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黄華堂通信  No. 073 ◆◇◆  2013年 11月号 ◇◆◇

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【もくじ】☆ミ(今月は彗星特集号!)☆ミ

【1】来月の星空
【2】絵本で見る宇宙
【3】音楽で聴く宇宙
【4】あなたの知らない宇宙
【5】この冬、天文ファンを賑わす2つの彗星
【6】黄華堂宇宙検定

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【1】来月の星空

 一足早く来月の星空をご紹介します。
 11月の星空についてはこちらを!
http://www.oukado.org/hosizora/2013/hosizora1311.htm

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2013 年 12 月の星空

 12月で一番の注目はアイソン彗星です。11月29日に太陽に最接近した後、12月の
始めに明け方の東の空で再び見えるようになります。果たして、明るく見えるよう
になるのか、期待したいところです。

 14日には三大流星群の一つ、ふたご座流星群が極大を迎えます。毎年安定した活
動を示すのですが、今年は残念ながら月明かりがあります。月から離れた場所を見
て、流れ星を探して下さい。

 また、 2日には水星が月に隠される水星食が起こります。ただし、見ることがで
きるのは東日本で、それも明け方の非常に低い空で起こります。東の空が開けた場
所で双眼鏡などを使う必要があります。隠されていた水星が月から出現するのは日
の出の時刻に近いので、見るのは難しいです。


*天文現象いろいろ

■  2日 水星食(東京の場合、午前 5時28分潜入、午前 6時30分出現)
■  3日 新月
■  4日 月の距離が最近( 36 万 0067 km、視直径33.2')
■  7日 大雪
      金星が最大光度(-4.7等)
■ 10日 上弦
■ 14日 ふたご座流星群が極大(出現期間12月5日〜12月20日)
■ 17日 満月
■ 20日 月の距離が最遠( 40 万 6268km、視直径29.4')
■ 22日 冬至
      こぐま座流星群が極大(出現期間12月18日〜12月24日)
■ 25日 下弦
■ 29日 明け方の東の空で月と土星が接近

参考サイト
国立天文台 ほしぞら情報
http://www.nao.ac.jp/astro/sky/2013/12.html


(鈴木:京都大学)

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【2】絵本で見る宇宙 Vol.49


夜空に突如現れる彗星。
「彗星の如く」とはよく言ったものです。
前触れもなく現れ尾を引いて日夜動いていくその姿は、
古今東西、凶兆として畏れられてきました。
今では歓迎される大彗星ですが、昔は“悪者”だったのです。
それは、こんなお話の中でも…。

.........................

『ふたごの星』

宮沢賢治・作、あきやまただし・絵


「僕らは彗星に欺されたのです。
 彗星は王さまへさえ偽をついたのです。
 本当に憎いやつではありませんか。」


 天の川の西の岸に住んでいる二人のお星さま。チュンセ童子とポウセ童子は彗星
に旅に連れ出されますが、途中で海の底へ落とされてしまいます。海の底は空で悪
いことをした星たちが海星(ヒトデ)に変えられてしまうところ。二人は一体どう
なってしまうのでしょうか……?

 お話の結末はぜひ本編を読んでいただくとして、科学者でもあった宮沢賢治、こ
の短い童話の中にも彗星の特質を捉えた文が出てきます。その一つをご紹介しまし
ょう。


「それから一番痛快なのは
 まっすぐに行ってそのまままっすぐに戻る位ひどくカーブを切って廻るときだ。
 まるで身体が壊れそうになってミシミシ云うんだ。光の骨までカチカチ云うぜ。」


 太陽系の天体たちの多くは太陽の周囲を公転しているわけですが、太陽に近づく
ときに最も速く動きます。そして彗星は太陽系の他の天体とは違い、細長い楕円軌
道を描いて公転しています。特にアイソン彗星のように太陽に非常に近づく彗星は、
まさに“まっすぐに行ってそのまままっすぐに戻る位ひどくカーブを切って”動き
ます。その時のスピードはかなりのものです。そして、太陽の潮汐力で彗星がバラ
バラになってしまう、“身体が壊れ”てしまうこともあるのです。

 賢治は1910年のハレー彗星を見ています。1910年は、地球が彗星の尾の中に入っ
て、地球の空気がなくなる、尾の中の毒で生き物が死ぬ、といった情報が出回り一
部ではパニックになりました。賢治の中では、そのようなできごとから彗星の悪者
ぶりを目の当たりにして、このお話のひとつの動機になったのかもしれません。僕
個人の勝手な推察ですが…。

 もちろん私たちは悪者として彗星を畏れるのではなく、世紀の天文現象として期
待して待っています。バラバラになるかどうかも含めて、静かにアイソン彗星を見
守りましょう。


(塚田:平塚市博物館)

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【3】音楽で聴く宇宙


 ホセ・カレヨ作曲
     「Ikeya-Seki」

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 今回は彗星特集ということで、クラシック音楽ではありませんが、ホセ・カレヨ
というジャズ音楽の作曲家が作った「Ikeya-Seki」という曲のエピソードをご紹介
します。

 1965年に 9月にアマチュア天文家の池谷薫氏と関勉氏が一つの彗星を発見しまし
た。これが池谷・関彗星です。この彗星は「1965年の大彗星」と呼ばれるほど明る
く輝き、昼間の太陽の近くでもはっきりと見えたそうです。

 ホセ・カレヨはキューバのハバナで、池谷・関彗星のニュースを聞き、この「Ikeya-Seki」
を即興で書きました。肉眼でもきれいに観察できる期間が数日はあったそうなので、
彼は実際に自分の目で彗星を見ていたのかもしれません。作曲を終えたカレヨはそ
の楽譜を池谷・関両氏に贈ったのだそうです。当時、キューバから日本への楽譜の
旅は、とても長く果てしない道のりだったでしょう。

 その後、関氏はお礼の意味を込めて、1992年10月に自身が発見した小惑星に「カ
レヨ」という名前をつけました。そして、2008年にテレビ番組を通して、カレヨに
お礼のメッセージを届け、「カレヨ」小惑星の存在を伝えようとしましたが、すで
に2004年にカレヨは亡くなっていたそうです。

 残念ながら「Ikeya-Seki」の楽譜やCDは販売されていないようで、私たちがその
音楽を聴くことは難しいのですが、関氏のホームページには楽譜の画像が公開され
ているので、興味のある方はぜひご覧になってください。いつかジャズ音楽「Ikeya-Seki」
を聴きながら彗星を眺められる日が来るといいですね。


(参考ウェブサイト)
関勉のホームページ
http://comet-seki.net/jp/
ウィキペディア「池谷・関彗星」
http://ja.wikipedia.org/wiki/池谷・関彗星_(C/1965_S1)


(田崎:京都大学)

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【4】あなたの知らない宇宙

「サングレーザー彗星 ─ 太陽系の外縁から中心へと旅する彗星」

 いよいよ今月末には「アイソン彗星(C/2012 S1 ISON)」が太陽に近付きます。皆
さんの中には、なかなか予想(期待)通りに明るくならない中、急増光のニュースを
受けて驚かれた人もいるのではないでしょうか。ところで、どうしてアイソン彗星
はとても明るくなる、と考えられているのでしょうか?それは、アイソン彗星の軌
道と大きさに秘密があります。今回は彗星についてお話します。

 まず、アイソンや他の彗星はどこからやってくるのでしょうか?彗星のルーツは
私たちの太陽系が形成された時期に遡ります。太陽系に存在する惑星は、原始太陽
系円盤中に形成された微惑星が合体・集積してできたと考えられています。微惑星
の内、特に氷雪限界線(水分子が液体として存在できる境界)よりも外側で形成さ
れたもは氷と塵が混ざっており、氷微惑星と呼ばれています。
氷微惑星の内、惑星として取り込まれなかったものが何らかの作用で太陽系の外側
に移動し、オールトの雲(Oort cloud)やエッジワース−カイパーベルト(Edgeworth-
Kuiper belt) といった構造を形成していると考えられています。
彗星は、オールトの雲やエッジワースカイパーベルトに残存している微惑星(太陽
系外縁天体)が、何らかの外的要因[注1]によって太陽系の内部へ到達する軌道に
進化したものと考えられています

 彗星が太陽に近付くにつれ、その表面に存在する氷や二酸化炭素、一酸化炭素な
どが昇華したり、塵が放出されたりして「コマ」と呼ばれるぼんやりした光の球を
形成します。更に、このコマが太陽の影響を受けて「尾」を形成します。尾はその
成分や太陽から受ける影響によって「塵の尾」「イオンの尾」「ナトリウムの尾」
の 3種類に分けられています。
彗星が明るくなるのはコマや尾に含まれるガスやイオン、塵が輝くからです。因み
に、この時放出された大量の塵が地球の軌道上に残ると、地球がそこを通過した際
に地球に落下し、流星群となります。

 さて、彗星が太陽からおそよ 1天文単位、つまり地球の公転軌道辺りまで近付い
てくるとコマや尾が目立って見えてきます。彗星が太陽に近付けば近付くほど、放
出されるガスや塵の量が多くなる為、コマは明るく、尾は明るく、長く伸びていき
ます。つまり、太陽に近付くほど、彗星は明るく見えます。
とはいっても明るさは太陽からの距離だけで決まるのではなく、彗星の大きさや成
分、表面の様子、それに地球との位置関係によって変わります。その為精確な予測
が非常に難しくなります。

 アイソン彗星は太陽の中心から 約190万kmまで近づきます[注2]。太陽の半径は
約70万kmであることを考えると、太陽の極めて近くを通過することが分かります。
このように、太陽の表面付近にまで近づく彗星を「サングレーザー」と呼んでいま
す。
アイソン彗星が明るくなると期待されているのは、サングレーザーだからです。
更に、一般的なサングレーザーの大きさは1000 m以下のものが殆どなのに対して、
アイソン彗星の大きさは 1km以上と推定されています。[注4]サングレーザーの中
でも大きな彗星なので、とても明るくなると考えられているのです。
また、太陽に極めて近付く為、彗星自身が蒸発あるいは崩壊する可能性もあるので
はないかとも言われています。

 アイソン彗星の今後の動向が楽しみですね。


[注1]
惑星の摂動や銀河潮汐力影響、太陽系と恒星や巨大分子雲との接近遭遇など、様々
な原因が考えられています。

[注2]
太陽との距離は、彗星の軌道を調べることで見積もることができます。大まかに、
彗星の軌道は太陽との 2体問題(力学問題)で解けます[注3]。
彗星の軌道は楕円軌道か放物線を描きますが、ハレー彗星(P/1682 Q1 Halley)など
のように何度も太陽に近付く回帰彗星は楕円軌道なのに対して、アイソン彗星や2013
年春に太陽に近付いたパンスターズ彗星(C/2011 L4)は放物線軌道をもち、二度と帰
ってきません。
余談になりますが、彗星に冠される符号で Pから始まるものは回帰彗星、 Cはそう
でない彗星(もしくは回帰年が非常に長い彗星)になっています。

[注3]
厳密には他の惑星などの影響を受けます。
特に、彗星が他の惑星付近を通過するときには、その重力を受けて軌道が変わった
り、中には惑星に衝突したりするものもあります。
(例:1994年、シューメーカー・レヴィ第9彗星の木星への衝突)

[注4]
彗星の大きさは直接測定するのが非常に難しく、様々な仮定を含んでいる為、厳密
な大きさは分かっていません。


(森谷:広島大学)

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【5】この冬、天文ファンを賑わす2つの彗星

 2013年も終わりに近づく12月、夜空では 2つの彗星が見ごろを迎えます。一つ目
は、とても明るくなると予想されているアイソン彗星( C/2012 S1)。二つ目は、
知名度は劣るものの安定の明るさのラブジョイ彗星( C/2013 R1)です。この 2つ
の彗星の、これまでの様子と、今後の見通しを見ていきます。

・アイソン彗星
 こちらがこの 1ヶ月ほどのアイソン彗星の写真です。

条件が同じではないので正確に比較はできないのですが、だんだんと明るくなる様
子がわかります。10月に12等ほどだったのが、11月の半ばには 8等まで明るくなっ
ていました。しかしながら、これは最初の予想よりも 3-4等も暗かったのです。
「このままあまり明るくならないのではないか」と思っていた13日、アイソン彗星
が突然明るくなったというニュースが入りました。ニュースの 2日後に天気がよく
なったので観測をすると確かに 5等まで明るくなっていました。条件が良い空では
双眼鏡で見えるほどの明るさです。

・ラブジョイ彗星
 こちらが11月に入ってからのラブジョイ彗星の写真です。

ラブジョイ彗星は誰にでも分かるくらいには明るくならない予想なので、あまりニ
ュースで取り上げられていませんでした。しかし、11月に入り 5-6等と、一時期ア
イソン彗星よりも明るくなり話題を集めていました。空の高いところに昇るのもあ
って、観測しやすいという点もありました。アイソン彗星は、明るくなる前から尾
が伸びていたのに対し、ラブジョイ彗星は尾が薄く、コマがぼんやりと広がった姿
をしています。

・2つの彗星、今後はどう見える?
 アイソン彗星は、このメルマガの配信日からしばらく、太陽に近いためしばらく
観測できません。11月29日に太陽に最接近して、その後の12月の始めが一番見やす
い時期となります。急増光を起こしたために明るさがどうなるのかは正直わかりま
せんが、高度が低いのもあり、双眼鏡がないと見るのは厳しいと思います。ラブジ
ョイ彗星は、12月の始めに一番明るく、 4等ほどになると予想されています。アイ
ソン彗星と違い、地平線すれすれにはならないので、双眼鏡があれば見ることがで
きるでしょう。ただし彗星は非常に淡く見えるので、姿をはっきりと見るには、写
真撮影が一番です。星を撮影できるカメラであれば、どちらの彗星も写ります。特
に、12月の 16-20日にはアイソン彗星とラブジョイ彗星が15度ほどの距離まで近づ
くので、 1枚の写真の中に 2つの彗星をとらえるチャンスとなります。

 さて 2つの彗星について見てきましたが、実際の空での位置や最新の明るさはイ
ンターネットで検索すると調べることができます。
それでは、アイソン彗星が大彗星になるのを期待するだけでなく、準備を整えて12
月の見ごろの時期を迎えましょう。

(参考ウェブサイト)
吉田誠一氏のホームページ:今週の明るい彗星
http://www.aerith.net/comet/weekly/current-j.html


(鈴木:京都大学)

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【6】黄華堂宇宙検定

 このコーナーでは、毎月3問ずつ宇宙に関する問題を出していきます。新しい知
識を得るため、知識の再確認をするため、今日のお話のネタにするため…お好きな
ようにご活用ください。答えは編集後記の末尾にあります。

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 11月はアイソン彗星が太陽にもっとも接近します。ということで、今回は彗星に
関するクイズです。


(1)彗星の本体は氷や砂の粒が混ざっており、「汚れた雪だるま」などと表現さ
   れますが、ではその大きさは一体どのくらいでしょうか?


 (あ)50mプール
 (い)富士山
 (う)日本列島

(2)彗星と言えば、その見た目から別名「箒星」としても知られていますが、で
   はその箒の部分はどのようにしてできるのでしょうか。次のうち間違ってい
   るものはどれでしょうか?

 (あ)彗星が移動した後をたくさんの星がついていっている
 (い)太陽に近づいたときに熱などで氷が解けて、砂粒が飛ばされる
 (う)彗星が移動しているときに他の星の影響でバラバラに分裂していく

(3)彗星は細長い楕円軌道で、太陽に近づいたり、遠ざかったりしています。中
   には数年、数十年といった短い周期のものもあれば、 200年以上の長い周期
   を要するものもあります。では長周期の彗星がもっとも太陽から離れるとき
   の距離は一体どのくらいでしょうか?
   ※ 1AU(天文単位)= 1億5000万km


(あ) 100 〜 1,000 AU
(い) 1,000 〜 10,000 AU
(う) 10,000 〜 100,000 AU


(梅津:大阪教育大学)

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【編集後記】
 いよいよアイソン彗星が太陽に近づいてきました。予想よりも暗かったのが、突
然明るくなり、その後も明るさが日々変わっていきます。ぜひ、リアルタイムで変
化する様子を楽しんでください。
                         (鈴木:予想外が面白い)

(黄華堂検定の答え)
(1)い
  彗星の本体である核は塵(ダスト)と氷でできており、その大きさは数百 m〜10km
 と様々です。我々が彗星として目にするのは核ではなく、太陽の熱によって核の
 氷などが蒸発しガスとなってその周りを覆う「コマ」という部分です。その大き
 さは、数万km〜数百万kmになります。

(2)あ
 問題の通りです。

(3)う
  長周期彗星の起源は太陽から数万AU離れたところにある「オールトの雲」であ
ると考えられています。

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