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黄華堂通信  No. 076 ◆◇◆  2014年 02月号 ◇◆◇

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※お知らせ※  黄華堂のメルマガは次回が最終回となります。今後はFacebookや twitterでリア
ルタイムに近い情報を、黄華堂のウェブページでより詳しい情報を提供していく予定です。

【もくじ】

【1】来月の星空
【2】宇宙開発裏話
【3】音楽で聴く宇宙
【4】ブラックホールが星を食べる瞬間に迫る
【5】黄華堂宇宙検定

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【1】来月の星空

 一足早く来月の星空をご紹介します。
 1月の星空についてはこちらを!
http://www.oukado.org/hosizora/2014/hosizora1402.htm

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2014 年 3 月の星空

 明るい星が多かった冬の星は西の空へと傾き始め、夜空では春の星が見えるよう
になってきました。 3月はその春の星とともに惑星が見えています。

 冬の間目立っていた木星に続いて、22時頃になると東の空から赤い火星が昇って
きます。真夜中には土星、明け方には金星も見ることができます。これら惑星は普
通の星と違って、あまり瞬かないことを使うと見分けられます。

 そんな惑星の中でも 3月は火星に注目です。惑星は「惑う」星という名前の通り、
夜空の中を動いています。 3月から 4月にかけて火星は東からへと「逆行」してい
く様子が見られます。 1日ではほとんど動いているように見えませんが、 1週間、
1ヶ月と見ていくと、その動きが見えてきます。今は火星の近くにおとめ座の 1等
星であるスピカが見えていますので、この星を位置の目印にすると、火星の動きが
分かり易いでしょう。


*天文現象いろいろ

■  1 日 新月
■  6 日 啓蟄
■  8 日 上弦
■ 10 日 月と木星がならぶ
■ 12 日 月の距離が最遠(1.055、40万5364km、視直径29.5')
■ 14 日 水星が西方最大離角(明け方に見やすい)
■ 17 日 満月
■ 19 日 月と火星がならぶ
■ 21 日 春分
     月と土星が接近
■ 23 日 金星が西方最大離角(明け方に見やすい)
■ 24 日 下弦
■ 27 日 月と金星がならぶ
■ 28 日 月の距離が最近(0.951、36万5703km、視直径32.7')
■ 31 日 新月

参考サイト
国立天文台 ほしぞら情報
http://www.nao.ac.jp/astro/sky/2014/03.html


(鈴木:京都大学)

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【2】宇宙開発裏話 vol.17


「いとしのクレメンタイン」

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 「クレメンタイン」の月探査から20年が経ちました。はやぶさの半分程しかない
小さな探査機でしたが、現在の月科学の基礎となる、多波長域の全球月面図をわず
か 2ヶ月で作成し、さらには月に水がある可能性を初めて示しました。アポロで知
られてしまった月を、再び未知の世界へと引き戻し、2000年代に華開いた月探査ブ
ームの牽引役となったのです。

 クレメンタインは、NASAと国防総省がタッグを組んだ、珍しいミッションでした。
冷戦によって生み出された軍事用センサや民生プロセッサをふんだんに活用し、放
射線が飛び交うバンアレン帯の外でテストする目的がありました。打ち上げには、
かつてジェミニ計画にも使われた大陸間弾道弾の、余剰品を改修したロケットが使
われました。掛かった費用は、打ち上げ費を含めて8000万ドル(当時の日本円で82
億円)と破格で、速く・良く・安くをコンセプトとするディスカバリー計画のモデ
ルになりました。

 光が地平線から入射する月の極域では、クレーターの底まで光が届かない永遠の
影があります。「コールド・トラップ」と呼ばれ、通常なら太陽光によって蒸発す
る揮発性物質を溜め込んでしまうのです。当初、月の水探査は予定されていません
でしたが、月周回軌道に到達したあと、高度測定用のレーダーを応用した即席の実
験が考案されました。地上から観測したエコーの強度や偏光データは、水が氷の状
態で大量に眠っていることを示唆していました。しかし奇妙なことに、南極でしか
氷を確かめることができませんでした。

 確たる証拠を得るために打ち上げられたのが、ディスカバリー計画の 1号機「ル
ナ・プロスペクター」です。水素やヘリウムを検出する、中性子線の分光計が搭載
されました。宇宙線が月面に衝突すると中性子を放射し、中性子は水素原子にぶつ
かると減速します。遅い中性子は、北極と南極の両方で検出され、水の存在量を間
接的に推定できました。しかし、太陽風にも水素が含まれています。水に含まれて
いる水素とは断定できず、探査機自らが水を撮影しない限り、疑惑は氷解しません。

 それにもかかわらず、今から10年ほど前のブッシュ大統領の時代には、いまだ見
ず知らずの水があることを前提に、向こう見ずな有人月計画が立てられました。オ
バマの時代になって、有人の目標は小惑星や火星に変わっていますが、一過性の政
治決定であることに変わりはありません。裏づけとなる無人探査が不十分なので、
この数十年、 ISSに続くポンチ絵は飽きるほど描き換えられてきました。人が宇宙
へ進出する必要があるのか、ならばどの星を目指すべきなのか。クレメンタインの
ように、小柄で華奢な探査機をたくさん打ち上げることが、それを知る一番の近道
なのに。クレメンタインのことを忘れてしまったのかもしれません。


(藤井:平塚市博物館)

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【3】音楽で聴く宇宙


番外編:
ガモフ著「不思議の国のトムキンス」より
宇宙オペラ

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 みなさんは「オペラ」をご存知でしょうか。舞台下で演奏されるオーケストラに
合わせて、歌手が歌いながら物語が進行していく演劇のことです。日本語では「歌
劇」とも言われます。

 物理学者のガモフは、どうにかして難しい宇宙の話をわかりやすく伝えられない
かと考え、「不思議の国のトムキンス」という本を書きました。その本の中で「大
学生が宇宙の誕生から終わりまでをオペラで表現する」というシーンがあります。
なんとガモフはきちんと楽譜や歌詞まで書いているのですよ。ガモフは宇宙論を研
究しながら、物語を書き、オペラの作詞作曲をし、さらに本の挿絵まで描いて、本
当に多才な人だったのだなぁ、と感心します。うらやましいものです。

 不思議の国のトムキンス、ぜひみなさんも読んでみてください。不思議でちょっ
と難しい宇宙を感じられるかもしれません。また、ガモフのように一人で全てを作
るのは大変ですが、誰かと協力して、作詞したり、作曲したり、物語を書いたりし
て自分たちだけの宇宙のオペラを書いてみるのも素敵ですね。


(田崎:京都大学)

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【4】ブラックホールが星を食べる瞬間に迫る

  SgrA*について 1年間、隔月で紹介してきました。しかし2014年になってもいま
のところ、 SgrA*にガス雲が落ちたことを示唆する観測は報告されていません。(泣)
今回は少し指向を変えて、ブラックホールはそもそも存在しないのではないかと主
張した専門家のお話です。

 どんなものでも、光さえも吸い込む天体ブラックホール。ところが、そんな天体
から粒子が放出するメカニズムを提案した物理学者がいました。それが車椅子の物
理学者「S.W.ホーキング」です。さらに彼は、粒子が放射され続けると、ブラック
ホールは質量を徐々に失い、最後には蒸発して消えてしまうと発表したのです。こ
の放射は彼の名前をとって“ホーキング放射”と呼ばれています。ホーキング放射
は相対性理論と量子論を組み合わせて初めて理解できる、きわめて難しい現象です
ので、ここでは説明しません。ですが折角なので蒸発の話を少ししましょう。

 ブラックホールには光が脱出できるかの境界、事象の地平面というものがありま
す。つまり、ブラックホールはこの「事象の地平面」によってそのサイズを決める
ことが出来ます。ブラックホールにサイズがあるという事は、そこから放出される
粒子の時間当たりの量には限界があることになります。つまり、ブラックホールが
すべての粒子を放出するにはある程度の時間がかかるという事です。具体的には、
恒星質量のブラックホールであれば宇宙年齢の 1億倍の 1億倍の・・・と 1億倍を
7回かけてもまだ足りないような時間です。途方もないですね。つまりブラックホ
ールがすべての粒子を放出し、蒸発することを現在観測することは無理なのです。
では恒星質量やそれより重いブラックホールが半永久的に蒸発しないからと言って、
ブラックホールの蒸発が非現実的な理論上の産物なのかというと、そのようなこと
はありません。きわめて質量の小さなブラックホールの存在が議論されており、そ
のようなブラックホールはまさに、ホーキング放射で蒸発してしまうと考えられて
います。

 さらに、ホーキングは今年の 1月22日付けで短い論文を公開しました。そこでな
んと「これまでに考えられてきたようなブラックホールは存在しない」と主張しま
した。古典理論ではエネルギーと情報はブラックホールの「事象の地平面」を抜け
出せないと言われているのですが、量子理論ではそれが可能であると示唆されると
いうパラドックスを取り上げ、ブラックホールは情報とエネルギーを消滅させるの
ではなく、新しい形でまた空間に開放することを発表しました。そして、「光が無
限に抜け出せない領域という意味でのブラックホールは存在しない」と結論付けま
した。

 いったい何を言っているのだ?という感じですね・・・残念ながらこの論文は、
査読(論文が論理的に間違っていることを言っていないかのチェック)がないので、
その取扱いは慎重であるべきです。つまり、このことが事実だと言い切ることはで
きません。ですが、常人には到底なしえない発想で数々の理論を発表する物理学者
ホーキング、なによりいまだに数々の謎に包まれたブラックホールという天体に今
後も、是非、注目してください!!


(小林:大阪教育大学)

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【5】黄華堂宇宙検定

 このコーナーでは、毎月3問ずつ宇宙に関する問題を出していきます。新しい知
識を得るため、知識の再確認をするため、今日のお話のネタにするため…お好きな
ようにご活用ください。答えは編集後記の末尾にあります。

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  1月21日、近くにある銀河 M82(おおぐま座)に超新星が発見されました。 M82
は私たちから約1200万光年の距離にある、とても近い銀河なので、超新星も明るく
見え詳細に調べられると期待されています。今月は超新星に関する問題です。

参考:AstroArts社1月23日の天文ニュース
http://www.astroarts.co.jp/news/2014/01/23sn2014j/index-j.shtml

(1)超新星とはどんな星でしょうか?


 (あ)生まれたばかりの明るい星
 (い)寿命を終える間際の星
 (う)6つ並んだ星

(2)[記述式]
   超新星には私達の生活に深く関わっていることがあります。
   それは何でしょうか?
   ※ヒント:物質に関係します。

(3)超新星のなかでもIa型(いちえーがた)と呼ばれるものは、天文学において重
  要な役割を持っています。それは次の内のでれでしょうか?
   ※Ia型については答えと解説をご覧下さい。


 (あ)超新星がいる銀河の年齢さが分かる
 (い)超新星がいる銀河の質量が分かる
 (う)超新星がいる銀河までの距離が分かる


(森谷:広島大学)

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【編集後記】
 突然ですが、黄華堂のメルマガは次回が最終回となります。今後はFacebookやtwitter
でリアルタイムに近い情報を、黄華堂のウェブページでより詳しい情報を提供して
いく予定です。少しでも夜空を見上げるきっかけになれば嬉しく思います。

 黄華堂のwebページ:http://www.oukado.org/
 Facebookのページも「黄華堂」で検索すると見つかります。
                       (鈴木:星空をもっと身近に)

(黄華堂検定の答え)
(1)い
  超新星は「新しい星」と書きますが、実際は重たい星が最期に爆発する[注 1]
 ときに起きる現象で、超新星爆発とも呼ばれています。夜空で突然明るくなる為
 にまるで星が新しく誕生したように見えます。


(2)鉄より重たい元素ができる。
  宇宙が誕生した時には水素と極々わずかなヘリウム、リチウム、ベリリウムし
 かありませんでした。それより重たい元素は恒星の内部で作られます。恒星の内
 部では核融合反応が起き、水素からヘリウム、炭素、酸素…と重たい元素ができ
 ますが、鉄元素は安定している為に、それより重たい元素は恒星内部での核融合
 反応はできません。
  私たちの身の回りにある鉄より重たい元素は全て超新星爆発の時に作られたも
 のです。


(3)う
  超新星を分類するときに、よくどのような元素が見えるかで区別しています。
 超新星の中でも水素がなく、ケイ素があるものをIa型(いちえーがた)超新星と呼
 んでいます。
  Ia型超新星は、最も明るくなる時の明るさが理論的に決まっています[注2]。
 その為見た目の明るさと本来の明るさの差から超新星までの距離を精度よく求め
 ることができます。
  このように本来の明るさが決まっていて、距離の指標になる天体を『標準光源』
 と呼んでいます。

 [注1] 厳密には、太陽の数倍以上の質量が最期に起こす『重力崩壊型超新星』と、
 白色矮星が限界質量を超えた時に起こす『核爆発型超新星』とに分かれます。Ia
 型超新星は後者のタイプです。

 [注2] しかし、通常の超新星よりも明るい超新星も発見されています。黄華堂メ
 ルマガ2013年 5月号の「あなたの知らない宇宙」で取り上げています。
  http://www.oukado.org/merumaga/2013/merumaga-1305.htm

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