連載:あなたの知らない宇宙

【第54回 星が一生の最期に輝く瞬間、ショックブレイクアウトを捉える!】

太陽の8倍以上の質量を持つ星や、2つの星がお互いの周りを公転している連星の一部はその一生の最期に“超新星爆発”と呼ばれる大爆発を引き起こします。 第3回「超新星と私たちのカラダ」でも紹介したように、宇宙に存在する重元素の多くは超新星爆発の際に作られます。 そのため、宇宙の進化を探る上で重要な天体として、世界中の多くのグループによって超新星の観測が行われています。
しかし、超新星爆発は非常に重要な天体現象にも拘わらず、それを引き起こすメカニズムや、爆発直前の星の様子については未だによくわかっていません。

今回は超新星の研究の中でも“ショックブレイクアウト”という現象についてお話したいと思います。 2014年にNHKで放送された“木曽オリオン”というドラマで取り上げられていたので、聞いたことがある!という方もいらっしゃるかもしれません。

超新星爆発の際、星の内部で発生した衝撃波が星の外側に向かって伝わっていきます。 この衝撃波が星表面に達した瞬間、非常に明るく輝きます。 この現象を“ショックブレイクアウト”と呼んでいます。 爆発した星はその星の情報を多く持っています。 通常の観測では爆発した星の大きさ(半径)を推定するのは困難ですが、ショックブレイクアウトを観測することによって、星の大きさを正確に求めることができます。

それなら、ショックブレイアウトの観測をたくさんすればいいのでは? と思う方もいらっしゃるかもしれません。 がしかし、これがなかなか難しい観測なのです。 このショックブレイクアウトという現象はわずか数時間しか見られません。 しかも広い宇宙のどこで超新星が起こるかわからないため、超新星自体探すのも大変です。 そのため、超新星探しをしているグループは出来るだけ夜空の広い範囲に渡って探す、かつ、超新星が現れていないか短い時間間隔で確認する…という大変な探索を行っています。 このため、可視光でショックブレイクアウトの観測はなかなか捉えることができていませんでした。

しかし、2016年3月にアメリカのPeter Garnavichさんたちの国際研究チームが可視光でショックブレイクアウトを捉えたとの報告がありました。 NASAの人工衛星“ケプラー”が30分おきに観測しているデータ3年分を調査してやっと捉えられたのです。 なんと約50兆個もの星を解析したそうで、ショックブレイクアウトを捉えることがいかに難しいか物語っています。

今後も、大規模な超新星探索が計画されており、より多くのショックブレイクアウトが捉えられることが期待されます。


参考文献:
【1】木曽KWFC超新星探査プロジェクトKISS プレスリリース
http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/NEWS/pr20120627.html
【2】AstroArts “初めてとらえられたショックブレイクアウト”
http://www.astroarts.co.jp/news/2016/03/29shockbreakout/index-j.shtml




(Kawabata: 2016年07月)