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黄華堂通信  No. 072 ◆◇◆  2013年 10月号 ◇◆◇

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【もくじ】

【1】来月の星空
【2】宇宙開発裏話
【3】音楽で聴く宇宙
【4】ブラックホールが星を食べる瞬間に迫る
【5】黄華堂宇宙検定

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【1】来月の星空

 一足早く来月の星空をご紹介します。
 10月の星空についてはこちらを!
http://www.oukado.org/hosizora/2013/hosizora1310.htm

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2013 年 11 月の星空

  7日は立冬、暦の上ではもう冬となります。夜半過ぎにはオリオン座もきれいに
見えて、冬の訪れを感じさせます。風邪をひかないよう、しっかり着こんで観測し
てくださいね。

 夕方の南西の低空には、宵の明星「金星」がひときわ明るく輝いています。 1日
には東方最大離角となる金星、望遠鏡を向けてみると半月のような欠けた形を見る
ことができます。 7日前後には細い月との共演も楽しめるでしょう。

 そして、下旬になると今年の注目天体「アイソン彗星」が明け方の空に観測でき
ます。18日にはスピカ、24日には土星と水星に近づくので、それらの天体が彗星を
探すよい目印となります。東の低空に見えるため、東の空が開けた場所で、双眼鏡
を準備して観測しましょう。当初の予想よりも増光のペースがにぶいのが心配です
が、がんばって肉眼でも観測できるぐらい明るくなることを願っています。


*天文現象いろいろ

■  1 日 金星が東方最大離角(夕方に見やすい)
■  3 日 新月
     大西洋〜アフリカの中央部で金環皆既日食(日本では日食にならない)
■  5 日 おうし座南流星群が極大のころ(出現期間10月15日〜11月30日)
■  6 日 月の距離が最近(距離 36 万 5360 km、視直径32.7')
■  7 日 立冬
■ 10 日 上弦
■ 12 日 おうし座北流星群が極大のころ(出現期間10月15日〜11月30日)
■ 18 日 満月
     しし座流星群が極大(出現期間11月5日〜11月25日)
     アイソン彗星がスピカに接近
     水星が西方最大離角(明け方に見やすい)
■ 22 日 小雪
     月の距離が最遠(距離 40 万 5442 km、視直径29.5')
■ 24 日 明け方の東点で土星、水星、アイソン彗星が接近
■ 26 日 下弦
     水星と土星が大接近
■ 29 日 アイソン彗星が近日点を通過

参考サイト
国立天文台 ほしぞら情報
http://www.nao.ac.jp/astro/sky/2013/11.html


(飯野:大阪教育大学OG)

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【2】宇宙開発裏話宙 Vol.15


「気象衛星の起承転結」

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 今年の秋は日本に大型台風が相次いで接近しました。メディアで刻々と伝えられ
る台風情報には、必ずひまわり 7号の赤外画像が使われています。来年度には後継
機のひまわり 8号も打ち上げられる予定です。今回は自然の脅威から人々を守って
きた、気象衛星に迫って見ましょう。

 気象衛星のさきがけは、スプートニク1号のわずか2年後、1959年に打ち上げられ
たアメリカのバンガード 2号です。地球の低軌道を周回し、衛星自身もスピンしな
がら地上を走査する計画でしたが、残念ながら衛星の回転軸が安定せず、うまく画
像を取得できませんでした。翌年には、初めて気象観測を目的としたタイロス 1号
が打ち上げられました。捉えたのは昼の雲だけでしたが、地球を一度に俯瞰できる、
宇宙からの気象観測の有効性を世界で初めて示しました。その後、エッサやニンバ
ス、 ATSといった様々な衛星シリーズにより、昼夜の雲を狙う赤外線センサーやデ
ータの伝送技術、静止衛星の打ち上げ技術が確立され、アメリカでは静止気象衛星
GOSEシリーズとして今日まで16機が運用されています。

 一方日本では、これまで「ひまわり」シリーズとして、計 7機の気象衛星を打ち
上げてきました。ひまわりの愛称は、花のヒマワリが常に太陽を向くように、気象
衛星も地球を見続けることから、名付けられています。

 ひまわりが打ち上がる前にも、日本には台風の砦として、富士山頂へ建造された
有人レーダー観測所がありました。しかし日本最高峰から眺めても、探索できる範
囲は半径 800kmに限られ、離島や船舶は常に見えない台風に脅かされていました。
そこへ持ち上がったのが、静止軌道に気象衛星を 5つ配置する、世界気象機関の計
画です。日本はそのうち東経 140度へ静止する気象衛星を任されました。まだ産業
界に衛星技術が蓄積されていなかったため、アメリカのヒューズ社から技術を導入
し、日本独自の気象衛星開発に乗り出します。待望のひまわり 1号は1977年に打ち
上げられました。この後、ひまわり衛星は少しずつ国産化されていきます。

 ここで注目すべきことは、日本の気象衛星にバックアップが全くなかったことで
す。打ち上げに失敗したり、衛星の機能が喪失したりすると、代替手段がなくなる
危険な状態だったのです。そして1999年、ついにH-II 8号機が、ひまわり 5号の後
継機の打ち上げに失敗します。設計寿命が尽きたひまわり 5号機を酷使し、アメリ
カで代替機として待機していたGOSE衛星を借り入れ、ぎりぎりの綱渡り運用が続き
ました。この状態が解消されたのが、現在活躍中のひまわり7号/6号体勢です。

 そのひまわり7号/6号も寿命が近づき、来年夏に 8号が打ち上げ予定です。次の
ひまわりは8号/9号の体勢となります。7号/6号は運用終了後、墓場軌道と呼ばれ
る静止軌道よりやや高い軌道へと移されます。地球の低軌道を回る衛星と違い、高
度 3万 6千kmの高い軌道を回る静止衛星は、大気圏再突入のためにロケット 1段分
ほどの推進剤が必要になるからです。地球を見続けたひまわりは、花のヒマワリの
ように、成果を上げた後は後継機に場所を譲るのです。


(藤井:平塚市博物館)

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【3】音楽で聴く宇宙


  メンデルスゾーン作曲
     無言歌 変ホ長調 「宵の明星」

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こんにちは!みなさんはメンデルスゾーンという作曲家をご存知でしょうか?今回
はこの作曲家の無言歌集から「宵の明星」を紹介したいと思います。
洋名は "The evening star" です。

メンデルスゾーンといえば、バイオリン協奏曲がとても有名です。彼の名前を聞い
たことの無い方でも、バイオリン協奏曲の冒頭を聞けば「知ってる!」と思われる
方が多いのではないかと思います。私はこの曲のとても切ないメロディーが好きで、
研究の合間によく聴いています。また、他の彼の作品では交響曲第 3番「スコット
ランド」、第4番「イタリア」なども有名です。

メンデルスゾーン (1809―1847年) は幼い頃から優れた才能を示し、38歳という若
さで亡くなったこともあり、早熟の作曲家と言われています。12歳で家族で演奏す
るための室内楽を作曲し、バッハ、ベートーヴェン、モーツァルトなどの音楽から
様々な作曲技法を直感的に習得し、「夏の夜の夢」序曲 (1826年) などの作品に反
映させています。

今回紹介する無言歌 (言葉のない歌) は、情景や感情を言葉を使わずにピアノだけ
で表現しているのだそうです。みなさんご存知のとおり、「宵の明星」とは夕暮れ
に見られる一番星で、金星のことです。ですが、1837年に作曲されたメンデルスゾ
ーンの「宵の明星」は、以前紹介したホルスト作曲の組曲「惑星」の中の「金星」
とは全く異なる印象を与えます。「平和をもたらす者」という副題のついたホルス
トの「金星」は何かロマンチックで未知のものを連想する曲だったのに対して、こ
の「宵の明星」はただ静かな夕暮れ、そして12分の 8拍子によって川の流れにのっ
て行く小舟のような情景を想起させます。

さて、みなさんは、今晩の一番星を見つけられるでしょうか?もし、見つけられた
ならば、せっかくの芸術の秋です、「宵の明星」のある景色を、絵に描いたり、詩
を詠んだり、音楽にしたりすることに挑戦してみるのも良いかもしれませんね。


(参考ウェブサイト)
ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/フェリックス・メンデルスゾーン
ピティナ楽曲解説
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/2492/


(田崎:京都大学)

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【4】ブラックホールが星を食べる瞬間に迫る

 2013年夏 SgrA*にガス雲が落下し、その時の光が観測されることが予想されまし
た。ところが現時点ではそのような兆候は見られていません。そこで、今回は、
SgrA*がどのように発見され、これまでにどのような研究されてきたか。その観測
的な歴史に迫ります。

 私たちが住む地球のある太陽系は、天の川銀河(以下、銀河系)に存在します。
そしてその銀河系の中心には SgrA*というブラックホールが存在するといわれてい
ます。ですが、ブラックホールは目には見えません、そこでその間接的証拠として
「降着円盤」という現象を前回は紹介しました。しかし、実際銀河系の中心領域は、
円盤部の濃い塵(暗黒星雲)にさえぎられているために、可視光(大雑把には人間
が見える光のこと)では見えません。そのため、銀河系の中心がどうなっているか
は、長い間謎に包まれていました。

 1974年、その謎がついに解明されます。グリーンバンク天文台の R.Balickと
R.Brownは 35kmの電波干渉計でフリンジ(干渉縞:電波干渉計の観測データを解析
したときに得られる)を発見し、銀河系中心に点状の電波源があることを証明しま
した。この電波源が SgrA*です。では、なぜ電波干渉計では見つけることができた
のでしょうか。それは SgrA*が電波で光っていて、さらに、暗黒星雲は電波の特定
の波長に対しては透明だったからです。

 その後、電波だけでなく赤外線や X線などいろいろな波長の光で観測されるよう
になります。すると、普段は電波でしか見えない SgrA*が(近)赤外線の光で見え
ることが時々起きるではないですか。これは降着円盤からブラックホールに大量の
ガスが落ち込むことで起きるフレアという現象によるものだと考えられました。そ
して、中心にはブラックホールがあると考えられるようになったのです。そうなれ
ば、そのブラックホールにガスが落ちるときにできた降着円盤( 8月号参照)から X
線が放射され、それも観測できるとういことで、 X線での観測も説明できますね。

 さらに近年、この SgrA*の周囲に、若く大きな星団が存在することがわかってき
ました。ヨーロッパ南天天文台は、この星団の星々の運動を、超大型望遠鏡(VLT)
などの赤外線観測装置でモニターし、その軌道を求めました。その結果 SgrA*は太
陽質量の400万倍の質量をもったブラックホールがあることがわかったのです。

  SgrA*が発見されてから、これまでには今回紹介した研究のほかにも数多くの研
究がされてきました。そしてこの度2013年夏に予想された観測は、残念ながら今の
ところありません。この理由としては中心ブラックホールの質量の見積もりやブラ
ックホールとガス雲の距離の見積もりが違うかったことなどが考えられます。しか
し発見から40年となる2014年、 SgrA*にガス雲が落ちるかもしれません。その観測
からまた、歴史的な大発見がされることを期待したいですね。


(小林:大阪教育大学)

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【5】黄華堂宇宙検定

 このコーナーでは、毎月3問ずつ宇宙に関する問題を出していきます。新しい知
識を得るため、知識の再確認をするため、今日のお話のネタにするため…お好きな
ようにご活用ください。答えは編集後記の末尾にあります。

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  もう10月も下旬になって、随分と日が沈むのが早くなりました。夜が長くなり、
空は澄んできて、星を見るのには丁度よい季節となっていますが、皆さんは夜空の
星を見上げてみることはあるでしょうか?普段から星を見る方は少ないと思います
ので、今回はいつもと少し趣向を変えて、写真で星座探しをしていただこうと思い
ます。

(1)今の時期10月下旬は17時頃に日が沈み、18時半には空が暗くなっています。
   この時に空を見上げてみると、 9月にご紹介しましたこのような星空が見ら
   れます。
   9月の星空
   この時に空を見てみたところ、こんな星の並びが見つかりました。
   
   これは上の星図の中にある星座なのですが、一体何座でしょうか?

 (あ)こと座
 (い)わし座
 (う)はくちょう座

(2)一問目の写真の星座は星図の中で見つかったでしょうか?
   今度はこの星座を少し広い場所から探してみましょう。
   こちらの写真の中から、先ほどの星座を探してみて下さい。
   
    (ヒント:夏の大三角形が写っています。)

(3)さて、探していただいた星座はヒントにもあるように実は夏の星座です。も
   う秋が深まってきたのに、まだ夏の星座が見えているとは驚きですが、この
   星座は一体いつまで夕方の空に見ることができるのでしょうか?

 (あ)11月末
 (い)12月末
 (う) 1月末


(鈴木:京都大学)

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【編集後記】
 秋が深まるとともに夜が長くなってきて、星が見やすい季節になっています。雨
上がりには空が澄んで、星も輝きも違って見えます。ただし、日中との寒暖の差が
大きいので寒さ対策は万全に。
                    (鈴木:星がきれいな日は特に寒い)

(黄華堂検定の答え)
(1)あ
  こと座は夏の大三角形の星の一つベガ(織姫星)がある星座です。夏の大三角
 を見つけてその中で一番明るい星がベガですので、 場所自体は見つけやすいで
 す。ベガ以外には、 4等星程度の星が小さな平行四辺形を作っています。小さく
 まとまった星座なので、形は見つけやすいのですが、 4等星が暗いので見るには
 少し郊外でないと難しいかもしれません。

(2)答えは写真をご覧ください。
 
  こと座の他にヒントとなる夏の大三角と一等星の名前も書いてあります。夜空
 には星座の線はありませんので、たくさんの星があると迷ってしまうと思います。
  それでも夏の大三角のように分かり易いものから探していくと、見つけられる
 ようになります。

(3)い
  星は日が経つ毎に、同じ時刻でも少しずつ西に見えるようになります。一方で、
 秋は日の入の時刻が早くなり、早い時刻から星が見られるようなっていきます。
 そのため、空が暗くなった頃に星を見てみると、夏の大三角が見られる時期が長
 く続きます。
  日の入の時刻は12月の頭にもっとも早くなり、その頃にはまだこと座が西の空
 に見えています。

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