知られていないものです。

惑星の本を見ると、半径や質量といった数字のデータと探査機が撮った美しい写真
…といったものが多いですよね。
それはそれできれいでわかりやすいなのですが、情報が多すぎる感じも否めません。
この絵本は、惑星はイラストで描かれ、文章も一つ一つをくわしく解説するという
よりは、まとめてざっくりと特徴を抜き出しています。
子ども向けに書かれていますが、大人の超入門編としてもおすすめです。

難点なのは冥王星が惑星だったり木星の衛星の数が16個だったり…ちょっと情報が
古いことでしょうか。 惑星探査機が飛び交う昨今、太陽系の情報はすぐに更新されます。
ですが、細かい数字にはこだわらず惑星たちの大まかな個性を知ってもらえればと
思います。

もちろん、機会があれば望遠鏡で惑星を見てみてくださいね!


(塚田:平塚市博物館)

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【3】あなたの知らない宇宙

 今年度の「あなたの知らない宇宙」では、隔月で様々なスケールの宇宙の様子を
ご紹介していきます。今月は宇宙を見る目である望遠鏡についてのお話です。

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「電波史上最高の視力で見える宇宙とは?〜アルマ望遠鏡〜」


 天体から届く光(=電磁波)には、波長によってガンマ線から電波まで様々な種類
があり、その性質から効率的に光を捉える方法も異なります[注1]。今回は最新の
電波望遠鏡、アルマ望遠鏡についてお話しましょう。

 アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計[注2])は大小合わせて66台
のパラボラアンテナで構成される国際望遠鏡[注3]です。アンテナは全て移動可能
で、最大直径18.5kmの電波望遠鏡として機能し、そのときの分解能は6000分の 1度
と、世界最大の視力を誇ります。また、感度も従来に比べ一段と高くこれまでに見
えなかった宇宙が見えると期待されています。では、何故そのような高分解能・高
感度が実現できるのでしょうか?

 望遠鏡の分解能(=視力)は口径が大きいほど高くなります。口径が大きければ大
きい大き程細かな描像が見えますが、建設できる望遠鏡の大きさには限りがありま
す。特に、電波は可視光線より 1万倍も波長が長い為、例えば人の視力と同じ程度
の望遠鏡を作るのにも口径100mのアンテナが必要です。その為、望遠鏡 1台で分解
能を高めるのは現実的ではありません。そこで用いられるのが『干渉計』と呼ばれ
る手法です。これは複数台のアンテナで得られた波を合成し、波が最もよく合う条
件から天体の位置を精確に測定する方法です。干渉計は電波が「波形そのものをデ
ータとして保存できる」という利点を活かしており、個々のアンテナは小さくても
大きな口径の望遠鏡と同じ分解能を発揮することができるのです。アルマ望遠鏡で
は累計12mのアンテナ54台と 7mのアンテナ12台を精度よく配置することで非常に高
い分解能を実現しています。

 また、アンテナの面をより滑らかなものにし、高感度・低ノイズの受信機の開発
も行うことで非常に高い感度も同時に実現しています。更に、特にミリ波やサブミ
リ波と呼ばれる比較的開拓されていない波長の光で精度のよいデータが取得できる
ようになります。これはアルマ望遠鏡が建設されるアタカマ砂漠は標高5000 mにあ
り、地球大気中の水蒸気による影響を受けにくいからです。

 それでは、アルマ望遠鏡でどのような宇宙の姿が見えてくると期待されているの
でしょうか?まず、宇宙初期の銀河は電波やサブミリ波で明るいと考えられており、
宇宙初期の銀河の姿を捉えることができると期待されています。また、恒星の周り
で形成される惑星形成円盤はサブミリ波で輝く温度をもっており、アルマ望遠鏡で
観測することで恒星の生まれる仕組みやそれに伴う惑星系の誕生の過程を非常に詳
細に観測できると期待されています。

 アルマ望遠鏡は2013年 3月14日(日本時間)に開所式を迎え、これまで建設と一部
の施設で行っていた初期科学運用から本格的な科学観測を行う段階に移行しました。
アルマ望遠鏡が見せてくれるまだ誰も知らない宇宙の姿に期待ですね。

<参考>
国立天文台、アルマ望遠鏡のwebサイト:
http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/

注1:可視・(近)赤外線望遠鏡については黄華堂通信2009年1月号、2009年9月号で
   紹介しました。
   黄華堂通信のバックナンバーはこちらから閲覧できます。
   
http://www.oukado.org/merumaga/merumaga.htm

注2:英語名は
   Atacama Large Millimeter/submillimeter Array=『ALMA』です。ALMAはス
   ペイン語で『たましい』という意味です。

注3:アルマ望遠鏡はヨーロッパ、東アジア、北米各国がチリ共和国と協力して建
   設しています。


(森谷:広島大学)

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【4】黄華堂活動報告


「第4回大阪ステーションシティ観望会 活動報告」

 2月16日土曜日第4回大阪ステーションシティ観望会を開催しました。当日は、天
候に恵まれ、雲がほとんどない夜空の下で観望会を行うことができました。身を切
るような寒さの中での開催となりましたが、多くの方が来場してくださいました。

 今回の観望会は「Feel Love天体観望会」ということで、「愛」をテーマにした観
望会でした。そのため、今回の観望会では、ふたご座の兄弟愛の話、オリオン座の
愛にまつわる神話、バレンタインデーと関わりのある天文の話等「愛」に関わる話
を中心に、来場してくださった方々に天文に関するお話や夜空の案内をさせていた
だきました。

 会場となった太陽の広場を、「肉眼での観望エリア」「望遠鏡での観望エリア」
「スライドショーを見ながら天文に関するお話を聴けるエリア」の 3つのエリアに
分け、観望会を行いました。どのエリアでも、スタッフのする話に対し足を止め熱
心に聞いていらっしゃる方を多く見ることができたように思います。

 また、望遠鏡のエリアでは、来場された方の多くが、設置されていた望遠鏡のあ
いだを行ったり来たりして、何度も望遠鏡を覗きに来られるという様子が見られま
した。そして、望遠鏡を覗く度に「わぁ!すごい!」と望遠鏡から見える星の輝き
や「目で見るのと全然違う!」と肉眼で見るのとはまた違った星の様子に感動して
いらっしゃる様子でした。

 当日は観望会直前まで、空を雲が覆っていたため、本当に観望会が開催できるか
不安でした。しかし、観望会が始まるやいなや空を覆っていた雲は 1つ残らず消え
去り、滅多にないような快晴の中で観望会が行えたため、とても驚きました。

 今回も星空からもたらされる感動を、来場してくださった方々と共有できたので
はないかと思います。この観望会がきっかけとなって、ふと夜の空を見上げてくだ
さる方が 1人でも増えればいいなと思います。


(塩田:大阪教育大学)

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【5】黄華堂宇宙検定

 このコーナーでは、毎月3問ずつ宇宙に関する問題を出していきます。新しい知
識を得るため、知識の再確認をするため、今日のお話のネタにするため…お好きな
ようにご活用ください。答えは編集後記の末尾にあります。

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 今月は、太陽系天体特集です。

(1)今年3月、パンスターズ彗星 (C/2011 L4) の接近が話題となっています。
  この「パンスターズ」とは何のことでしょう?

 (あ)彗星の発見者の名前
 (い)サーベイ計画・望遠鏡の名前
 (う)星団(星の集まり)の名前

(2)彗星はどこからやって来たと考えられているでしょう?

 (あ)小惑星帯
 (い)カイパーベルト
 (う)オールトの雲

(3)今年1月、ヴァルナという太陽系の天体が恒星を隠す「星食」という現象が
  話題となりました。このヴァルナは次のどれに分類されているでしょうか?

 (あ)太陽系外縁天体
 (い)衛星
 (う)惑星


(住吉:京都大学)

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【6】黄華堂の活動予定

● 4月17日(水)うちゅうと遊ぼう 【京大病院】

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【編集後記】
 事前にかなり期待されていたパンスターズ彗星は、条件の難しさから一般の方ま
で見える彗星はとはならず残念です。しかし、姿を捉えようと並ぶカメラ、次々と
上がる報告は見ていて楽しいです。
                         (鈴木:春霞に一喜一憂)

(黄華堂検定の答え)
(1)い
  パンスターズ(Pan-STARRS: The Panoramic Survey Telescope & Rapid Response
 System)とは地球に接近する(衝突してくる)天体を監視するためのサーベイ計
 画です。パンスターズ彗星はこのサーベイで見つかった天体で、ハワイ州マウイ
 島ハレアカラにある「パンスターズ1」と言う望遠鏡により発見されました。現
 在は1台のみですが、将来的には「パンスターズ1〜4」の4台の望遠鏡で観測
 予定です。
 [Pan-STARRSの公式サイト] http://pan-starrs.ifa.hawaii.edu/public/home.html

(2)い、う
  パンスターズ彗星などの彗星は、「オールトの雲」由来と考えられており、長
 周期軌道です。(パンスターズ彗星:放物線軌道・二度と戻ってこないかも?)
 [参考図:国立天文台天文情報センター]
  http://www.nao.ac.jp/contents/astro/sky/comet/oort-kuiper-belts-l.jpg

 ハレー彗星などの彗星は、「カイパーベルト」由来と考えられており、短周期軌
 道です。(ハレー彗星:楕円軌道・約76年周期)
 [参考図:国立天文台天文情報センター]
  http://www.nao.ac.jp/contents/astro/sky/comet/kuiper-belts-l.jpg

(3)あ
  ヴァルナは「太陽系外縁天体 (TNO: Trans-Neptunian Object)」の一つで、海
 王星より外側の太陽系外縁に存在する小惑星です。(冥王星も同じ仲間です)太
 陽系外縁天体による星食は、現象の起きる予測が難しく、継続時間が数秒〜数十
 秒と短いので、観測が困難な場合が多いようですが、今年1月のヴァルナによる
 星食では、日本の複数のグループが観測に成功しました。この観測により、世界
 最大級の望遠鏡でさえ観測が困難なヴァルナの「形状」に迫れるようです。
 [広島大学]
  http://www.hiroshima-u.ac.jp/hasc/kenkyuseika/p_2u7uru.html

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