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黄華堂通信  No. 066 ◆◇◆  2013年 04月号 ◇◆◇

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【もくじ】

【1】来月の星空
【2】宇宙開発裏話
【3】音楽で聴く宇宙
【4】ブラックホールが星を食べる瞬間に迫る
【5】街角の星たち
【6】黄華堂宇宙検定

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【1】来月の星空

 一足早く来月の星空をご紹介します。
 04月の星空についてはこちらを!
http://www.oukado.org/hosizora/2013/hosizora1304.htm

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2013 年 5 月の星空

 桜の木にも青い葉が茂り、新緑の季節となってきました。昼間は気持ちのいい青
空が広がり、夜は春の星々でにぎわっています。

 21時頃になると、しし座、おとめ座、うしかい座、北斗七星といった春を代表す
る星の並びが天頂付近に見えます。先月ご紹介した「春の大曲線」や「春の大三角」
が見つけやすくなるでしょう。また、土星も観望の好機を迎えています。23日には
満月前の明るい月が土星に近づくので、右側に見える青白くまたたいている星「ス
ピカ」と合わせて楽しみましょう。

 下旬には日没後の西の空がとてもにぎやかになります。少しずつ高度を上げてい
る金星とシーズンオフを迎える木星が近づき、さらにそこに水星が加わります。水
星は双眼鏡があった方が良いですが、金星と木星は肉眼でも見つけられます。3つの
惑星が近づくことはそうあることではないので、ぜひこの機会にご覧ください。


*天文現象いろいろ

■  2 日 下弦
          八十八夜
■  5 日 立夏
■  6 日 みずがめ座η流星群が極大(出現期間4月25日〜5月10日)
■ 8 日 水星と火星が接近
■ 10 日 新月
         オーストラリアなどで金環日食(日本では見られない)
■ 12 日 月と木星がならぶ
■ 16 日 月の距離が最遠(距離 40 万 5825 km、視直径 29.4')
■ 18 日 上弦
■ 21 日 小満
■ 22 日 月とおとめ座のスピカが接近
■ 23 日 月と土星がならぶ
■ 24 日 水星と金星が接近
■ 25 日 満月
     南米などで半影月食(日本では見られない)
■ 27 日 木星と水星と金星が接近
■ 28 日 木星と金星が接近

参考サイト
国立天文台 ほしぞら情報
http://www.nao.ac.jp/astro/sky/2013/05.html


(飯野:大阪教育大学OG)

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【2】宇宙開発裏話 vol.13


「40年の時を超え、うなりを上げる発掘エンジン「NK-33」」

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 先日、新しい宇宙ロケット「アンタレス」がデビューしました。空中発射ロケッ
ト「ペガサス」を民間主導で開発した経験を持つ、オービタル・サイエンシズ社の
ロケットです。スペースシャトル無き今、すでに国際宇宙ステーションへの貨物輸
送を始めているSpaceX社や日本の強力なライバルとして活躍することでしょう。ま
たアンタレスは、これまで数々の名探査機を打ち上げてきた、退役予定の中型ロケ
ット「デルタII」の後継機にも位置づけられています。

 アンタレスの第一段エンジンには、数奇な運命をたどってきた液体ロケットエン
ジン「NK-33」が使われています。米ソが月レースを繰り広げていた時代、ソ連はア
ポロ計画に対抗するために超大型月ロケット「N1」を作りました。このロケットの
第 1段エンジンとして NK-15が開発され、さらに改良型として生み出されたのが
NK-33です。いまだアメリカや日本でも実用化できない、酸化剤の多い高圧状態で燃
焼ができるため、ロケットエンジンの重さに比べて大きな推力を出せました。

 N1は1969年から72年にかけ、 4度打ち上げが行われましたが、すべて失敗してし
まいます。ソ連は有人月探査計画を放棄するも、技術者たちは大量に残された NK-33
に「核物質注意」の偽の張り紙をつけ、密かに保管しました。

 このエンジンが発掘されたのは、ソ連が崩壊した後の1993年です。アメリカの航
空宇宙メーカーであるエアロジェットは、100台弱の NK-33とその生産権利を格安で
買い取り、燃焼実験によって驚異的な能力を明らかにします。

 実は、日本もこのエンジンに注目していました。90年代後半、JAXAの前身組織の
一つであるNASDAは、低コストな技術実証ロケットを構想していました。第2段に新
開発の液化天然ガスエンジンを使う一方で、第1段はNK-33を含めた既存のロケット
を流用する予定でした。ところが、一足早くアメリカの宇宙ベンチャー企業キスラ
ーにNK-33を押さえられてしまい、NASDAは別のエンジンを調達してGXロケットとし
て設計を改めます(結局天然ガスエンジンの開発に失敗し、計画は頓挫しました)。

 エンジンを獲得したキスラーは、二段式の完全再使用型ロケット「K-1」を構想し
ていました。しかし、こちらも開発がずるずる遅れ、資金難からNASAの民間宇宙輸
送コンペ「COTS」で負けてしまいます。勝利をつかんだのは、エンジンを自力開発
したSpaceXと今回のオービタル・サイエンシズ社でした。

 このように複雑な変遷を経て、NK-33はようやく日の目を見たのです。40年以上も
前に作られたエンジンが、時を超えて第一線の場で使われるって、凄い話ですよね。


(藤井:平塚市博物館)

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【3】音楽で聴く宇宙

ヨーゼフ・シュトラウス作曲 ワルツ『天体の音楽』


 ワルツの父と称されるヨハン・シュトラウス 1世をご存知でしょうか?「ラデツ
キー行進曲」を作曲したことで有名です(ワルツではなく行進曲ですが)。その長
男はワルツの王として知られるヨハン・シュトラウス 2世で、「美しく青きドナウ」
や「ウィーンの森の物語」を作曲しました。ニューイヤーコンサートなどで聞いた
ことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 さて、今回取り上げたヨーゼフ・シュトラウスは、ヨハン・シュトラウス 1世の
次男で、ヨハン・シュトラウス 2世の弟です。ヨーゼフはもともと工業技術者だっ
たのですが、兄ヨハンの代役で作曲をしたことをきっかけに音楽家へ転身したそう
です。兄ヨハンも認めたというその才能を生かし、43年という短い生涯の間に 200
曲以上もの作品を作りあげました。

 私はこのワルツを聴いて「静的」「神秘的」という言葉が浮かびました。現代天
文学によって明らかにされてきた「活動的な宇宙」の要素は無いものの、静かであ
るが故に何か動的な情熱を秘めているかのような印象を受けます。ヨーゼフはこの
「天体の音楽」について、宇宙の運行そのものを一つのハーモニーとして、それに
よって奏でられるメロディを主題として幻想的なワルツを作曲した、と語っていま
す。ヨーゼフの時代には知られていなかったはずの宇宙像が、彼の想像力によって
生み出されたのかもしれませんね。


(田崎:京都大学)

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【4】ブラックホールが星を食べる瞬間に迫る


 『宇宙の穴』そのように形容される天体が宇宙には存在します。その名も『ブラ
ックホール』!!

 宇宙がテーマのSF小説や映画などに登場し、“その言葉は知っているぞ”、“と
にかく何でも吸い込むやつでしょ”という人は案外多いのではないでしょうか?

 そんなブラックホールに、今年2013年夏、G2という名前の星間ガス雲が吸い込ま
れ、その様子を見ることができるかもしれない、そのようなことが騒がれています。
しかもそのブラックホールというのが、私たちの太陽系がある、天の川銀河の中心
にあるといわれているブラックホール(その名もSgrA*(サジタリウスエースター))
なのです。

 ということで、今年度は“ブラックホールとはそもそも何者なのか?”、“私た
ちの銀河の中心にあるブラックホールって?”、“吸い込まれるとどうなるの?”
そんな疑問にお応えすべく、隔月でブラックホールのいろはについてお話します。

 突然ですが、あなたの周りには少しやせた人や、ぽっちゃりした人がいています
ね、それと同じようにブラックホールにも“軽いブラックホール”と“重たいブラ
ックホール”があります。その名も『恒星質量ブラックホール』と『超大質量ブラ
ックホール』です。

 まずは、『恒星質量ブラックホール』です。このブラックホールは太陽の質量の
10倍程度といわれており、ある質量より重い恒星(自ら光る星)がその一生の終わ
りに大爆発(超新星爆発)を起こした後に、収縮していき形成されます。その代表
格がCygX-1(シグナスエックスワン)、夏の空に輝くはくちょう座に位置する天体
です。あそこにブラックホールがあるのかな?なんて思いながら夏の空を見上げる
のも面白いかもしれないですね。

 さて、もう一つが『超巨大質量ブラックホール』です。こちらはなんと太陽の質
量の100万倍から100億倍にもなり、たいていの銀河の中心に存在します。しかし、
どのように形成されるかについては、ブラックホール同士が合体する、エディント
ン限界(可能であれば別の月に紹介します。)を超える、など多くの仮説は立てら
れていますが、今なお解決されていないことは多く、現代天文学最大の謎のひとつ
と言われています。そしてこの代表格が、天の川銀河の中心にあるといわれるSgrA*
です。そのようなブラックホールにガス雲が吸い込まれるといわれれば、世の天文
学者たちは黙っていません、ついに現代天文学最大の謎が解決するのか!?みなさ
ん希望を胸に頑張っていらっしゃることかと思います。

 初回はブラックホールの種類について紹介しました。これを機会にあなたもブラ
ックホール博士を目指してはいかがですか。


(小林:大阪教育大学)

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【5】街角の星たち

 皆さんは最近、星を見ましたか?街中からは月くらいしか見えないと思っていま
せんか?満天の星空とはいきませんが、街中からでも星は案外見えるものです。
「街角の星たち」では黄華堂のメンバーが各地から見える星を紹介していきます。

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 今回は番外編として、 3月に話題になったパンスターズ彗星のお話をします。パ
ンスターズ彗星は、昨年までは肉眼でも見えるのでは、と言われていました。多く
の人が目にできるかもしれないと、期待されていましたが、いざ時期が近づくと、
そんなに明るくならず、双眼鏡やカメラを使わないと見えない、という予想に変わ
っていました。とはいえ、明るい彗星であることに間違いないので、見ない手はあ
りません。日本で見え始める 3月では西の空にとても低く、空が霞めば見えないと
いう一筋縄ではいかない彗星に挑みました。

 彗星がもっとも明るくなる 3月10日は、午前中の雨のおかげで黄砂が晴れ、澄ん
だ空の下、夕方を迎えました。しかし、西の空に現れた雲に阻まれて見ることがで
きずに終わります。早々に見る難しさを実感したのでした。

 翌11日、 twitterにパンスターズ彗星が見えたという報告が上がる中、位置を確
認できないまま沈む時刻を迎えました。しかし、後ほど写真を確認すると彗星が写
っていました。どうやら探す方角がずれていたので、見つからなかったようです。
それがこちらの写真。(どこに写っているかわかるでしょうか?)

この日に彗星の位置と明るさを確認できたため、その後は探すのが比較的簡単にな
りました。

 自分の中で彗星が一番よく見えたのが 3月15日。彗星が西の空で少し高度を上げ
たため、より暗い空の中で探すことができました。この日に撮影したのが、こちら
の写真です。

核と尾を確認でき、立派な彗星が見えています。

 その後は彗星が暗くなり、天気に恵まれない日が続いたため、しばらく見られま
せんでした。この彗星を再び確認できたのは、 4月に入り明け方に見えるようにな
ってからです。空が暗いので他の星を頼りにすることで、むしろ 3月よりも見つけ
やすくなっていました。更に、撮影の時に露出時間を増やせるめ、彗星が暗くても
十分にカバーできるのです。そんな状況下、 4月22日の未明に撮影したのが、こち
らの写真。

周囲の星に紛れてしまいそうですが、尾がしっかり見えています。

 この後は北の空で一日中沈まない星になって見えるようになります。その姿を撮
影している方がきっといるはずですから、忘れた頃に「パンスターズ彗星」と検索
してみて下さい。きっと「まだ見えているのか」と驚くことでしょう。


(鈴木:京都大学)

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【6】黄華堂宇宙検定

 このコーナーでは、毎月3問ずつ宇宙に関する問題を出していきます。新しい知
識を得るため、知識の再確認をするため、今日のお話のネタにするため…お好きな
ようにご活用ください。答えは編集後記の末尾にあります。

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  4月に入り、最高気温も25度に達し、初夏とも言われる程、暖かくなり、また夕
方 6時ごろでも大分明るくなってきました。つまり、太陽の日照時間がそれほど長
くなってきたというわけです。今回は、その太陽の時間ごとの明るさの見え方に関
する出題です。

 日が沈み、夜のとばりがあたりを覆うまでの間を、黄昏時といいます。また夕方
の黄昏時に対して夜明け前の薄明かりの時はかわたれ時といいます。そして黄昏時、
かわたれ時の薄ぼんやりした明るさのことを薄明といいます。

(1)この薄明、最初から最後まで同じ明るさではなく、明方の薄明なら、真っ暗
  な夜からほんの少し明るくなり、だんだんと明るさを増して日の出を迎えます。
  そして夕方はこの逆になります。薄明が継続する時間というのは季節によって
  変化します。では、この薄明の継続時間が最も短くなるのは次のうち、いつで
  しょうか?

 (あ)春分
 (い)夏至
 (う)冬至

(2)新聞やインターネットのサイトにはその日の日の出や日の入りの時刻が掲載
  されています。ですが、この時刻がそれぞれによって微妙に違っていたりする
  ときがあります。(大体は1、2分ですが)この差は、見え方による差を計算結
  果にどう反映させるかといことにより生じるのですが、では、この見え方の違
  いというものは、何が原因で発生するのでしょうか?

 (あ)地球には磁気がある。
 (い)地球には大気がある。
 (う)地球には 4月から10月の期間だけ大気、磁気がある。

(3)太陽(または、月)は見る時間帯によって大きく見えるときと小さく見える
  ときがあります。それは、目の錯覚によって感覚的に感じるものなのですが、
  太陽、または月が大きく見えるように感じるのはいつでしょうか?また、小さ
  く見えるのは?

 (あ)地平線に近いとき大きく、空の高いところにあるとき小さく見える。
 (い)空の高いところにあるとき大きく、地平線に近いとき小さく見える。
 (う)5分ごとに大きくなったり小さくなったりして見える。


(酒井:大阪教育大学)

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【編集後記】
 春霞で星が見にくい季節ですが、雨が降り寒気が入ると、空が澄んで綺麗な星空
になります。そんな日に明け方まで起きていると、夏とは違う雰囲気で夏の星座を
見ることができます。
                     (鈴木:夏の星は今がチャンス?)

(黄華堂検定の答え)
(1)あ
  夏至の頃は薄明の継続時間は長く、冬場は夏に比べると短めです。そして最も
 薄明の継続時間が短いのは春分・秋分の頃です。

(2)い、
  地球には大気があります。そして、蜃気楼や、夏の逃げ水で判るように大気の
 密度の違いから光の屈折現象が発生します。この屈折現象のために、空に見える
 天体の位置は、実際よりも浮き上がります。この傾向は天体の高度が低いほど(
 地平線に近いほど)顕著になり、地平線付近では約0.6 度ほど浮き上がりが発生
 します。このため、地平線から昇る赤い太陽を目撃した瞬間は、本来ならまだ0.6
 度ばかり地平線の下にあるはずの太陽を目撃したことになります。 (3)あ
  太陽や月、星のある空を地球の周辺にある球体の内面と考え「天球」と呼びま
 す。太陽や月のように見かけの大きさをもった天体の大きさは天球上に占める角
 度で表しますが、しかし、人間が感覚的に感じる天球は球ではなく、楕円形だと
 言われます。そして、人間は感覚的にこの楕円上に天体があるように見えますの
 で、角度によって、大きさが変わり、天頂付近では実体より小さく、地平付近で
 は逆に大きくなります。ですので、地平線付近が一番大きく見えるように感じる
 のです。

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