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黄華堂通信  No. 074 ◆◇◆  2013年 12月号 ◇◆◇

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【もくじ】

【1】来月の星空
【2】宇宙開発裏話
【3】二つの彗星のその後
【4】黄華堂宇宙検定

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【1】来月の星空

 一足早く来月の星空をご紹介します。
 12月の星空についてはこちらを!
http://www.oukado.org/hosizora/2013/hosizora1312.htm

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2014 年 1 月の星空

 寒さとともに空気がピンとはりつめ、星がきれいに見える季節となりました。オ
リオン座を中心とする冬の明るい星達とともに、今年は木星がひときわ明るく輝い
ています。12日から15日にかけてはそこに満月前の明るい月も加わりますので、よ
り一層にぎやかな夜空になるでしょう。

  4日の夜明け前には三大流星群の一つ「しぶんぎ座流星群」が極大を迎えます。
今年は月明かりの影響がないので、流れ星を観測できる絶好のチャンスとなります。
初詣のついでに、ぜひ星にも願いをこめてみてください。

 今年の年末年始も厳しい寒さになる見込みです。初日の出を見に行かれる際は暖
かい格好でご覧になってくださいね。


*天文現象いろいろ

■  1 日 元日(初日の出:札幌07時06分、東京06時51分、大阪07時05分、福岡07時23分)
       新月
■  2 日 月の距離が最近(距離 35 万 6923 km、視直径33.5')
       細い月と金星がならぶ
■ 4 日 しぶんぎ座流星群が極大(出現期間1月1日〜1月7日)
■ 5 日 小寒
■ 8 日 上弦
■ 12 日 月とおうし座のアルデバランがならぶ
■ 16 日 月の距離が今年最遠(距離 40 万 6532 km、視直径29.4')
       満月
■ 20 日 大寒
■ 24 日 下弦
■ 26 日 月と土星がならぶ
■ 26 日 細い月と金星がならぶ
■ 30 日 月の距離が最近(距離 35 万 7080 km、視直径33.5')
■ 31 日 旧正月
       新月
       水星が最大東方離角(夕方に見やすい)

参考サイト
国立天文台 ほしぞら情報
http://www.nao.ac.jp/astro/sky/2014/01.html


(飯野:大阪教育大学OG)

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【2】宇宙開発裏話 vol.16


「中国の宇宙開発」

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 先日12月14日、中国の無人月面探査機「嫦娥(じょうが) 3号」が、月の赤道付
近にある虹の入り江に着陸しました。これは1976年に旧ソ連が無人サンプルリター
ンを行って以来、37年ぶりの快挙です。月の周回軌道を離脱し、エンジンを噴射し
ながら動力降下をする際には、着陸船から見た映像がテレビ中継されました。翌日
には着陸船から月面車「「玉兎(ぎょくと)号」が放たれ、昼の高温に耐えるため
に数日間動作を止めました。お昼寝から目覚めた現在は、月の荒野に轍を残しなが
ら、慎重に探査を進めています。玉兎号は重さ 120kgほどで、NASAの火星ローバー
「オポチュニティ」と同程度の大きさがあります。電力源として太陽電池の他に、
プルトニウム 238の崩壊熱を使ったラジオアイソトープを搭載しており、14日続く
月の長い夜を耐え抜きます。
今回は中国の宇宙開発について触れることにしましょう。

 中国の宇宙開発は、ジェット推進研究所(JPL)の立ち上げに関わった、銭 学森
(せん がくしん)の帰国から始まりました。日本の糸川英夫にあたる人で、アメ
リカの初期のロケット開発を主導したあと、米軍の捕虜と交換条件に中国へと戻り
ました。中国の宇宙技術はソ連から導入されたと誤解されがちですが、技術的な系
統はアメリカにあるのです。

 銭学森の指導により、中国は日本のわずか 2ヶ月後の1970年 4月に初の人工衛星
を軌道に乗せました。1990年代には、無人の回収型衛星や商業衛星を相次いで打ち
上げましたが、失敗も少なくありませんでした。中でも有名なのが、1996年のバレ
ンタインに起きた長征3Bロケットの墜落事故です。アメリカのインテルサットを積
んでいたこのロケットは、打ち上げ直後姿勢を失い、推進剤をほぼ満載したまま近
くの村へ墜落しました。死者は 500人以上に上ったにもかかわらず、政府は事故の
事実をひた隠しました。事故後、上層部には、粛正に近い徹底的な責任追及が行わ
れました。さらに、欧米の技術者を呼んで品質管理が見直された結果、長征ロケッ
トは連続70回以上の打ち上げ成功を誇る、信頼性のあるロケットに変貌を遂げまし
た。

 2003年には、米露に続く初の有人飛行が実施されています。再使用型宇宙船では
なく、堅実な使い捨てのカプセル型宇宙船が選択されたことで、これまでに10人の
宇宙飛行士を安定的に打ち上げています。来年には有毒系推進剤を使わない新型ロ
ケットが誕生し、2020年の完成を目指す中国版ミールの建造に使われます。

 月探査については、有人月飛行を最終目標に、段階的に技術開発が進められてい
ます。まず、嫦娥 1号で無人の月周回飛行が達成されたあと、2号はラグランジュ2
と小惑星の探査が実施され、今回の 3号は着陸に挑んだのです。2017年には月のサ
ンプルリターンが行われます。重力の大きい月との往復は、瞬発力のあるエンジン
を使って、短時間で大きく速度を変更しなければなりません。重力の小ささに起因
する、はやぶさの困難とは異なる難しさがあり、中国は少しずつ難易度を上げて、
ステップアップしています。

 では日本の月探査はどうでしょう。大活躍した月周回衛星「かぐや」は、構想初
期では着陸も行う予定でした。しかしミッションを単純化するため、周回衛星と着
陸船を別途打ち上げる計画に変わったのです。ただ、構想から10年以上たった今も、
着陸計画は遅々として進んでいません。理由は様々ありますが、この10年で宇宙科
学予算が大幅に減額され、予算配分方針で月探査が最低の評価となったことが挙げ
られます。また、日本はプルトニウムなどの放射性元素を打ち上げることができな
いため、寒い月の夜を生き抜く新しい保温手段が必要でした。その技術開発に時間
を要した特殊な事情もあります。現在はイプシロンでも打ち上がる超小型月面着陸
船や、着陸せずに地震計を突きさす構想など、限られたリソースで最大限の成果を
引き出そうと、様々なアイデアが練られています。予算が尽きたんさ、と悲嘆せず、
月並みでない月探査機を築き上げてほしいですね(ダジャレも尽きたんさ)。


(藤井:平塚市博物館)

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【3】二つの彗星のその後


先月は彗星特集号として、アイソン彗星(C/2012 S1)とラブジョイ彗星(C/2013 R1)
の二つの彗星をご紹介しました。

 アイソン彗星については、太陽に近づいた際に、残念ながら消滅してしまったの
は、ニュースなどで取り上げられた通りです。アイソン彗星は最初に予想されたよ
りも核が小さく、数100m程度だった可能性が高い、とNASAは発表しています。
(原文、英語です)
http://www.nasa.gov/content/fire-vs-ice-the-science-of-ison-at-perihelion/index.html

 その一方でラブジョイ彗星は、 4等程度と予想通りの安定した明るさとなりまし
た。明け方の空で高度があるので、観測しやすい状況が先月から続いています。し
かしながら、同じ明るい状態でも先月とは見え方が変わっています。11月ではコマ
がよく見えて、尾があまり伸びていなかったのが、12月になって尾が良く見えてき
たのです。
(12月のラブジョイ彗星の写真)


 この変化はなぜ起きたのかと言いますと、彗星・地球・太陽の位置関係が変わっ
たからです。先月号の「あなたの知らない宇宙」にて取り上げましたが、彗星は太
陽に近づくと活動が活発になり、絶対的な明るさが増すとともに、尾が長く伸びま
す。その一方で、地球に近づくと元々の彗星の明るさが同じでも、距離が近い分明
るく見えます。また、距離が近いのでコマや尾が大きく見えるようになります。
メルマガ2013年11月号

 11月にラブジョイ彗星が明るく見えていたのは地球までの距離が近かったからで
す。地球に近いためコマが大きく見えるのに対し、太陽から遠く尾が淡くしか見え
ない状態でした。

 12月に入ると、地球からは少し遠ざかりましたが、太陽に近づきました。そのた
め、尾がはっきりと伸びて彗星らしい姿となったのです。明るさについては太陽、
地球までの距離の影響が相殺したために依然として明るく見えています。

 このラブジョイ彗星は明るくなったということもあって、多くの写真が撮られて
います。インターネットでは過去の写真も見ることができますので、時期によって
どのように見え方が変化したのか比べてみると面白いかもしれません。

(参考ウェブサイト)
吉田誠一氏のホームページ:今週の明るい彗星
http://www.aerith.net/comet/weekly/current-j.html


(鈴木:京都大学)

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【4】黄華堂宇宙検定

 このコーナーでは、毎月3問ずつ宇宙に関する問題を出していきます。新しい知
識を得るため、知識の再確認をするため、今日のお話のネタにするため…お好きな
ようにご活用ください。答えは編集後記の末尾にあります。

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(1)今年11月末、アイソン彗星(C/2012 S1)の消滅が話題となりました。(大
   彗星となる期待があっただけに残念ですが…)
   さて、アイソン彗星の「アイソン」とは何のことでしょう?


 (あ)彗星の発見者の名前
 (い)歴史上の著名人の名前
 (う)天文関連の団体の名前

(2)冬の星座がキレイに輝く季節となりました。
   さて、その中でも最も明るく輝く恒星は、おおいぬ座のシリウスですが、シ
   リウスの記述の中で正しいものはどれでしょう?

 (あ)実は、二つの星からなる
 (い)実は、太陽から最も近い星である
 (う)実は、近々爆発するのではと指摘されている

(3)いよいよお正月で、初日の出を見る方々もいるかと思います。実は、初日の
   出の時刻は各地によって異なっています。京都と東京では、初日の出の時間
   はどれくらい異なっているでしょうか?


(あ)京都の方が 14分早い
(い)京都の方が 7分遅い
(う)京都の方が 14分遅い


(住吉:京都大学OB)

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【編集後記】
 いよいよ今年もあとわずかとなりました。年末年始に帰省される方は、もし夜晴
れていたら夜空を眺めてみて下さい。普段見ている星空とは、また違った雰囲気を
味わうことができます。
                      (鈴木:離れて知る故郷の星空)

(黄華堂検定の答え)
(1)う
  アイソン彗星の名前の由来は、国際科学光学ネットワーク(ISON: International
 Scientific Optical Network)からきています。これは、ロシアを中心としたス
 ペースデブリや天体発見等のために組織された国際プロジェクトです。アイソン
 彗星を発見したベラルーシのヴィタリー・ネフスキー (Vitali Nevski)とロシ
 アのアルチョム・ノヴィチョノク (Artyom Novichonok)は共にこの組織に所属
 しています。因みに、彗星の名前には発見者の名前が付けられる(例:ラブジョ  イ彗星)のですが、チームでの発見の場合はチームの名前が付けられます。
 [ISON] http://lfvn.astronomer.ru/main/english.htm

(2)あ
  夜空の中で最も明るい恒星シリウスは、二つの星からなっている連星です。た
 だし、主星にお伴している星(伴星)は白色矮星で非常に暗いので、私たちが目
 で見ているシリウスの光のほとんどは、主星からのものです。大きな望遠鏡を用
 いると主星と伴星を分解して見ることができます。
 [HubbleSite] http://hubblesite.org/gallery/album/star/pr2005036a/
    (図の左斜下に見えるのが伴星であるは白色矮星です。)


(3)う
  初日の出の時刻は、日本国内であっても地域差があり、主として経緯度に依存
 ています。来年の初日の出の時刻は、京都で07:04・東京で06:50であり、京都の
 方が14分も遅くなっています。
 また、初日の出の時刻は標高にも依存し、本州、北海道、四国、九州で一番早く
 初日の出が見られるのは、富士山山頂(標高3777m)の06:42となっています。因
 みに、日本で最も初日の出が早く見られるのは、南鳥島です。
 [日本各地の初日の出] http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KOHO/hatsuhi/2014/sunrise.htm
 [初日の出時刻地図]   http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KOHO/hatsuhi/2014/hinodezu.htm

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